変更要約: 初版
2.1VLANとトランク
1台の物理スイッチを複数のブロードキャストドメインへ分割するVLAN、エンドホストを1つのVLANへ収容するアクセスポート、複数のスイッチをまたいで同じVLANを延伸するために802.1QタグでフレームをVLANごとに識別するトランクポート、タグを付けずに送る唯一のVLANであるネイティブVLAN、そして工場出荷時に全ポートが所属する既定VLAN(VLAN1)を、Cisco IOS の設定・検証コマンドとともに学びます。
CCNA では VLAN を「概念」ではなく「実機で設定・検証・トラブルシュートするもの」として問われます。1台のCatalystスイッチを部署ごとに論理分割し、それを複数のスイッチにまたがって延伸するとき、どのポートをアクセスポートにし、どのリンクをトランクポートにし、show コマンドの出力から設定ミスをどう読み取るか——この節は、要件から最適なポート設定を選び、switchport 系コマンドの結果を診断できるようになることを目標にします。
2.1.1VLANの基礎と既定VLAN
- VLAN=1台のスイッチを論理的に複数のブロードキャストドメインへ分割する仕組み。同一VLAN内は同じL2セグメントとして通信できるが、異なるVLAN間はルータ/L3スイッチを介さない限り通信できない。CCNA範囲のノーマルレンジVLANはVLAN 1〜1005(このうち1002〜1005はレガシー予約)で、通常は1〜1005の範囲を実務で使う。
- 既定VLAN(VLAN1)=スイッチの全ポートが工場出荷時に所属するVLAN。CDP・DTP・VTP・STP などの管理トラフィックも既定でVLAN1を流れる。VLAN1は削除も名前変更もできないため、セキュリティ上はユーザトラフィックを未使用の別VLANへ移すのが定石。
- VLANの作成はグローバルコンフィグで
vlan 10→name SALES。VLANデータベースの確認はshow vlan briefで、各VLANにどのポートが割り当てられているかを一覧できる。
2.1.2アクセスポートと複数スイッチ跨ぎ
- アクセスポート=1つのVLANにのみ所属し、タグなしフレームでエンドホスト(PC・プリンタ・IP電話等)を収容するポート。設定は
switchport mode access→switchport access vlan 10。ホスト側は802.1Qタグの存在を一切意識しない。 - 同じVLAN(例:VLAN10)を複数のスイッチにまたがって延伸する場合、各スイッチで同じVLAN IDを作成し、スイッチ間のリンクをトランクにする。こうすることで、別々のスイッチに接続されたVLAN10のホスト同士が、あたかも同一スイッチ上にいるかのようにL2通信できる。
- アクセスポートに割り当てたVLANをスイッチ上で作成し忘れると、そのポートは非アクティブ(inactive)となり通信できない。
show vlan briefにVLANが存在するか、show interfaces <if> switchportでアクセスVLANが意図通りかを必ず確認する。
2.1.3802.1Qトランクとネイティブフレームの扱い
- トランクポート=1本のリンクで複数VLANのフレームを運ぶポート。フレームにIEEE802.1QのVLANタグ(VLAN IDは12ビット)を付けてVLANを識別する。設定は
switchport mode trunk。トランク上を流れるVLANの確認はshow interfaces trunk。 - ネイティブVLAN=トランク上で唯一タグを付けずに送るVLAN(既定はVLAN1)。トランクの両端でネイティブVLANが一致していないと、片側が別VLANとして受け取りVLANリークやSTPの不整合が起きる。CDPは
Native VLAN mismatchを検出して警告する。セキュリティ上はswitchport trunk native vlan 99のように未使用VLANへ変更するのが定石。 - トランクで許可するVLANは既定で全VLANだが、
switchport trunk allowed vlan 10,20,99のように明示的に絞ることで、不要なVLANのブロードキャストがトランクを流れるのを防げる(プルーニング的な効果)。
「アクセスポート=1VLAN・タグなし・エンドホスト用」「トランクポート=複数VLAN・802.1Qタグ・スイッチ間用」「ネイティブVLAN=トランク上で唯一タグなし・両端一致必須」の対比が最頻出です。show interfaces trunk の出力から「どのVLANが許可され、ネイティブVLANが何か」を読み取る問題、switchport access vlan を設定したのにVLAN未作成で通信できない、といった設定と検証コマンドを結び付ける診断型が狙われます。
ある企業が2台のCatalystスイッチ(SW1・SW2)にまたがって、営業部(VLAN10)・開発部(VLAN20)を収容しています。SW1のGi0/1にはVLAN10のPCが、SW2のGi0/1にはVLAN20のPCが接続され、SW1とSW2はGi0/24同士で接続されています。管理者は各PCのポートを switchport mode access + switchport access vlan 10(または20)として設定しましたが、SW2ではVLAN20をまだ作成していなかったため、SW2のGi0/1が inactive となり、開発部PCがどことも通信できませんでした。まず show vlan brief でSW2にVLAN20が存在しないことを確認し、vlan 20 + name DEV で作成して復旧します。次に、SW1のVLAN10のPCとSW2のVLAN10のPC(別途追加)を跨いで通信させたいので、スイッチ間のGi0/24をトランクとして switchport mode trunk に設定し、show interfaces trunk でVLAN10・20が許可され、ネイティブVLANが両端でVLAN1に一致していることを確認します。ここで、SW1側だけ switchport trunk native vlan 99 に変更してSW2側を変更し忘れると、両端のネイティブVLANが食い違い、CDPが Native VLAN mismatch を警告します。この不一致はタグなしフレームが誤ったVLANとして受信されるVLANリークを招くため、トランクの両端で必ず同じネイティブVLANに揃えることが復旧の鍵になります。このように、VLAN設計のトラブルシュートは「VLANが作成されているか」「ポートモード(access/trunk)が要件に合っているか」「トランクの許可VLANとネイティブVLANが両端で一致しているか」の3点を show vlan brief と show interfaces trunk で順に切り分けます。
| 項目 | アクセスポート | トランクポート |
|---|---|---|
| 所属VLAN数 | 1つのみ | 複数 |
| タグ | タグなし | 802.1Qタグ(ネイティブVLANのみタグなし) |
| 主な接続先 | PC・プリンタ・IP電話等のエンドホスト | スイッチ間・スイッチ-ルータ間 |
| 設定コマンド | `switchport mode access` / `switchport access vlan N` | `switchport mode trunk` / `switchport trunk native vlan N` |
| 検証コマンド | `show vlan brief` | `show interfaces trunk` |
ひっかけ: 「アクセスポートに switchport access vlan 30 を設定すれば、そのVLANが無くても自動的に作成されて通信できる」は誤りです——VLANがスイッチ上に存在しないとポートは inactive となり通信できません(vlan 30 で明示作成が必要)。また「トランクのネイティブVLANは片側だけ変更すれば足りる」も誤り=両端で一致していないとVLANリークとSTP不整合を招くため、必ず両端を揃えます。さらに「エンドホストのPCはトランクポートに接続してタグ付きで送るべき」も誤り=PCはアクセスポートに接続し、タグ付与はスイッチが行います。
2.1.4この節のまとめ
- VLANは1台のスイッチを論理分割(ノーマルレンジ1〜1005)、既定VLAN(VLAN1)は削除不可・全ポートの初期所属
- アクセスポート=1VLAN・タグなし・エンドホスト用、トランクポート=複数VLAN・802.1Qタグ・スイッチ間用。同じVLANを複数スイッチへ延伸するにはトランクが必要
- ネイティブVLANはトランク上で唯一タグなし・両端一致が必須。検証は
show vlan brief(VLANとアクセス割当)とshow interfaces trunk(許可VLAN・ネイティブVLAN)
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. あるアクセススイッチのGi0/5に開発部のPCを接続し、`switchport mode access` と `switchport access vlan 30` を設定したが、そのPCはどのホストとも通信できない。`show vlan brief` の出力にVLAN30が表示されていない。原因と復旧策として最も適切なものはどれか。
Q2. スイッチSW1とSW2をトランクで接続した後、CDPが `Native VLAN mismatch` の警告を出した。SW1のトランクはネイティブVLAN99、SW2のトランクはネイティブVLAN1である。この不一致が引き起こす問題と正しい対処として最も適切なものはどれか。
Q3. 2台のスイッチにまたがって同一のVLAN10を延伸し、両スイッチに接続されたVLAN10のホスト同士をL2で通信させたい。スイッチ間リンクの設定として最も適切なものはどれか。

