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第1章 · ネットワーク方式とTCP/IP基礎·v1.0.0·更新 2026/7/10·読了目安 約14分

変更要約: 初版

1.5データ伝送と物理層

この節の要点

デジタル信号をアナログ伝送路に乗せる伝送符号化、複数の通信を1本の回線に集約する多重化(TDM/FDM/WDM)、伝送誤りを扱う誤り制御全二重/半二重の違い、そして帯域幅と実効伝送速度の関係を学びます。

物理層は「ビットをどう物理的な信号に変換して運ぶか」を扱う最下層ですが、実務では限られた伝送路(帯域幅)をどれだけ効率よく多重化するか遠距離・高速化にどの多重化方式を選ぶかという設計判断に直結します。この節では伝送符号化と多重化の仕組みを理解し、要件に応じた技術選定を学びます。

1.5.1伝送符号化

  • 伝送符号化=コンピュータ内部の0/1のディジタルデータを、伝送路上の電気信号・光信号・電波に変換する方式。単純に電圧の高低だけで0/1を表す方式は、同じ値が連続すると信号変化が無く受信側がクロック(タイミング)を同期しづらいという弱点がある。
  • この弱点への対策として、信号遷移そのものにビット値の情報を持たせる符号化(例:マンチェスタ符号化のように、各ビット周期の中央で必ず信号が遷移する方式)が使われ、信号遷移からクロックを再生しやすくする(自己同期性)ことで長時間の連続した同値ビットでも同期が崩れない。

1.5.2多重化(TDM/FDM/WDM)

  • 多重化=1本の伝送路上に複数の通信(チャネル)を同時に載せる技術。TDM(時分割多重)=時間を細かく区切り、各チャネルに順番に時間枠を割り当てる方式。FDM(周波数分割多重)=周波数帯を分割し、各チャネルに異なる周波数帯を割り当てて同時に伝送する方式。
  • WDM(波長分割多重)=光ファイバ通信でFDMの原理を光の波長(色)に適用したもので、1本の光ファイバに複数の異なる波長の光信号を同時に通すことで大容量化を実現する。長距離・大容量の基幹回線(バックボーン)で広く使われる。
試験ポイント

「TDM=時間分割」「FDM=周波数分割」「WDM=光の波長分割(FDMの光版)」の対比が最頻出です。自己同期性(信号遷移からクロックを再生する)を持つ符号化方式の必要性(同値ビット連続でも同期が崩れない)も併せて押さえましょう。

あなたは通信事業者のネットワーク設計者で、都市間を結ぶ基幹回線の容量をこれ以上の光ファイバ新規敷設なしに増強したいという要件を受けたとします。既設の1本の光ファイバは既にTDMで複数の顧客回線を時分割多重して収容していますが、TDMは1つの波長(1つの光信号)の中で時間を分け合う方式のため、時間軸での多重化には物理的な上限があります。ここで既設ファイバを増設せずに容量を増やしたい場合、WDM(波長分割多重)を導入し、同じ1本の光ファイバに複数の異なる波長の光信号を重ねて同時に送ることで、実質的に「1本のファイバの中に複数の独立した伝送路がある」状態を作り出せます。各波長のチャネルの中では引き続きTDMで顧客回線を多重化できるため、WDMとTDMは排他的ではなく組み合わせて使うのが実務です。もし新規に短距離の複数拠点間で少数のチャネルを扱うだけなら、WDMの光学部品コストに見合わないため、周波数帯を分けるだけのFDMやそのままのTDMで十分なケースもあります。「新規敷設が困難で大容量化が必要」という制約こそがWDM導入の判断根拠であり、単に「多重化したいから」でWDMを選ぶわけではありません。

方式分割する軸主な適用場面
TDM時間1回線内での複数顧客チャネルの多重化
FDM周波数帯無線・短距離での少数チャネル多重化
WDM光の波長新規敷設なしでの光ファイバ基幹回線の大容量化
注意

ひっかけ: 「WDMとTDMは互いに排他的な方式であり同時には使えない」は誤りです——WDMで分けた各波長チャネルの中で、さらにTDMによる時分割多重を行うのが実務の一般的な構成であり、両者は組み合わせて使われます。また「多重化したい場面では常にWDMが最適」も誤り=WDMは光ファイバの新規敷設が困難・大容量化が必須という制約下で合理的な選択であり、少数チャネルの短距離伝送ではFDMやTDM単独で十分な場合が多いです。

符号化・多重化・誤り制御の図。
信号を運ぶ

1.5.3この節のまとめ

  • 伝送符号化は信号遷移からクロックを再生する自己同期性が重要(同値ビット連続への対策)
  • TDM=時間分割、FDM=周波数分割、WDM=光の波長分割(FDMの光版)。WDMとTDMは組み合わせて使う
  • WDM導入の判断根拠は「新規敷設が困難で大容量化が必須」という制約であり、単純な多重化ニーズだけでは選ばない

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 通信事業者が、都市間の基幹回線において新規の光ファイバ敷設なしに伝送容量を増強したいと考えている。既設のファイバは既にTDMで複数顧客回線を多重化済みである。この要件に最も適した対応はどれか。

Q2. TDM・FDM・WDMの違いに関する記述として最も適切なものはどれか。

Q3. 伝送路上で`0`が非常に長く連続するデータを送る際、単純な電圧の高低のみで`0`/`1`を表す符号化方式を用いると生じやすい問題として最も適切なものはどれか。

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