変更要約: 初版
1.4IPv6とアドレス解決
128ビットのIPv6アドレス表記とグローバルユニキャストアドレス・リンクローカルアドレス、IPv4のMACアドレス解決を担うARPとIPv6版のNDP、IPv4/IPv6を共存させるデュアルスタック、そして「IPv4アドレス枯渇にどう対処するか」を判断する力を学びます。
IPv4アドレスの在庫枯渇は既に現実の制約であり、ネットワーク設計者は「新規拠点や新規サービスをIPv4のまま拡張するか」「IPv6へ移行するか」「両方を共存させるか」という判断を迫られます。この節ではIPv6の基礎に加え、限られたIPv4資源と将来性のあるIPv6のどちらをどう組み合わせるかという移行技術の選定を学びます。
1.4.1IPv6アドレスの表記と種類
- IPv6アドレス=128ビットを16ビットずつ8グループに区切りコロン区切りの16進数で表記(例:
2001:0db8:0000:0000:0000:0000:0000:0001)。連続する0000グループは::で1回だけ省略でき、各グループの先頭の0は省略可能(2001:db8::1)。 - グローバルユニキャストアドレス=インターネット上で一意に到達可能なIPv6アドレス(先頭
2000::/3の範囲)。リンクローカルアドレス(fe80::/10)は同一リンク(同一セグメント)内でのみ有効で、ルータを越えて転送されない。IPv6インタフェースには自動的にリンクローカルアドレスが付与され、近隣探索等の基盤として使われる。
1.4.2ARPとNDP(アドレス解決)
- ARP(アドレス解決プロトコル)=IPv4環境で、宛先IPアドレスに対応するMACアドレスをブロードキャストで問い合わせて解決するプロトコル。同一セグメント内の通信で、次に転送すべき機器のMACアドレスを特定するために使われる。
- NDP(近隣探索プロトコル)=IPv6でARPに相当する機能を提供するプロトコルで、ICMPv6のメッセージ(近隣要請/近隣広告等)を使い、ブロードキャストではなくマルチキャストでアドレス解決を行う点がARPとの大きな違い。ルータ広告によるアドレス自動設定(SLAAC)の基盤にもなる。
「ARPはブロードキャストでMACアドレスを解決」「NDPはICMPv6のマルチキャストで解決しSLAACの基盤にもなる」「リンクローカルアドレスはルータを越えない」が最頻出です。IPv4とIPv6でアドレス解決の仕組みがブロードキャストかマルチキャストかで対比されている点を押さえましょう。
あなたはISP相当の事業者でネットワーク設計を担当しており、既存顧客向けにIPv4アドレスを追加割当したいものの、手持ちのIPv4アドレス在庫が枯渇寸前という制約に直面しています。選択肢の1つはNAT/NAPTでプライベートアドレスを共有し1つのグローバルIPv4アドレスで多数の顧客を収容する方法ですが、ポート枯渇や一部アプリケーションとの相性問題(P2P通信等)という副作用があります。もう1つの選択肢は新規顧客から段階的にIPv6へ移行してもらう方法ですが、既存のIPv4専用サービスとの通信互換性が失われるため、デュアルスタック(1台の機器がIPv4とIPv6の両方のアドレス・スタックを同時に持ち、相手のプロトコルに応じて使い分ける)を採用すれば、IPv4サービスへの後方互換性を保ちながら新規顧客をIPv6中心で収容でき、IPv4アドレス消費を抑えつつ移行を進められます。もし双方の機器がIPv6のみでIPv4非対応機器と通信する必要が生じた場合は、IPv6パケットをIPv4網でカプセル化して運ぶトンネリングや、IPv6とIPv4を相互変換するNAT64のような変換技術が必要になります。「今すぐ全顧客をIPv6化する」のではなく、既存資産との互換性・移行コスト・将来のアドレス需要を天秤にかけ、デュアルスタックを中核に据えた段階移行を選ぶのが、IPv4枯渇下での現実的な設計判断です。
| 技術 | 概要 | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| NAT/NAPT | プライベートIPv4を1つのグローバルIPv4で共有 | IPv4アドレス不足の当面の緩和 |
| デュアルスタック | 1台がIPv4/IPv6両方のスタックを保持 | IPv4互換を保ちつつIPv6へ段階移行 |
| トンネリング | IPv6パケットをIPv4網でカプセル化して運ぶ | IPv6アイランド間をIPv4網経由で接続 |
| NAT64 | IPv6とIPv4のアドレス・プロトコルを相互変換 | IPv6専用機器からIPv4専用機器への通信 |
ひっかけ: 「IPv6ではARPと全く同じ仕組みでMACアドレスを解決する」は誤りです——IPv6はNDP(ICMPv6のマルチキャストメッセージ)でアドレス解決を行い、ARPのようなブロードキャストは使いません。また「リンクローカルアドレスはグローバルユニキャストアドレスの代わりにインターネット通信に使える」も誤り=リンクローカルアドレスは同一リンク内限定でルータを越えないため、インターネット通信にはグローバルユニキャストアドレスが必要です。
1.4.3この節のまとめ
- IPv6アドレスは128ビット・コロン区切り16進数、連続する0は
::で1回だけ省略可能 - ARPはブロードキャストで解決、NDPはICMPv6のマルチキャストで解決しSLAACの基盤になる
- IPv4枯渇下ではデュアルスタックを中核に、NAT/NAPT・トンネリング・NAT64を要件に応じて組み合わせる
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. IPv4アドレスの在庫が枯渇寸前のISPが、既存のIPv4専用サービスとの互換性を保ちながら新規顧客をIPv6中心で収容したいと考えている。この要件に最も適した技術はどれか。
Q2. IPv4のARPとIPv6のNDPによるアドレス解決の違いに関する記述として最も適切なものはどれか。
Q3. ある社内システムがリンクローカルアドレス(fe80::/10)のみを持つIPv6インタフェースで運用されていた。このシステムをインターネット経由で外部拠点から到達可能にしたいという要件に対して、最も適切な対応はどれか。

