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第4章 · リスクと調達管理·v1.0.0·更新 2026/7/11·読了目安 約15分

変更要約: 初版

4.4調達実行と供給者管理

この節の要点

調達先候補の情報を集めるRFIと提案を募るRFP、加重評価による供給者選定基準、そして契約後の契約管理変更管理クレーム対応までの一連の流れを学び、状況に応じた供給者選定・契約管理の判断力を養います。

契約類型を決めたあと、PMが直面するのは「どのベンダーを選ぶか」という具体的な選定作業と、契約締結後の継続的な管理です。価格だけで選ぶと技術力や実績の低いベンダーを選んでしまうリスクがあり、逆に技術力だけで選ぶと予算を超過するリスクがあります。この節では、情報収集から提案依頼、加重評価による選定、そして契約後の変更・クレーム対応までの一連の流れを、単一の評価軸に偏らない判断という観点で学びます。

4.4.1RFIとRFPによる情報収集と提案依頼

  • RFI(Request for Information)=発注前に、市場にどのような供給者・技術・製品が存在するかを把握するための情報提供依頼書。価格や具体的な提案を求めるものではなく、選定候補の絞り込みや要件定義の精度向上のために使う予備的な情報収集ステップ。RFP(Request for Proposal)=要件が固まった段階で、具体的な提案(技術的アプローチ・体制・価格等)の提出を正式に依頼する文書で、RFPへの回答が実際の選定・契約交渉の基礎になる
  • 要件がまだ曖昧な段階でいきなりRFPを発行すると、供給者側も精度の低い提案しか出せず、比較評価が困難になる。市場の選択肢や技術動向が不明な早い段階ではRFI、要件が固まった段階ではRFPという段階的な使い分けが実務上の定石。RFQ(Request for Quotation・見積依頼書)は標準品の価格見積りに使われ、複雑なカスタム開発案件のRFPとは性質が異なる。

4.4.2加重評価による供給者選定

  • 供給者選定基準=価格だけでなく、技術力・実績(類似案件経験)・体制(要員のスキル/継続性)・財務健全性・保守体制など複数の観点で候補を評価する枠組み。加重評価法(重み付け評価法)では各評価項目にプロジェクトの重視度に応じた重みを設定し、合計点が最も高い候補を選定する。技術的難易度・複雑性が高い案件では技術力の重みを高く、標準化された定型作業では価格の重みを高くするなど、案件の性質に応じて重み配分自体を調整する
  • 価格が最安値の候補を機械的に選ぶ最低価格入札方式は、複雑でリスクの高い案件では技術力不足や実績不足による後々のトラブルコストを見落とすリスクがある。逆に技術力の重みだけを極端に高くすると、予算超過や過剰品質(オーバースペック)を招く。加重評価は複数の評価軸のバランスを取る手段であり、単一指標に偏らないことが選定の質を左右する。
試験ポイント

「RFI=予備的な情報収集(価格/提案は求めない)」「RFP=要件確定後の正式な提案依頼」「加重評価=案件の性質に応じて重み配分を調整し複数軸で選定」が最頻出です。「最安値の候補を機械的に選べばよい」という誤解に注意——複雑・高リスクな案件では技術力・実績不足による後々のトラブルコストを見落とすリスクがあります。

あるPMが、基幹システムの刷新という技術的難易度が高く、失敗時の事業影響も甚大なプロジェクトのベンダー選定を担当しています。3社から提案があり、A社は価格が最も安いが類似規模のシステム刷新経験がなく、B社は価格が中程度で類似案件の実績が豊富、C社は価格が最も高いが最新技術への対応力は随一という状況です。ここでPMが「予算を厳守したいのでA社に決定」とするのは、価格という単一軸に偏った判断であり、技術的難易度が高い基幹システム刷新において実績のないベンダーを選ぶことは、後々の手戻り・品質トラブル・稼働遅延という形で、当初の価格差を上回るコストを招くリスクがあります。加重評価法を正しく適用するなら、まず評価項目(価格・技術力・実績・体制・保守性等)を洗い出し、この案件の性質(高難易度・高リスク・事業影響大)を踏まえて実績と技術力の重みを高く設定します。その上で各社をスコアリングすると、価格が最安のA社ではなく、実績が豊富で価格も中庸なB社が合計点で最も高くなる——というのが、この種の案件で典型的に導かれる合理的な結論です。C社の最新技術対応力は魅力的に見えますが、基幹システムのように安定性・実績が重視される案件では、必要以上の先進性はオーバースペックのリスク(保守要員の確保難、枯れていない技術による障害リスク)にもなり得ます。契約締結後も判断は続きます。開発途中でスコープ変更が生じた場合は正式な変更管理プロセス(変更要求→影響評価→契約変更の合意)を経る必要があり、口頭合意で進めると後日クレーム(契約内容の解釈相違による紛争)の火種になります。契約管理では進捗・成果物・支払いを契約条項と照合し続け、逸脱の兆候を早期に検知することがPMの継続的な役割です。

候補価格実績・技術力高難易度・高リスク案件での適性
A社最安類似実績なし低い(後々のトラブルコストのリスク)
B社中程度類似実績豊富高い(安定性と実績のバランス)
C社最高最新技術力随一・実績は相対的に薄い中程度(オーバースペックのリスク)
注意

ひっかけ: 「複雑・高リスクな案件でも最安値の候補を機械的に選ぶべき」は誤りです——技術的難易度が高い案件で実績不足のベンダーを選ぶと、手戻りや品質トラブルによるコストが当初の価格差を上回るリスクがあります。また「契約締結後のスコープ変更は口頭合意で進めてよい」も誤り=正式な変更管理プロセス(変更要求→影響評価→契約変更の合意)を経ないと、後日クレーム(解釈相違による紛争)の火種になります

RFP/選定/契約管理の図。
選び契約し管理する

4.4.3この節のまとめ

  • RFIは予備的な情報収集、RFPは要件確定後の正式な提案依頼——段階的に使い分ける
  • 加重評価法は案件の性質(難易度・リスク・事業影響)に応じて評価項目の重みを調整し、単一軸に偏らず選定する
  • 契約後のスコープ変更は正式な変更管理を経る——口頭合意は後日のクレームの火種になる

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 技術的難易度が高く事業影響も甚大な基幹システム刷新案件で、価格最安だが類似実績のないベンダーAと、価格は中程度だが類似実績豊富なベンダーBを比較している。加重評価法の観点から最も適切な判断はどれか。

Q2. 要件がまだ曖昧で市場にどのような供給者・技術が存在するかも把握できていない段階で、PMが調達に関して最初に行うべき行動として最も適切なものはどれか。

Q3. 契約締結後の開発途中で、発注者側の都合によりスコープ変更が必要になった。PMが取るべき対応として最も適切なものはどれか。

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