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第1章 · 規格と概念·v1.0.0·更新 2026/7/17·読了目安 約13分

変更要約: 初版

1.4クラウドとオンプレミス

この節の要点

機器を自社に置くオンプレミスと事業者のインフラを使うクラウドの違い、クラウドの提供形態SaaS/PaaS/IaaS、公開範囲によるパブリック/プライベート/ハイブリッドクラウド、そしてリモートワークハイブリッドワークという働き方の広がりを、「この要件はどの形態が向くか」という基本判断として学びます。

今日のネットワークは、自社の建物の中だけで完結せず、メールもファイルも業務アプリもクラウド上にあり、社員は自宅や外出先からそこへアクセスします。サポート担当がユーザの困りごとを正しく捉えるには、「そのサービスは自社に置いた機器(オンプレミスなのか、事業者のクラウドなのか」「どの提供形態(SaaS/PaaS/IaaS)なのか」を区別できる必要があります。この節では、クラウドとオンプレの違いと使い分け、そしてリモートワークが当たり前になった働き方の変化を、入門レベルの判断として整理します。

1.4.1オンプレミスとクラウドの違い

  • オンプレミス=サーバや機器を自社の設備内に設置し、自組織で保守・運用する形態。初期投資は大きいが、機器やデータを完全に自社の統制下に置ける(機密性やカスタマイズ要件に向く)。故障対応やスケール拡張も自分たちで行う。
  • クラウド=事業者のインフラを使った分だけ課金(従量制)で利用する形態。需要に応じて素早く増減でき(スケーラビリティ)、機器の購入・保守の負担が減る。ネットワーク的には「自社の外にサービスがある」ため、インターネット経由の到達性や認証が前提になる。

1.4.2SaaS・PaaS・IaaSと公開範囲

  • 提供形態は「どこまで事業者が面倒を見るか」で3段階:SaaS=完成したアプリをそのまま使う(例:Web版のメールやオフィス。利用者は設定のみ)。PaaS=アプリを開発・実行する土台(OSやミドルウェア)を借りる(開発者向け)。IaaS=仮想サーバやネットワークなどの基盤だけを借り、OSより上は自分で構築する。
  • 公開範囲による分類:パブリッククラウド=広く一般向けに提供される事業者の共用クラウド。プライベートクラウド=特定組織専用のクラウド(統制やコンプライアンス重視)。ハイブリッドクラウド=オンプレ/プライベートとパブリックを組み合わせて使い分ける形(機密はプライベート、変動負荷はパブリック等)。
  • リモートワーク(在宅など離れた場所で働く)とハイブリッドワーク(出社と在宅を組み合わせる)が広がり、社員はどこからでもクラウドや社内システムへアクセスする。安全な接続にはVPNなどが使われる(詳細は後の章)。
試験ポイント

「オンプレ=自社設置・自組織運用(統制◎/初期投資大)/クラウド=事業者インフラを従量制(拡張性◎/運用負担小)」「SaaS=完成アプリ/PaaS=開発土台/IaaS=基盤のみ」「public/private/hybridは公開範囲の違い」が頻出です。「どの要件にどの形態か」を選べるようにしましょう。

あなたは小さな会社のITサポートを任され、社長から「経費精算のアプリを新しく入れたい。運用にできるだけ手間をかけたくない」と相談を受けたとします。ここで反射的に「自社サーバを買ってオンプレミスで構築しましょう」と答えるのは、要件(手間をかけたくない)に対して過剰な判断です。サーバ調達・OS保守・バックアップ・故障対応をすべて自前で抱えることになり、小さな会社には負担が重いからです。要件が「完成した業務アプリをすぐ使いたい・運用は任せたい」であれば、素直な答えはSaaS(Web版の経費精算サービス)で、利用者は設定とデータ投入に集中できます。一方、もし要件が「自社で作った独自アプリを動かす基盤がほしい・OSやミドルは自分で管理したい」ならPaaS、「仮想サーバやネットワークだけ借りて全部自分で組みたい」ならIaaSが候補になります。さらに「顧客の機密データだけは社外に出せない」という制約があるなら、機密部分はプライベート(またはオンプレ)に残し、それ以外の変動する処理はパブリックを使うハイブリッドが現実的です。加えて、社員が在宅(リモートワーク)から使う前提なら、社外からの安全なアクセス手段も設計に含める必要があります。ここで大切なのは、「新しいからクラウド」「安全そうだからオンプレ」といったイメージで選ぶのではなく、運用の手間・統制/機密・拡張性・働き方という要件から、SaaS/PaaS/IaaS と public/private/hybrid を組み合わせて選ぶという判断の型です。入門段階では細かな構築手順より、この要件から形態を選ぶ物差しを持つことが重要です。

形態事業者が見る範囲向く要件
オンプレミス(自社が全て管理)完全な統制・機密・独自要件
IaaS基盤(仮想サーバ・ネットワーク)まで基盤だけ借り上位は自作したい
PaaSOS・ミドルウェアまで開発・実行の土台がほしい
SaaSアプリまで完成品完成アプリをすぐ使い運用は任せたい
注意

ひっかけ: 「クラウドは常にオンプレより安くて安全なので、機密データも必ずパブリッククラウドにすべき」は誤りです——選択は要件しだいで、統制や機密が最優先ならオンプレミスプライベートクラウドが適切なこともあります。また「SaaSもIaaSも同じクラウドだから利用者の手間は変わらない」も誤り=SaaSは完成アプリで手間が小さく、IaaSはOSより上を自分で構築するため手間が大きいという違いがあります。

オンプレミス対クラウド、SaaS/PaaS/IaaS、公開範囲、リモートワークの図。
要件に合うモデルを選ぶ判断

1.4.3この節のまとめ

  • オンプレミスは自社設置で統制が強い(初期投資大)、クラウドは事業者インフラを従量制で拡張性が高い(運用負担小)
  • 提供形態はSaaS(完成アプリ)/PaaS(開発土台)/IaaS(基盤のみ)、公開範囲はpublic/private/hybridで分かれる
  • リモートワーク/ハイブリッドワークが広がり、社外からクラウド・社内へ安全に接続する設計が前提になる

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 小さな会社の社長から「完成した経費精算アプリをすぐ使いたい。サーバ運用やOS保守の手間はできるだけ負いたくない」と相談された。最も適した提供形態はどれか。

Q2. 「顧客の機密データは社外に出せないが、季節的に急増する集計処理には柔軟な拡張性がほしい」という要件がある。最も適した構成の考え方はどれか。

Q3. オンプレミスとクラウドの違いを新人に説明する内容として最も正確なものはどれか。

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