変更要約: 初版
1.1OSI参照モデルとTCP/IP階層
通信を7つの役割に分けるOSI参照モデルと実務で使われるTCP/IPの4階層の対応関係、上位層データを下位層のヘッダで包むカプセル化と各層のPDU(フレーム/パケット/セグメント)、そしてL2/L3/L4/L7のどの層の障害かを切り分ける判断力を学びます。
ネットワークスペシャリストの午前II専門では、単に「OSI参照モデルは7層である」という暗記ではなく、目の前の通信障害がどの層で起きているかを切り分け、次の一手を判断する力が問われます。「Webページが表示されない」という1つの現象でも、原因はケーブル断線(物理層)かもしれず、IPルーティングの誤り(ネットワーク層)かもしれず、DNS名前解決の失敗(アプリケーション層)かもしれません。層モデルは切り分けの地図として機能します。
1.1.1OSI参照モデルの7層
- OSI参照モデル=通信機能を7つの層に分割した国際標準の設計モデル。下位から物理層(L1)・データリンク層(L2)・ネットワーク層(L3)・トランスポート層(L4)・セッション層(L5)・プレゼンテーション層(L6)・アプリケーション層(L7)の順。各層は直下の層が提供するサービスだけを利用し、直上の層にサービスを提供する(層の独立性)。
- 層の独立性のおかげで、下位層を交換しても上位層に影響しない(例:イーサネットからWi-Fiに物理媒体を変えてもIP/TCPアプリはそのまま動く)。この性質が「どの層で障害が起きたか」を他層から切り離して調査できる根拠になる。
1.1.2TCP/IPの4階層との対応
- TCP/IP階層=実務のインターネット通信で使われる4階層モデル。ネットワークインタフェース層(L1+L2相当)・インターネット層(L3相当)・トランスポート層(L4相当)・アプリケーション層(L5〜L7相当)の順で、OSIの上位3層(セッション/プレゼンテーション/アプリケーション)を1層にまとめる点が実務上の大きな違い。
- この対応関係を知っていると、機器のカタログスペックが「L2スイッチ」「L3スイッチ」のようにOSI層番号で書かれていても、TCP/IPでの実装(イーサネット=L1+L2、IP=インターネット層)にすぐ読み替えられる。
1.1.3カプセル化とPDU
- カプセル化=上位層から渡されたデータに、送信側の各層が自層のヘッダ(場合によってはトレーラ)を付加して下位層へ渡していく処理。受信側では逆に各層がヘッダを取り除く非カプセル化が行われる。
- 各層のデータ単位をPDU(プロトコルデータユニット)と呼び、名称が層ごとに異なる=アプリケーション層はデータ、トランスポート層はセグメント(TCP)/データグラム(UDP)、ネットワーク層はパケット、データリンク層はフレーム。障害報告で「パケットが届かない」「フレームが壊れている」という言葉の違いは、実は問題がどの層で観測されたかを示すヒントになる。
「OSI7層⇔TCP/IP4階層の対応」「PDU名称(データ/セグメント/パケット/フレーム)」「カプセル化はヘッダを付加しながら下位層へ渡す処理」が最頻出です。単なる暗記でなく、「この症状はどのPDU・どの層の話か」を即座に判定できるように練習しておきましょう。
あなたは社内ネットワークの運用担当者で、ある拠点から「特定の業務システムにだけアクセスできない」という報告を受けたとします。まずL3(ネットワーク層)を疑い ping で対象サーバのIPアドレスに到達できるか確認したところ応答があり、IP到達性は正常と判断できました。次に、Webブラウザでアクセスするとタイムアウトする一方、同じサーバの別ポートへの疎通は正常だったため、L4(トランスポート層)の特定ポート(例:TCP 443)がどこかでブロックされている可能性が浮上します。ここで「pingが通るからネットワークは正常なはずだ」と結論づけるのは早計です。ping(ICMP)はL3の到達性のみを確認する検査であり、L4のポート単位のフィルタリング(FWのACL等)を検出できないからです。実際に調査すると、途中経路のファイアウォールがTCP443宛の通信のみ遮断していたことが判明しました。もしこれがDNS名前解決の失敗(社内システムのホスト名が引けない)が原因であれば、それはL7(アプリケーション層)の問題であり対処法(DNSサーバの設定確認)がまったく異なります。このように、症状から「どの層の問題か」を仮説立てて段階的に切り分けることが、闇雲な設定変更より遥かに効率的な障害対応です。
| 層(OSI) | TCP/IP対応 | PDU名称 | 切り分けの一例 |
|---|---|---|---|
| L7 アプリケーション層 | アプリケーション層 | データ | DNS名前解決・HTTPステータス確認 |
| L4 トランスポート層 | トランスポート層 | セグメント/データグラム | 特定ポートへの疎通確認(telnet等) |
| L3 ネットワーク層 | インターネット層 | パケット | ping/tracerouteによる到達性確認 |
| L2 データリンク層 | ネットワークインタフェース層 | フレーム | MACアドレステーブル・VLAN設定確認 |
| L1 物理層 | ネットワークインタフェース層 | ビット列 | ケーブル・ポートのリンクランプ確認 |
ひっかけ: 「pingが通ればアプリケーションも正常に通信できるはずだ」は誤りです——pingはL3の到達性のみを検査し、L4のポートフィルタリングやL7のアプリケーション不具合は検出できません。また「OSI参照モデルの各層はTCP/IPの各層と1対1で対応する」も誤り=TCP/IPはOSIの上位3層(L5〜L7)をアプリケーション層1つにまとめるため、対応は1対1ではありません。
1.1.4この節のまとめ
- OSI7層(物理/データリンク/ネットワーク/トランスポート/セッション/プレゼンテーション/アプリケーション)はTCP/IP4階層でL5〜L7がアプリケーション層1つに統合される
- カプセル化は各層がヘッダを付加して下位層へ渡す処理。PDU名称はデータ/セグメント/パケット/フレームと層ごとに異なる
- 障害切り分けは「症状がどの層の話か」を仮説立てて段階的に検証する(pingはL3のみ検査、L4/L7は別途確認)
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. ある拠点から特定のWebシステムにのみアクセスできないと報告があった。対象サーバへのpingには応答があるが、HTTPSでの接続はタイムアウトする。この現象の原因調査として次に確認すべき最も適切な事項はどれか。
Q2. 新人SEに「TCP/IPの4階層はOSI参照モデルの7層とどう対応するか」を説明することになった。最も正確な説明はどれか。
Q3. ネットワーク運用者が障害報告のログで「フレームのFCSエラーが多発している」という記述を見つけた。この記述が示す問題が発生している可能性が最も高い層はどれか。

