変更要約: 初版
1.3物理インタフェース・ケーブルとスイッチング
銅線(UTP)と光ファイバ(SMF/MMF)の選定、ストレート/クロスとAuto-MDIX、そしてL2スイッチの中核動作であるMACアドレス学習・エージング・フラッディングとMACアドレステーブルを、「距離/速度にどのケーブルを選ぶか」「なぜフレームが全ポートに漏れるのか」という判断・診断として学びます。
「なぜか隣のビルまで届かない」「スイッチのCPUが跳ね上がり通信が遅い」——こうした現場のトラブルの多くは、ケーブル選定の誤りやスイッチングの基本動作の理解不足に起因します。この節では、距離と速度からケーブルを選ぶ判断と、L2スイッチがどうやって宛先を覚え、覚えていないフレームをどう扱うかという仕組みを、障害診断に直結する形で学びます。
1.3.1ケーブルと物理インタフェース
- 銅線(UTPツイストペア)=Cat5e/Cat6/Cat6a等。安価で取り回しやすいが、イーサネットでは1本あたり最長100mが原則で、電磁ノイズの影響を受ける。フロア内の水平配線(PCやAPまで)に使う。
- 光ファイバは電気ではなく光で伝送し、ノイズに強く長距離・高速に向く。シングルモード(SMF)はコア径が細くレーザで数km〜数十kmの長距離基幹に、マルチモード(MMF)はコア径が太くLED/VCSELで建物内〜数百mの中距離に、コストと距離のバランスで使い分ける。SMFのほうが長距離に向く。
- 銅線の結線は用途で異なる:異種機器間(PC⇔スイッチ、スイッチ⇔ルータ)はストレート、同種機器間(スイッチ⇔スイッチ、PC⇔PC)はクロスが古典的な原則。ただし現代のスイッチはAuto-MDIXが結線の違いを自動検出して吸収するため、ケーブル種別の取り違えでもリンクすることが多い。
1.3.2スイッチングの動作
- L2スイッチは受信フレームの送信元MACアドレスと受信ポートの対応をMACアドレステーブルに記録する(学習)。以後、その宛先MAC宛フレームは該当ポートのみへ転送する。IOSでは
show mac address-tableで内容を確認できる。 - 宛先MACが未学習の場合、またはブロードキャスト/未知のユニキャストの場合、受信ポート以外の全ポートへ送るフラッディングが行われる。学習内容には寿命(エージングタイマ、Ciscoの既定は300秒)があり、一定時間トラフィックが無いエントリは削除され、再学習される。
「UTPは最長100m」「SMF=細コア・レーザで長距離/MMF=太コア・LEDで中距離」「学習=送信元MAC+受信ポート」「未学習/ブロードキャストはフラッディング」「エージング既定300秒」が頻出です。CLIは show mac address-table・show ip interface brief・show interfaces を押さえましょう。
あなたは2つのビル(約800m離れている)のLANを1つに統合する設計を任されました。まず配線を「安いから」とUTP(銅線)でつなごうとするのは誤った判断です——イーサネットのUTPは1本最長100mが原則で、800mは物理的に届かず、屋外の銅線は雷サージやノイズの危険も伴います。ここは光ファイバが正解で、800m・将来の高速化を見込むなら長距離に強いシングルモード(SMF)を選ぶのが妥当です(同一建物内の数十mならコストの安いMMFで十分ですが、ビル間800mではSMFが素直です)。統合後、片方のビルのユーザから「通信が時々遅く、スイッチの負荷が高い」と報告が来ました。show mac address-table を見るとテーブルが不自然に少ないエントリしか持たず、多くのフレームがフラッディングされていました。原因を追うと、L2ループにより学習が不安定化してMACテーブルが揺らぐMACアドレステーブル・インスタビリティが起きており、未知ユニキャストの大量フラッディングが帯域とCPUを圧迫していたのです。ここで学ぶべきは、「学習できていないから全ポートに漏れる(フラッディング)」というスイッチの基本動作を理解していれば、症状(負荷・遅延)から原因(学習の破綻)へ最短で到達できるということです。ケーブル選定は距離と速度から、スイッチング障害は学習/フラッディングの原理から——どちらも仕組みの理解が診断の速さに直結します。
| ケーブル | 伝送 | 距離の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| UTP(銅・Cat6等) | 電気信号 | 最長約100m | フロア内の水平配線(PC/AP) |
| MMF(マルチモード) | 光(LED/VCSEL・太コア) | 建物内〜数百m | DC内/建物内の中距離バックボーン |
| SMF(シングルモード) | 光(レーザ・細コア) | 数km〜数十km | ビル間/広域の長距離基幹 |
ひっかけ: 「安価だから長距離もUTPで十分」は誤りです——イーサネットのUTPは最長約100mが原則で、それを超える距離には光ファイバ(長距離はSMF)が必要です。また「L2スイッチは常に宛先ポートだけに転送するのでフラッディングは起きない」も誤り=宛先MACが未学習やブロードキャスト/未知ユニキャストのフレームは受信ポート以外の全ポートにフラッディングされます。
1.3.3この節のまとめ
- UTPは最長約100m。それを超える距離やノイズ環境は光ファイバ、長距離はSMF・中距離はMMFを選ぶ
- L2スイッチは送信元MAC+受信ポートを学習し(
show mac address-table)、未学習/ブロードキャストはフラッディング、既定300秒でエージングする - 現代のスイッチはAuto-MDIXでストレート/クロスの違いを自動吸収する。負荷/遅延の症状はフラッディングの原理から原因を辿ると速い
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 約800m離れた2つのビルのLANを1本のリンクで統合したい。将来的な高速化も見込む。この区間のケーブル選定として最も適切なものはどれか。
Q2. あるL2スイッチで、宛先MACアドレスがまだ学習されていないユニキャストフレームを受信した。このときスイッチが行う標準的な動作として最も適切なものはどれか。
Q3. 運用中のスイッチで「通信が時々遅く、未知ユニキャストのフラッディングが多い」との報告があり、`show mac address-table` を見るとエントリが不自然に少なく揺らいでいた。この症状の一次的な原因の切り分けとして最も妥当なものはどれか。

