変更要約: 初版
1.2LANとイーサネット・スイッチング
イーサネット規格とCSMA/CD・全二重通信、48ビットのMACアドレス、L2スイッチのMACアドレス学習とフラッディング、コリジョンドメインとブロードキャストドメインを分ける機器選定、そして「ハブ/L2スイッチ/L3スイッチのどれを使うか」を判断する力を学びます。
オフィスやデータセンターのLAN設計では、「ハブを使うかスイッチを使うか」「L2スイッチで十分かL3スイッチが必要か」という機器選定が、性能・コスト・拡張性を大きく左右します。この節では、CSMA/CDがなぜ現代のスイッチドLANでは問題にならないのか、MACアドレス学習がなぜセグメントを分けても通信が成立するのかという仕組みの理解を土台に、実務での機器選定の判断基準を身につけます。
1.2.1イーサネット規格とCSMA/CD・全二重
- イーサネット=IEEE802.3で規定されるLANの標準規格。伝送速度で1000BASE-T(1Gbps)・10GBASE-T(10Gbps)等と呼び分け、媒体(ツイストペア/光ファイバ)と距離により規格が細分化される。
- CSMA/CD(搬送波感知多重アクセス/衝突検出)=共有媒体(バス型・ハブ経由の半二重LAN)で複数端末が同時送信するとコリジョン(衝突)が起き、検出すると送信を止めてランダム時間待って再送する制御方式。全二重通信(送信と受信を別回線で同時に行う)が可能なスイッチ接続では、そもそも衝突が起こり得ないためCSMA/CDは実質的に不要になる。
1.2.2MACアドレスとL2スイッチの学習・フラッディング
- MACアドレス=ネットワークインタフェースに割り当てられた48ビットの物理アドレス(例:
00-1A-2B-3C-4D-5E)。上位24ビットがベンダー識別子(OUI)、下位24ビットが製造者側のシリアル番号で、原則として世界で重複しない。 - L2スイッチは受信フレームの送信元MACアドレスと受信ポートの対応をMACアドレステーブル(学習)に記録し、以後そのMACアドレス宛のフレームは該当ポートのみへ転送する。テーブルに宛先MACが未学習の場合や宛先がブロードキャストの場合は、受信ポート以外の全ポートへ送出するフラッディングが行われる。
「全二重通信ではコリジョンが起こらずCSMA/CDが不要」「MACアドレス学習=送信元MAC+受信ポートの記録」「未学習/ブロードキャストはフラッディング」が最頻出です。コリジョンドメイン(衝突が波及する範囲)とブロードキャストドメイン(ブロードキャストが波及する範囲)の違いを機器ごとに整理しておきましょう。
あなたは新設オフィスのLANを設計するネットワーク構築者で、30台のPCを1つのフロアに収容する要件があります。まず候補に上がったハブ(リピータハブ)は全ポートが1つのコリジョンドメインを共有する物理層の中継機器で、接続台数が増えるほど衝突が頻発し実効速度が低下するため、30台規模では性能面で不適切と判断できます。次にL2スイッチを検討すると、各ポートが独立したコリジョンドメインになり(ポートごとに全二重通信が可能)、MACアドレス学習で必要な宛先だけにフレームを転送するため、ハブと比べて衝突が実質的に解消され性能が大幅に向上します。ただし全ポートは依然として1つのブロードキャストドメインを共有するため、ARPリクエストなどのブロードキャストは全PCに届きます。ここでもし「フロアを部門ごとに独立したセグメントに分けてブロードキャストの影響範囲を制限したい」「部門間はルーティングで制御したい」という追加要件が出た場合は、L3スイッチ(VLANを切りルーティング機能を持つスイッチ)を選ぶ必要があります。単に「フロア内30台をつなぐ」だけならL2スイッチで要件を満たせますが、セグメント分割・ルーティングの要否が機器選定の分岐点になります。
| 機器 | 対応層 | コリジョンドメイン | ブロードキャストドメイン | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ハブ(リピータハブ) | L1 | 全ポートで1つ | 全ポートで1つ | 小規模・低コスト(現在は非推奨) |
| L2スイッチ | L2 | ポートごとに独立 | 全ポートで1つ | 同一セグメント内の高速中継 |
| L3スイッチ | L2+L3 | ポートごとに独立 | VLANごとに分割可能 | セグメント分割・部門間ルーティング |
ひっかけ: 「L2スイッチを導入すればブロードキャストの影響範囲も分割できる」は誤りです——L2スイッチが分割するのはコリジョンドメインのみで、ブロードキャストドメインは全ポートで1つのままです。ブロードキャストドメインを分割するにはVLANを切れるL3スイッチ(またはVLAN対応L2スイッチ+ルーティング機能)が必要です。
1.2.3この節のまとめ
- 全二重通信ではコリジョンが起きないためCSMA/CDは不要。ハブは半二重・全ポート共有のコリジョンドメイン
- L2スイッチは送信元MAC+受信ポートを学習し、未学習/ブロードキャストはフラッディングする
- L2スイッチはコリジョンドメインのみ分割、ブロードキャストドメインの分割にはVLAN対応のL3スイッチが必要
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 30台のPCを1フロアに接続する新設オフィスのLANを設計している。将来的な部門間のセグメント分割やルーティング制御の予定はない。この要件に対して、性能とコストの両面から最も妥当な機器選定はどれか。
Q2. L2スイッチのMACアドレス学習に関する記述として最も適切なものはどれか。
Q3. あるオフィスで、部門間のブロードキャストトラフィックによる帯域圧迫を防ぐため、部門ごとにブロードキャストドメインを分割したいという要件が出た。既設のL2スイッチのみで対応しようとしたところ実現できなかった。その理由として最も適切なものはどれか。

