変更要約: 初版
1.5代表的なアプリケーションとプロトコル
信頼性重視のTCP(コネクション型)と低遅延のUDP(コネクションレス)の使い分け、そしてHTTP/HTTPS・DNS・DHCP・FTP/SFTP/TFTP・NTP・ICMPといった代表的なプロトコルとポート番号を、「この通信は何番ポートで、TCPかUDPか」を識別できる基礎として学びます。
「Webは見えるのにメールだけ送れない」「名前で開けないのにIPを直打ちすると開ける」——こうした症状を切り分けるには、どのアプリがどのプロトコル・どのポート番号を使い、それがTCPかUDPかを識別できることが欠かせません。ポート番号は通信の「宛先の部屋番号」のようなもので、ファイアウォールがどの通信を通すかもこの番号で決まります。この節では、TCPとUDPの違いを土台に、サポートで頻出する代表的プロトコルとポート番号を、暗記の羅列ではなく症状と結びつけて識別する形で学びます。
1.5.1TCPとUDPの使い分け
- TCP=コネクション型。通信前に3ウェイハンドシェイク(SYN→SYN/ACK→ACK)で相手と接続を確立し、順序制御・再送で信頼性を担保する。取りこぼしが許されないWeb(HTTP/HTTPS)・メール・ファイル転送に使う。その分オーバーヘッドは大きい。
- UDP=コネクションレス。ハンドシェイクや再送を行わず低遅延・低オーバーヘッドで送る。多少の欠落より即時性が重要なDNSの問い合わせ・DHCP・音声/映像(VoIP・ストリーミング)に向く。信頼性が要ればアプリ側で補う。
1.5.2代表的なプロトコルとポート番号
- HTTP(80/TCP)=Web閲覧、HTTPS(443/TCP)=暗号化されたWeb閲覧(TLSで保護)。今日のWebはほぼHTTPS。DNS(53)=ドメイン名をIPアドレスに変換する名前解決で、問い合わせは主にUDP(大きな応答等はTCPも使う)。
- DHCP(67/68・UDP)=起動時にIPアドレス・サブネットマスク・ゲートウェイ・DNSを自動配布する。NTP(123・UDP)=機器の時刻同期(ログの突き合わせや証明書検証に重要)。ICMP(ポート番号なし)=
pingやtracerouteが使う到達性・エラー通知の仕組みで、TCP/UDPのようなポート番号は持たない。 - ファイル転送は3種を区別する:FTP(20/21・TCP)=古典的な転送(制御と データで2ポート・暗号化なし)、SFTP(22・TCP)=SSH上で暗号化して転送(安全)、TFTP(69・UDP)=簡易・軽量な転送(機器の設定/ファーム配布等・認証や再送機構が最小)。名前が似るがSFTPは安全・TFTPは簡易でUDPという違いに注意。
「TCP=3ウェイハンドシェイクで信頼性/UDP=コネクションレスで低遅延」とポート番号が頻出です:HTTP80・HTTPS443・DNS53・DHCP67/68・FTP20/21・SFTP(SSH上)22・TFTP69・NTP123、そしてICMPはポート番号を持たない(ping/tracerouteが使用)。DNS/DHCP/NTP/TFTPはUDP寄り、HTTP/HTTPS/FTP/SFTPはTCPと押さえましょう。
ユーザから「社内のWebシステムが、IPアドレスを直接入力すれば開くのに、いつものURL(名前)では開けない」という問い合わせが来たとします。ここでプロトコルとポートの知識があると、原因の当たりを素早く付けられます。IP直打ちで開けるということは、そのサーバへのTCP到達性(HTTP80やHTTPS443)は生きている可能性が高い、と判断できます。にもかかわらず名前で開けないのですから、疑うべきは名前をIPに変換するDNS(53)の失敗です。nslookup でその名前が正しく引けるか確認し、引けなければDNSサーバの設定やDHCPで配られたDNSアドレスを見直す、という手順が立ちます。別の日には「新しく持ち込んだPCがネットにつながらず、IPアドレスが 169.254 で始まる変な値になっている」という相談が来たとします。169.254 で始まるのはDHCPからアドレスを受け取れなかったときの自動割り当て(APIPA)で、つまりDHCP(67/68)の通信が届いていない可能性が高い、と読み解けます。さらに「ログの時刻が機器ごとにバラバラで障害の前後関係が追えない」なら、NTP(123)による時刻同期の問題を疑います。このように、症状(名前で開けない/変なIP/時刻がずれる)を、対応するプロトコルとポート(DNS53/DHCP67-68/NTP123)に結びつけて考えると、次に打つ手が具体的に決まります。ポート番号やTCP/UDPの区別は、単なる暗記ではなく症状を原因に翻訳するための語彙なのです。
| プロトコル | ポート | TCP/UDP | 役割 |
|---|---|---|---|
| HTTP / HTTPS | 80 / 443 | TCP | Web閲覧(HTTPSは暗号化) |
| DNS | 53 | 主にUDP | 名前→IPアドレスの解決 |
| DHCP | 67 / 68 | UDP | IP等の自動割り当て |
| FTP / SFTP / TFTP | 20,21 / 22 / 69 | TCP / TCP / UDP | ファイル転送(SFTPは安全・TFTPは簡易) |
| NTP / ICMP | 123 / なし | UDP / なし | 時刻同期 / 到達性確認(ping) |
ひっかけ: 「SFTPとTFTPは名前が似ているので同じもの」は誤りです——SFTPはSSH上(22/TCP)で暗号化された安全な転送、TFTPは69/UDPの簡易・軽量な転送(認証や再送が最小)で、安全性も土台もまったく異なります。また「ICMP(pingが使う)にもポート番号がある」も誤り=ICMPはTCP/UDPとは別のプロトコルでポート番号を持ちません。
1.5.3この節のまとめ
- TCPは3ウェイハンドシェイクで信頼性(Web・メール・ファイル転送)、UDPはコネクションレスで低遅延(DNS・DHCP・VoIP)
- 主要ポート:HTTP80/HTTPS443/DNS53/DHCP67-68/FTP20-21/SFTP22/TFTP69/NTP123、ICMPはポート番号なし
- 症状(名前で開けない=DNS/変なIP169.254=DHCP/時刻ずれ=NTP)をプロトコルとポートに結びつけて切り分ける
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. ある社内Webシステムは、IPアドレスを直接入力すれば開くが、いつものURL(ホスト名)では開けない。まず確認すべき原因として最も適切なものはどれか。
Q2. リアルタイム性が最優先の用途と、確実な到達が最優先の用途がある。トランスポートプロトコルの使い分けとして最も適切なものはどれか。
Q3. ファイル転送プロトコルの説明として最も正確なものはどれか。

