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第2章 · アドレスとサブネット形式·v1.0.0·更新 2026/7/17·読了目安 約14分

変更要約: 初版

2.1プライベートとパブリックアドレス

この節の要点

インターネットで一意にルーティングされるパブリックアドレスと、組織内で再利用されるプライベートアドレス(10.0.0.0/8・172.16.0.0/12・192.168.0.0/16)の違い、アドレスクラスA/B/Cの成り立ち、DHCP失敗時に現れるAPIPA(169.254.0.0/16)、そしてプライベート↔パブリックを変換するNATを、「このアドレスは外に出られるのか」を見分ける基礎として学びます。

サポートの現場では、PCが表示しているIPアドレスを一目見ただけで「これは社内だけの住所か、インターネットに出られる住所か」「そもそもDHCPからちゃんと配られているのか」が読み取れると、切り分けが一気に速くなります。この節では、インターネット上で一意なパブリックアドレスと組織内で再利用するプライベートアドレス(10.0.0.0/8・172.16.0.0/12・192.168.0.0/16)の違い、アドレスクラスA/B/Cの考え方、DHCPが応答しなかったときに現れるAPIPA(169.254で始まる)、そしてプライベートとパブリックを橋渡しするNATを、暗記ではなく「このアドレスは何を意味するか」を読み解く力として学びます。

2.1.1パブリックアドレスとプライベートアドレス

  • パブリックアドレス=インターネット上で世界に1つだけ(一意)に割り当てられ、そのままルーティングされる住所。プロバイダ(ISP)や地域のレジストリを通じて管理・割り当てされ、勝手に付けることはできない。
  • プライベートアドレス=組織の内部で自由に再利用してよい住所(RFC1918で予約)。世界中の家庭やオフィスで同じ 192.168.0.0/16 などが重複して使われるが、インターネット上には直接ルーティングされないため衝突しない。外に出るには後述のNATが要る。
  • 見分け方の第一歩:先頭が 10. / 172.16〜172.31. / 192.168. ならプライベート、169.254. なら後述のAPIPA(DHCP失敗の合図)、それ以外の割り当て可能アドレスはパブリック、とアタリを付けられる。

2.1.2アドレスクラスとプライベート範囲・APIPA

  • IPv4は先頭オクテットでアドレスクラスに分かれる歴史がある:クラスA(1〜126・既定/8)、クラスB(128〜191・既定/16)、クラスC(192〜223・既定/24)。さらにD(224〜239)はマルチキャスト、Eは実験用。入門ではA/B/Cと既定マスクの対応を押さえれば十分。
  • 各クラスにプライベート範囲が予約されている:10.0.0.0/8(クラスA・大規模内部)、172.16.0.0/12(クラスB・172.16〜172.31)、192.168.0.0/16(クラスC・家庭や小規模)。家庭用ルータの配下がだいたい 192.168.x.x なのはこのため。
  • APIPA(169.254.0.0/16)=PCがDHCPからアドレスをもらえなかったときにOSが自分で付ける自動割り当て。IPが 169.254 で始まっていたら「DHCPが届いていない」という強い手がかりで、まずケーブル・スイッチ・DHCPサーバを疑う。

2.1.3NAT(アドレス変換)の役割

  • NAT(Network Address Translation)=内部のプライベートアドレスを、境界のルータでパブリックアドレスに付け替えてインターネットへ出す仕組み。戻りの通信は逆変換して内部の正しい端末へ返す。プライベートアドレスがそのままでは外に出られない問題を解決する。
  • 家庭や中小オフィスでは、多数の端末が1つ(少数)のパブリックアドレスを共有して外に出るのが普通(ポート番号で区別するPAT/IPマスカレードと呼ぶ形)。これによりIPv4アドレスの節約にもなっている。
試験ポイント

「パブリック=インターネットで一意・ルーティング可/プライベート=内部で再利用・直接は外に出られない」「プライベート範囲:10.0.0.0/8・172.16.0.0/12・192.168.0.0/16」「169.254(APIPA)=DHCP失敗の合図」「NAT=プライベート↔パブリックの変換」が頻出です。IPを見て「外に出られる住所か/DHCPは効いているか」を即断できるようにしましょう。

ヘルプデスクに「新しく持ち込んだノートPCだけ、社内にも外にもまったくつながらない」という連絡が入ったとします。ここで ipconfig(Windows)でアドレスを確認したところ、IPが 169.254.24.7 になっていたとします。この一つの数字が、原因の当たりを大きく絞ってくれます。169.254 で始まるアドレスはAPIPA、つまりPCがDHCPからアドレスをもらえずに自分で付けた自動割り当てだからです。ということは、そのPCのIP設定自体を疑うより先に、「なぜDHCPの応答が届かないのか」を追うべきだと分かります。まずLANケーブルの接続やスイッチのポート(物理・L2)、次にそのポートが正しいVLANにあるか、DHCPサーバやリレーが動いているか、という順に確認していきます。逆に、もしIPが 192.168.10.34 のように正しいプライベート範囲で配られているのに外だけつながらないなら、原因は別の層に移ります。プライベートアドレスはそのままではインターネットに出られないので、境界でのNAT(とデフォルトゲートウェイ)が正しく効いているかが焦点になります。ここで大切なのは、「169.254=DHCP失敗」「10./172.16-31./192.168.=正しく配られたプライベート=外に出るにはNATが要る」「それ以外の割り当て可能アドレス=パブリック」というアドレスの読み方を持っていれば、たった1つのIP表示から次に確認すべき場所を決められるという点です。アドレスは暗記対象ではなく、症状を場所に翻訳する地図なのです。

区分範囲(既定マスク)意味・用途
クラスA プライベート10.0.0.0 – 10.255.255.255(/8)大規模な内部ネットワーク
クラスB プライベート172.16.0.0 – 172.31.255.255(/12)中規模な内部ネットワーク
クラスC プライベート192.168.0.0 – 192.168.255.255(/16)家庭・小規模オフィス
APIPA169.254.0.0 – 169.254.255.255(/16)DHCP失敗時の自動割り当て(合図)
パブリック上記以外の割り当て可能アドレスインターネットで一意・ルーティング可
注意

ひっかけ: 「PCが 169.254 のアドレスを持っているなら、正しくIPが割り当てられているので設定は問題ない」は誤りです——169.254(APIPA)はDHCPからアドレスをもらえなかったときの自動割り当てで、むしろ通信障害の合図です。また「プライベートアドレスはそのままインターネットに直接出られる」も誤り=プライベートは外にルーティングされず、境界のNATでパブリックに変換して初めて外に出られます。

プライベート範囲、アドレスクラス、APIPA、NATの図。
このアドレスは外に出られるか

2.1.4この節のまとめ

  • パブリックアドレスはインターネットで一意・ルーティング可、プライベートアドレス(10/8・172.16/12・192.168/16)は内部で再利用し直接は外に出られない
  • APIPA(169.254.0.0/16)はDHCP失敗時の自動割り当てで、通信障害の強い手がかりになる
  • NATが境界でプライベート↔パブリックを変換し、多数の内部端末が少数のパブリックアドレスを共有して外に出る

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 新しく持ち込んだPCだけが社内にも外にもつながらない。ipconfig で確認するとIPアドレスが 169.254.24.7 になっていた。この表示から最も強く疑うべき原因はどれか。

Q2. RFC1918 で定義される、組織内部で再利用してよいプライベートアドレスの範囲として最も適切な組み合わせはどれか。

Q3. 家庭やオフィスで多数の端末がプライベートアドレスを使いながらインターネットに出られるのは、境界のルータのどの仕組みによるものか。

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