変更要約: 初版
1.5IPv6・無線・仮想化
128ビットのIPv6アドレス表記と種類(GUA/ULA/リンクローカル/マルチキャスト/エニーキャスト)とEUI-64、無線の基礎(2.4/5GHz・非重複チャネル1/6/11・SSID・暗号化)、そして仮想化(VM/コンテナ/VRF)を、設計・トラブルシュートの判断として学びます。
この節はNetwork Fundamentalsの締めくくりとして、現代ネットワークに欠かせない3つの土台——IPv6アドレッシング、無線の原則、仮想化——を扱います。いずれも「用語を知っている」だけでは不十分で、IPv6のどのアドレス種別を使うか、電波干渉をどう避けるか、VMとコンテナ・VRFをどう使い分けるかという判断ができることを目指します。
1.5.1IPv6アドレスの表記と種類
- IPv6アドレス=128ビットを16ビットずつ8グループに区切りコロン区切りの16進で表記(例:
2001:0db8:0000:0000:0000:0000:0000:0001)。各グループ先頭の0は省略でき、連続する0グループは::で1回だけ省略できる(2001:db8::1)。IPv6にはブロードキャストが無く、代わりにマルチキャストを使う。 - 主な種別:GUA(グローバルユニキャスト・
2000::/3)=インターネット上で一意に到達可能。ULA(ユニークローカル・fc00::/7、実務はfd00::/8)=組織内部用でインターネットには出さない。リンクローカル(fe80::/10)=同一リンク内限定でルータを越えず、各IFに自動付与され近隣探索の基盤になる。マルチキャスト(ff00::/8)=グループ宛。エニーキャスト=同一アドレスを複数ノードに付与し最も近い1台に届ける。 - EUI-64=48ビットのMACアドレスから64ビットのインタフェースIDを生成する方式。MACを前半24ビットと後半24ビットに分けて中央に
FFFEを挿入し、先頭オクテットの7番目のビット(U/Lビット)を反転する。例:MAC00:1A:2B:3C:4D:5E→021A:2BFF:FE3C:4D5E(先頭00→02)。
1.5.2無線の基礎
- 無線LANは主に2.4GHz帯と5GHz帯を使う。2.4GHzは到達距離が長く障害物に強いが、利用可能な帯域が狭く非重複チャネルが1・6・11の3つだけで干渉しやすい。5GHzは非重複チャネルが多く高速だが到達距離が短い。近接APのチャネル設計(重ならないよう1/6/11を配置)が干渉回避の要になる。
- SSID=無線ネットワークの識別名。RF(無線周波数)は共有媒体なので、電波は半二重的に共有され距離・障害物・干渉で品質が変わる。通信の保護には暗号化が必須で、脆弱なWEPは非推奨、WPA2、より強固なWPA3を用いる。
1.5.3仮想化(VM・コンテナ・VRF)
- VM(仮想マシン)=ハイパーバイザ上で各VMが独自のゲストOSを持つ。分離は強いがOSごとにリソースを消費し起動も重い。コンテナはホストOSのカーネルを共有して軽量・高速起動だが分離はVMより弱い。用途(強い分離が要るならVM、密度と俊敏性ならコンテナ)で使い分ける。
- VRF(Virtual Routing and Forwarding)=1台のルータ/L3スイッチ内に複数の独立したルーティングテーブルを持たせる技術。同一機器上で顧客Aと顧客Bの経路を完全分離でき、IPアドレスが重複していても互いに干渉しない。ネットワーク層の「マルチテナント」を実現する。
「IPv6はブロードキャスト無し・::は1回だけ」「GUA=2000::/3・ULA=fc00::/7(fd00::/8)・link-local=fe80::/10はルータ越えない・anycastは最近傍へ」「EUI-64はFFFE挿入+U/Lビット反転」「2.4GHzの非重複チャネルは1/6/11」「VMは独自OS・コンテナはカーネル共有・VRFは複数ルーティングテーブル」が頻出です。
あなたはオフィスの無線が「昼になると特定エリアで極端に遅くなる」という苦情を調査しています。現地で確認すると、そのエリアには3台のAPが密集し、いずれも2.4GHz帯で運用され、3台とも同じチャネル6に設定されていました。ここで「電波が弱いのだろう」とAPの出力を上げるのは逆効果の判断です——同一チャネルのAP同士は同じ周波数を奪い合い、出力を上げるほど互いの電波干渉(同一チャネル干渉)が悪化して実効速度が落ちます。2.4GHz帯で互いに重ならない(非重複)チャネルは1・6・11の3つだけなので、密集する3台をそれぞれ1・6・11に振り分けるのが正しい対処です。これで同一チャネル干渉が解消され、昼のピーク時でも各APが独立した帯域を使えます。さらに、対応端末が多い5GHz帯へ誘導すれば非重複チャネルが多く、より抜本的に混雑を緩和できます。ここで重要なのは、「速度が出ない=電波が弱い=出力を上げる」という短絡ではなく、無線が共有媒体(RF)でありチャネル設計が性能を左右するという原理から、干渉を疑って切り分ける判断です。もし暗号化がWEPのまま運用されていたら、性能とは別にセキュリティの是正(WPA2/WPA3化)も同時に提案すべきでしょう。
| 種別 | プレフィックス | 到達範囲 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| グローバルユニキャスト(GUA) | 2000::/3 | インターネット全体 | 外部と通信する一意アドレス |
| ユニークローカル(ULA) | fc00::/7(実務fd00::/8) | 組織内部 | 内部用・インターネットに出さない |
| リンクローカル | fe80::/10 | 同一リンク内のみ | 近隣探索・自動付与(ルータ越えず) |
| マルチキャスト | ff00::/8 | グループ | グループ宛(ブロードキャストの代替) |
ひっかけ: 「無線が遅いのは電波が弱いからで、AP出力を上げれば解決する」は誤りです——密集APが同一チャネルだと出力増強はかえって同一チャネル干渉を悪化させます。2.4GHzでは非重複チャネル1/6/11へ振り分けるのが正解です。また「リンクローカルアドレス(fe80::/10)でインターネット通信できる」も誤り=リンクローカルはルータを越えず、インターネットにはGUAが必要です。
1.5.4この節のまとめ
- IPv6は128ビット・
::は1回だけ省略、ブロードキャスト無し。GUA=2000::/3、ULA=fc00::/7、link-local=fe80::/10(ルータ越えず)、anycastは最近傍へ。EUI-64はFFFE挿入+U/Lビット反転 - 2.4GHzの非重複チャネルは1/6/11。密集APの遅延は出力増でなくチャネル設計で解消。暗号化はWEPを避けWPA2/WPA3
- VMは独自OSで強い分離、コンテナはカーネル共有で軽量、VRFは1台内に複数ルーティングテーブルを持ち経路を分離する
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 昼になると特定エリアの無線が極端に遅い。現地では3台のAPが密集し、いずれも2.4GHz帯で同じチャネル6に設定されていた。この症状への対処として最も適切なものはどれか。
Q2. ある社内サーバがIPv6インタフェースにリンクローカルアドレス(fe80::/10)のみを持って稼働していた。このサーバを外部拠点からインターネット経由で到達可能にしたい。最も適切な対応はどれか。
Q3. 1台のルータ上で、IPアドレス空間が重複している2つの顧客のトラフィックを完全に分離して収容したいという要件が出た。この要件に最も適した技術はどれか。

