変更要約: 初版
1.2帯域幅とスループット
回線の理論上の最大容量である帯域幅と、実際に流れた実効量であるスループットの違い、遅延を表すレイテンシ、そして対サーバのスピードテストと2点間のiperfという測り方の違いを、「遅いという苦情を数字で切り分ける」判断として学びます。
「ネットが遅い」はサポートで最も多い苦情の一つですが、これほど曖昧な言葉もありません。遅さには、そもそも回線の容量が足りないのか、容量はあるのに実効速度が出ていないのか、あるいは容量は十分でも応答(遅延)が大きいのか、と別々の顔があります。この節では、理論上の最大である帯域幅と実際の流量であるスループット、そしてレイテンシを区別し、スピードテストとiperfという2つの測り方を使って、感覚的な「遅い」を数字で切り分ける基礎を身につけます。
1.2.1帯域幅・スループット・レイテンシ
- 帯域幅(bandwidth)=その回線が理論上運べる最大の伝送容量(例:1Gbps)。道路でいえば「車線の幅」に相当する、いわばカタログ上の上限値。
- スループット(throughput)=実際に単位時間あたり流れた実効的なデータ量。オーバーヘッド・輻輳(混雑)・干渉・機器性能などにより、必ず帯域幅以下になる。1Gbpsの回線で実測600Mbpsなら、スループットが600Mbps。
- レイテンシ(遅延)=データが届くまでの待ち時間(例:往復20ms)。帯域幅が太くてもレイテンシが大きいと「反応が遅い」と感じる。容量(帯域幅/スループット)と遅延(レイテンシ)は別の指標で、混同しないことが切り分けの鍵。
1.2.2スピードテストとiperfの違い
- スピードテスト=ブラウザ等からインターネット上の計測サーバに対して上り/下り速度やレイテンシを測る方法。「自宅やオフィスからインターネットへの体感速度」を手軽に確認するのに向く。ただし途中の経路や相手サーバ側の状況も結果に混ざる。
- iperf=自分で用意した2点(送信側と受信側)の間で実効スループットを測るツール。社内のA地点とB地点のように特定区間の実力を切り出して測れるので、「どの区間が遅いのか」を突き止める切り分けに向く。
「帯域幅=理論上の最大容量/スループット=実効量でつねに帯域幅以下」「レイテンシは容量ではなく遅延(別指標)」「スピードテスト=対インターネット計測サーバ/iperf=自前の2点間」が頻出です。「遅い」を容量・実効・遅延のどれかに分けて考える習慣をつけましょう。
ある支社から「ファイルサーバへのコピーが遅い」という苦情が上がってきたとします。ここで「回線が1Gbpsなのだから帯域幅は足りているはず、気のせいでは」と決めつけるのは誤った判断です。帯域幅(契約上の1Gbps)はあくまで理論上限で、実際に出ているスループットとは別物だからです。正しい手順は、まず数字で現状を捉えること。支社のPCから本社サーバへ iperf を実行して特定区間の実効スループットを測ると、たとえば120Mbpsしか出ていない、といった具体的な数字が得られます。次に、同じPCから スピードテスト を回してインターネット向けは十分な速度が出ているなら、問題はインターネット回線ではなく社内の特定区間にあると絞り込めます。さらに、コピー自体は速いのに操作の反応が全体にもたつくなら、それは容量ではなくレイテンシ(遅延)の問題かもしれず、ping の往復時間を見るべきです。ここで大切なのは、「遅い」を「容量が足りない(帯域幅/スループット)」「特定区間の実効が低い(iperfで区間切り分け)」「反応が遅い(レイテンシ)」に分解し、それぞれ適切な測り方で数字にするという姿勢です。感覚のまま機器を交換するのではなく、まず測って切り分ける——これがサポートの基本作法です。
| 指標/方法 | 意味 | 主な使いどころ |
|---|---|---|
| 帯域幅 | 理論上の最大伝送容量(カタログ上限) | 回線の設計上の上限を確認する |
| スループット | 実際に流れた実効量(帯域幅以下) | 現実に出ている速度を把握する |
| レイテンシ | データが届くまでの遅延時間 | 反応の遅さ(応答性)を調べる |
| スピードテスト | 対インターネット計測サーバの実測 | インターネットへの体感速度を手軽に確認 |
| iperf | 自前の2点間の実効スループット | 社内の特定区間の実力を切り分ける |
ひっかけ: 「契約が1Gbpsなら実測でも常に1Gbps出るはず」は誤りです——帯域幅は理論上限で、実際のスループットはオーバーヘッドや輻輳で必ずそれ以下になります。また「帯域幅さえ太ければレイテンシも小さくなる」も誤り=容量(帯域幅)と遅延(レイテンシ)は別指標で、太い回線でも遅延が大きいことはあります。
1.2.3この節のまとめ
- 帯域幅は理論上の最大容量、スループットは実効量でつねに帯域幅以下。両者を混同しない
- レイテンシは容量ではなく遅延の指標。反応が遅いときは容量ではなくレイテンシを疑う
- スピードテストは対インターネットの手軽な実測、iperfは自前の2点間で特定区間を切り分ける
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 契約帯域幅が1Gbpsの回線で、実際のファイル転送を計測したところ約600Mbpsだった。この結果の解釈として最も適切なものはどれか。
Q2. 社内のA拠点からB拠点へのファイル転送だけが遅い。インターネットへの速度には問題がない。特定区間(AからB)の実効スループットを切り分けて測るのに最も適した方法はどれか。
Q3. あるアプリで「回線容量は十分あるはずなのに操作の反応が全体的にもたつく」との報告がある。まず確認すべき指標として最も適切なものはどれか。

