Instiq
第2章 · ネットワークアクセス·v1.0.0·更新 2026/7/17·読了目安 約16分

変更要約: 初版

2.4Cisco無線アーキテクチャ

この節の要点

APを個別管理する自律型(autonomous)、クラウドから集中管理するクラウドベース、そしてWLCとAPで役割を分けるスプリットMAC(WLC)の各アーキテクチャ、CAPWAPでWLCに接続する軽量APの各APモード、AP/WLCへの管理アクセス手段、そしてWLC GUIでのWLAN作成(SSID・WPA2 PSK・QoSプロファイル・advanced設定)を学びます。

無線LANを数台のAPで済ませられる小規模拠点と、数百台のAPを全社で統一運用する大規模環境とでは、最適なアーキテクチャが異なります。CCNAでは、APを1台ずつ設定する自律型、クラウドのダッシュボードで集中管理するクラウドベース、そしてWLC(無線LANコントローラ)に制御を集約するスプリットMACの3方式を、その役割分担管理のしやすさの観点で比較し、さらにWLCのGUIで実際にWLANをどう作るか(SSID・セキュリティ・QoS)まで問われます。

2.4.13つの無線アーキテクチャ

  • 自律型(autonomous AP)=各APが単独で完結し、SSID・セキュリティ・チャネル等をAP1台ずつ個別に設定する方式。APが数台の小規模拠点では十分だが、台数が増えると設定変更を全APに手作業で反映する運用が破綻する。
  • クラウドベース=Meraki等のように、APをクラウド上のダッシュボードから集中管理する方式。設定・監視・ファーム更新をインターネット越しのGUIで一元化でき、拠点をまたいだ統一運用に向く。制御はクラウド、データ転送は各AP/拠点でローカルに行うのが一般的。
  • スプリットMAC(WLC)軽量AP(lightweight AP)WLC(無線LANコントローラ)が役割を分担する方式。APはリアルタイム性が要る処理(802.11フレームの送受信・暗号化・ビーコン等)を担い、WLifが管理・制御(設定配布・認証・RF管理・ローミング調整等)を集中管理する。APとWLCはCAPWAPトンネルで接続される。数百台規模の統一運用に最適。

2.4.2APモードと管理アクセス

  • 軽量APのAPモードは用途で切り替える:local(既定・通常のクライアント接続を提供)、FlexConnect(WLCへのWAN経由接続で、WLCが落ちても支店側でローカルにスイッチング/認証を継続)、monitor(クライアントを持たず電波監視・不正AP検知・位置測位に専念)、sniffer(キャプチャした無線フレームを解析器へ転送)等。
  • AP/WLCへの管理アクセス手段は、機器のCLI/GUIへ到達する経路の違いで整理する:物理直結のコンソール(帯域外・初期設定向け)、暗号化なしのTelnet(非推奨)、暗号化されるSSH(推奨)、Web GUIのHTTP/HTTPS(WLCの設定は主にHTTPSのGUI)。WLCは大量のAPを束ねる要のため、管理アクセスは必ずSSH/HTTPSなど暗号化された経路に限定するのがセキュリティの定石。

2.4.3WLC GUIでのWLAN作成(WPA2 PSK・QoS)

  • WLCのGUIでWLAN作成は概ね次の流れ:WLANを新規作成してSSID(電波に乗る無線ネットワーク名)とプロファイル名を決め、そのWLANを適切なインタフェース/VLAN(有線側のセグメント)へ紐付ける。SSIDは利用者に見える名前、WLANはそのSSIDを含むWLC上の設定単位という関係。
  • セキュリティ(Layer 2)タブで認証方式を選ぶ。事前共有鍵で手軽に保護するWPA2 PSK(Personal)は、Layer 2 SecurityをWPA2、認証をPSKにして共有パスワードを設定する。企業向けにRADIUSで個人認証する場合はWPA2 Enterprise(802.1X)を選ぶ(AAA/RADIUSは第5章の範囲)。
  • QoSタブではQoSプロファイルを選ぶ。Ciscoの無線QoSは上位からPlatinum(音声向け)/Gold(映像向け)/Silver(ベストエフォート・既定)/Bronze(バックグラウンド)の4段階で、SSIDの用途に応じて割り当てる(例:IP電話用SSIDはPlatinum)。Advancedタブではセッションタイムアウトやクライアント帯域制限、AAAオーバライド等の詳細を設定する。
試験ポイント

「自律型=AP個別設定・小規模」「クラウドベース=クラウドダッシュボードで集中管理」「スプリットMAC=軽量AP+WLCが役割分担・CAPWAPトンネル・大規模統一運用」の対比が最頻出です。スプリットMACではAPがリアルタイムの802.11処理、WLCが管理・制御・RF管理という役割分担を必ず押さえます。WLAN GUIではWPA2 PSK=事前共有鍵のPersonalQoSプロファイルはPlatinum(音声)>Gold(映像)>Silver(既定)>Bronzeの順、という具体設定が問われます。

ある企業が、10フロアのオフィスに約120台のAPを展開し、全社で統一したSSIDとセキュリティ、そしてフロア間を移動しても切れないローミングを実現したいと考えています。当初は各APを自律型として個別設定していましたが、SSIDのパスワード変更やチャネル調整のたびに120台へ手作業で設定を反映する運用が破綻寸前でした。そこでスプリットMACアーキテクチャへ移行し、WLCを1台導入して各APを軽量APとしてCAPWAPでWLCに接続します。これにより、SSID・セキュリティ・QoS・RF(チャネル/出力)の設定はWLCのGUIで一度行えば全APへ配布され、ローミングもWLCが集中調整するため大幅に運用が楽になります。WLCのGUIでは、社員向けWLANを新規作成してSSIDを CORP-WIFI とし、セキュリティ(Layer 2)タブでWPA2・認証をPSKにして事前共有鍵(WPA2 PSK)を設定、有線側はVLAN20のインタフェースへ紐付けます。さらにIP電話用のSSID CORP-VOICE を別途作成し、QoSプロファイルをPlatinumにして音声の遅延・ジッタを優先させます。運用開始後、WLCへの管理アクセスをTelnet(暗号化なし)で行っていたことが判明したため、盗聴リスクを避けるためSSHおよびHTTPSのGUIに限定し、Telnetを無効化しました。もし各拠点のWAN回線が細く、WLCが本社にしかない構成でWLC到達不能時にも支店の無線を継続させたい場合は、該当APをFlexConnectモードにして、WLCが落ちても支店内でローカルにスイッチング・認証を続けられるようにする——このように、規模・拠点構成・可用性要件に応じてアーキテクチャとAPモードを選ぶのがCCNAの無線設計の勘所です。

アーキテクチャ管理単位APの自律性適した規模
自律型(autonomous)AP1台ずつ個別AP単独で完結小規模(数台)
クラウドベースクラウドダッシュボード制御はクラウド・転送はローカル中〜大規模・多拠点
スプリットMAC(WLC)WLCで集中管理軽量AP+WLCが役割分担(CAPWAP)大規模統一運用(数百台)
注意

ひっかけ: 「スプリットMACではWLCが802.11フレームの送受信まで含めて全処理を行い、APは電波を出すだけ」は誤りです——リアルタイム性が要る802.11の送受信・暗号化はAP側、設定配布・認証・RF管理などの制御はWLC側という役割分担が正しく、両者はCAPWAPで結ばれます。また「大規模でも自律型APで統一運用すればよい」も誤り=台数が増えると個別設定が破綻するため、集中管理(WLC/クラウド)が必要です。さらに「WPA2 PSKは企業のRADIUS個人認証と同じもの」も誤り=PSKは事前共有鍵(Personal)で、RADIUS個人認証はWPA2 Enterprise(802.1X)です。

自律型・クラウドベース・スプリットMAC(WLC)とWLAN作成の図。
規模に応じたアーキテクチャ選択

2.4.4この節のまとめ

  • 自律型=AP個別設定(小規模)、クラウドベース=クラウドで集中管理、スプリットMAC=軽量AP+WLCが役割分担(CAPWAP・大規模統一運用)
  • スプリットMACではAPがリアルタイムの802.11処理、WLCが管理・制御・RF管理APモードはlocal/FlexConnect(WLC不達でも支店で継続)/monitor等。WLC/APの管理アクセスはSSH/HTTPSに限定
  • WLC GUIのWLAN作成はSSID→インタフェース/VLAN紐付け→セキュリティ(WPA2 PSK=Personal)→QoSプロファイル(Platinum音声>Gold映像>Silver既定>Bronze)→Advanced

進捗の記録にはログインが必要です。

理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 10フロアに約120台のAPを展開する企業で、SSIDのパスワード変更やチャネル調整のたびに全APへ手作業で設定を反映する運用が破綻しかけている。全APを統一設定し、フロア間ローミングも集中調整したい。最も適したアーキテクチャはどれか。

Q2. スプリットMAC(WLC)アーキテクチャにおける軽量APとWLCの役割分担として最も適切なものはどれか。

Q3. WLCのGUIでIP電話用のSSID(CORP-VOICE)を新規作成する。音声トラフィックの遅延・ジッタを最優先しつつ、事前共有鍵で手軽に保護したい。セキュリティとQoSの設定の組合せとして最も適切なものはどれか。

理解度を確認第2章「ネットワークアクセス」の問題を解く