変更要約: 初版
2.2検出プロトコルとEtherChannel
直接接続された隣接機器を自動発見するCisco独自のCDPと業界標準のLLDP、そして複数の物理リンクを1本の論理リンクへ束ねて帯域と冗長性を両立させるEtherChannel(動的ネゴシエーションのLACP、L2/L3構成、show etherchannel summary による検証)を、Cisco IOS の設定・検証コマンドとともに学びます。
ネットワークの構成把握とトラブルシュートでは、「この機器はどこの誰と、どのポートで繋がっているのか」を素早く知る必要があります。CDP/LLDPはこれをケーブルをたどらずに show コマンドで可視化します。一方、スイッチ間の1本のリンクが帯域のボトルネックや単一障害点になるとき、EtherChannelで複数リンクを論理的に1本へ束ねれば、STPに片方を止められることなく帯域を合算し、1本が切れても通信を継続できます。この節は、隣接発見と物理リンク集約という2つの実務ツールを設定・検証コマンドと結び付けて学びます。
2.2.1CDP(Cisco独自)とLLDP(業界標準)
- CDP(Cisco Discovery Protocol)=Cisco独自のL2隣接発見プロトコル。直接接続された相手のデバイスID・接続ポート・機種(platform)・IPアドレス・IOSバージョン等を自動収集する。Cisco機器では既定で有効。確認は
show cdp neighbors(一覧)/show cdp neighbors detail(IPやIOS版まで含む詳細)。 - LLDP(Link Layer Discovery Protocol)=IEEE802.1ABの業界標準隣接発見プロトコル。ベンダーをまたいだマルチベンダー環境で使える点がCDPとの本質的な違い。Cisco機器では既定で無効なため
lldp run(グローバル)で有効化する。確認はshow lldp neighbors。 - どちらもL2で動作するため、同一VLAN/直接接続の相手しか見えない(ルータを越えた先の機器は発見できない)。セキュリティ上は、外部・信頼できないポートで
no cdp enableやno lldp transmit/receiveを使い、機器情報の漏えいを抑える運用もある。
2.2.2EtherChannelとLACP
- EtherChannel=複数の物理リンク(最大8本のアクティブリンク)を1本の論理リンク(ポートチャネル)へ束ねる技術。STPはこの束を1本のリンクとして扱うため、冗長リンクをブロックせずに帯域を合算でき、1本が障害でも残りで通信を継続できる。
- LACP(Link Aggregation Control Protocol)=IEEE802.3adの業界標準の動的ネゴシエーションプロトコル。モードは
active(自分から交渉を開始)とpassive(相手の交渉を待つのみ)。片側だけ passive では束が形成されず、少なくとも片側はactiveが必要(active-active か active-passive でリンクアップ)。Cisco独自の動的版はPAgP(desirable/auto)。mode onは静的でネゴシエーションを行わない。 - 全ての束ねるポートは速度・デュプレックス・トランク/アクセス設定・許可VLANが一致していなければならない。不一致だとポートが束に参加できず、
show etherchannel summaryで該当ポートが(s)(suspended)や(D)(down)と表示される(正常時は(P)=bundled in port-channel)。
「CDP=Cisco独自・既定で有効」「LLDP=IEEE802.1AB業界標準・既定で無効(lldp runで有効化)」「LACP=IEEE802.3ad標準・active/passive・少なくとも片側activeが必要」「PAgP=Cisco独自・desirable/auto」「on=静的(ネゴなし)」が最頻出です。L2 EtherChannelは channel-group N mode active をメンバーポートに、L3 EtherChannelは各メンバーで no switchport してから同じ channel-group を設定し、ポートチャネルインタフェースにIPを付与します。検証は show etherchannel summary の (P)/(s)/(D) の読み取りが定番です。
あるデータセンタで、コアスイッチとディストリビューションスイッチを結ぶ1Gの単一リンクが、日中のバックアップトラフィックで飽和し始めました。管理者は帯域を増やすために物理リンクを2本に増設しましたが、そのままでは2本目のリンクをSTPがブロックしてしまい帯域は増えません(L2ループ防止のため冗長リンクの片方は必ずブロッキングになる)。そこで、2本をEtherChannelで束ね、STPに1本の論理リンクとして扱わせることで、両リンクを同時にアクティブにして帯域を合算します。両スイッチはCisco機なので、LACP(標準)でもPAgP(Cisco独自)でも選べますが、将来のマルチベンダー化を見越して標準のLACPを採用し、コア側を channel-group 1 mode active、ディストリ側を channel-group 1 mode passive に設定しました。片側 active・片側 passive でもLACPは束を形成できるため、これでポートチャネルが立ち上がります。ところが show etherchannel summary を見ると、2本のうち1本が (s)(suspended)のままでした。原因を調べると、片方のメンバーポートだけトランクの許可VLANが他方と異なっていたためで、EtherChannelは全メンバーの速度・デュプレックス・トランク設定・許可VLANが一致していないと束に参加させません。許可VLANを両ポートで揃えると、両方が (P)(bundled)になり、帯域が合算されて冗長性も確保されました。もし両側とも passive に設定していたら、どちらも交渉を開始せず束自体が形成されなかった点、そして mode on(静的)を片側だけに使うと相手とネゴシエーションが噛み合わずリンクがダウンする点も、EtherChannelのトラブルシュートで頻出する落とし穴です。
| プロトコル/モード | 種別 | 動作 | 束が形成される組合せ |
|---|---|---|---|
| LACP `active` | IEEE802.3ad 標準 | 自分から交渉を開始 | active-active / active-passive |
| LACP `passive` | IEEE802.3ad 標準 | 相手の交渉を待つのみ | passive-passive は不可 |
| PAgP `desirable`/`auto` | Cisco独自 | desirableは交渉開始・autoは待機 | desirable-desirable / desirable-auto |
| `on` | 静的(ネゴなし) | 無条件に束ねる | 両側 on のみ(LACP/PAgPとは混在不可) |
ひっかけ: 「LACPは両側とも passive にしておけば安全に束が組める」は誤りです——passive-passive はどちらも交渉を開始しないため束が形成されません(少なくとも片側は active が必要)。また「物理リンクを2本挿せばSTPが自動で両方使ってくれる」も誤り=EtherChannelで束ねない限りSTPは片方をブロックするため帯域は増えません。さらに「LLDPはCiscoでも既定で有効」も誤り=LLDPは既定で無効で lldp run が必要、既定で有効なのはCisco独自のCDPです。
2.2.3この節のまとめ
- CDP=Cisco独自・既定で有効(
show cdp neighbors)、LLDP=IEEE802.1AB業界標準・既定で無効(lldp runで有効化)。どちらもL2で直接接続の隣接のみ発見 - EtherChannelは複数リンクを1本の論理リンクに束ね、STPにブロックさせず帯域と冗長性を両立。全メンバーは速度・デュプレックス・トランク/VLAN設定が一致必須
- LACP(標準・active/passive)は少なくとも片側activeが必要、PAgP(Cisco独自・desirable/auto)、
onは静的。検証はshow etherchannel summaryの(P)/(s)/(D)
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. マルチベンダー環境で、Cisco製スイッチと他社製スイッチが直接接続されている。両者の接続関係(相手のポート・機種)を隣接発見プロトコルで確認したい。最も適切な方法はどれか。
Q2. コアスイッチとディストリビュションスイッチ間を2本の物理リンクで接続したが、STPが2本目をブロックしてしまい帯域が増えない。両リンクを同時にアクティブにして帯域を合算しつつ冗長性も保つために採るべき対策として最も適切なものはどれか。
Q3. LACPでEtherChannelを構成したが `show etherchannel summary` を見ると、束ねたはずの2本のうち1本が `(s)`(suspended)と表示され束に参加していない。速度・デュプレックスは一致している。最も可能性が高い原因はどれか。

