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第6章 · 企業活動・法務・セキュリティガバナンス·v1.0.0·更新 2026/8/7·読了目安 約15分

変更要約: 初版

6.4関連法規・標準化・情報セキュリティガバナンス

この節の要点

知的財産(著作権/特許/不正競争防止法)、下請法(中小受託取引適正化法)の遵守事項、PL法労働者派遣と偽装請負、標準化(ISO/JIS/デファクト)、そして情報セキュリティガバナンスを、ITストラテジストが調達・委託や事業のコンプライアンスリスクを判断する場面で使えるように学びます。

ITストラテジストは、システムの調達・委託や新規事業の企画において、法令違反という経営リスクを未然に避ける判断を求められます。この節では、自社の技術やブランドを守り他社の権利を侵さないための知的財産(著作権・特許・不正競争防止法)、下請取引の公正を守る下請法(中小受託取引適正化法)、製品の欠陥責任のPL法、外部要員の使い方をめぐる労働者派遣と偽装請負、市場での相互運用性を左右する標準化(ISO/JIS・デファクト)、そして情報セキュリティを経営課題として統治する情報セキュリティガバナンスを、調達・委託の現場でどう判断するかという視点で学びます。

6.4.1知的財産と下請取引の公正

  • 著作権はプログラムなどの表現を保護し、創作時点で自動的に発生する(無方式主義・登録不要)が、アルゴリズムなどのアイデア(技術的思想)そのものは保護しない。技術的思想を独占したければ特許権(出願・審査を経て権利化)で保護する。ブランドや商品表示の不正な模倣は不正競争防止法(営業秘密は秘密管理が要件)で守る。
  • 下請法(中小受託取引適正化法・2026-01呼称改定)=委託事業者(親事業者)に、発注時の書面(3条書面)の交付義務、支払期日を受領日から60日以内に定める義務などを課し、受領拒否・支払遅延・減額・買いたたきなどを禁止する。2026年1月1日の改正で、割引の難易を問わず手形による支払いが原則禁止となり、支払期日までに現金(銀行振込等)で支払う必要がある(旧下請法は「割引困難な手形の交付」だけを規制していた——ここが改正の要)。電子記録債権やファクタリングも、支払期日までに満額(手数料等を含む)を得ることが困難なものは禁止、振込手数料を中小受託事業者に負担させることも禁止。あわせて価格協議に応じる義務が新設され、適用範囲に従業員数基準(製造委託等300人・役務提供委託等100人)が加わった。

6.4.2責任・雇用・標準化・セキュリティ統治

  • PL法(製造物責任法)=製造物の欠陥により生命・身体・財産に損害が生じた場合、過失の有無を問わず(無過失責任)製造業者等が賠償責任を負う。労働者派遣では指揮命令権が派遣先にあるが、請負では指揮命令権が受注者(受託先)にあり、発注者が受託先の要員へ直接・日常的に指揮命令すると偽装請負(労働者派遣法等に抵触)になる。
  • 標準化=ISO(国際)・JIS(国内)などの公的標準や、市場競争で事実上の標準となるデファクトスタンダードがある。相互運用性・調達の選択肢に影響し、戦略的にどの標準に準拠・追随するかを判断する。情報セキュリティガバナンス=情報セキュリティを現場任せにせず、経営がリスクを踏まえて方針・投資を決め、監督する経営課題として統治すること(セキュリティ投資は費用対効果と経営判断で決める)。
試験ポイント

「著作権は表現を保護しアイデアは保護しない・登録不要/特許は技術的思想を出願・審査で保護」「取適法(2026-01施行)の手形払いは原則禁止=支払期日までに現金・支払期日は受領から60日以内・書面交付は義務」「請負は指揮命令権が受注者・発注者の直接指揮命令は偽装請負/派遣は派遣先に指揮命令権」「PL法は無過失責任」が最頻出です。旧下請法の「割引困難な手形だけが規制」で覚えていると誤答します——2026年1月施行の改正で手形払いは原則禁止に変わりました。

あるITストラテジストが、システム開発の外部委託の契約・支払条件をレビューし、コンプライアンスリスクを判断しています。まず支払条件について、経理部門が「下請代金は手形で支払う予定だが、これまでどおりで問題ないか」と相談してきました。ストラテジストは、2026年1月1日施行の中小受託取引適正化法(取適法)で手形払いは原則禁止になったと判断します。旧下請法では「割引を受けることが困難な手形の交付」だけが規制でしたが、改正後は割引の難易を問わず手形での支払いができず、支払期日までに現金(銀行振込等)で支払う必要があります。あわせて委託事業者が守るべきは、発注時に3条書面を交付する義務、下請代金の支払期日を受領日から60日以内に定める義務、そして新設された価格協議に応じる義務であり、レビューではこれらが満たされているかを確認します。適用範囲も資本金基準に加えて従業員数基準(製造委託等300人・役務提供委託等100人)が入ったため、これまで対象外だった取引先が対象になっていないかも見直します。次に、開発の進め方について、事業部門が「請負契約で外部ベンダーに開発を委託するが、うちの担当者が毎日ベンダーの技術者に直接、細かく作業指示を出して進めたい」と希望しました。ストラテジストは、これは偽装請負のリスクがあると判断します。請負契約では指揮命令権は受注者(ベンダー)側にあり、発注者が受託先の要員に直接・日常的に指揮命令すると、実態が労働者派遣に該当し労働者派遣法等に抵触する偽装請負となります。もし発注者が要員を直接指揮命令する必要があるなら、契約形態を労働者派遣契約にするのが正しい対応です。最後に、成果物に他社の知的財産を侵害する要素がないか(他社の著作物の無断利用や特許侵害)、および自社が独自に開発した処理方式を守るには著作権(表現の保護)では足りず特許出願が要るのではないか、という論点も併せて検討します。このように、ITストラテジストは調達・委託の一つひとつの条件を法令に照らして判断し、法令違反という経営リスクを設計段階で摘み取ります——ここで旧下請法の記憶のまま「割引困難な手形でなければよい」と判断したり、逆に偽装請負のリスクを見落として直接指揮命令を許したりすれば、いずれもコンプライアンス上の判断を誤ることになります。

論点正しい理解よくある誤り
著作権/特許著作権=表現を保護・登録不要/特許=技術的思想を出願で保護著作権がアイデアを保護/特許が自動発生
下請法の手形2026-01の改正で手形払いは原則禁止・支払期日までに現金旧下請法の「割引困難な手形だけが規制」で覚えている
請負/派遣請負は受注者が指揮命令/派遣は派遣先が指揮命令請負で発注者が直接指揮命令(偽装請負)
PL法欠陥による損害は無過失責任過失を証明しないと責任を問えない
注意

ひっかけ: 「割引が困難でない手形なら支払いに使ってよい」は旧下請法の規則で、いまは誤りです——2026年1月1日施行の取適法で、割引の難易を問わず手形払いが原則禁止となり、支払期日までに現金(銀行振込等)で支払う必要があります。委託事業者が守るべきはこれに加えて3条書面の交付義務、支払期日を受領日から60日以内に定める義務、新設された価格協議に応じる義務です。また「請負契約でも発注者は受託先要員に直接指揮命令してよい」も誤り=日常的な直接指揮命令は偽装請負で、直接指揮命令が必要なら労働者派遣契約にします。「著作権を登録すればアルゴリズム(アイデア)まで独占できる」も誤りです(著作権は表現の保護・登録不要/アイデアは特許)。

調達・委託の法令チェックの図。
契約条件を法令に照らして判断

6.4.3この節のまとめ

  • 著作権は表現を保護し登録不要でアイデアは保護しない、特許は技術的思想を出願・審査で保護する
  • 取適法(旧・下請法)は2026-01施行の改正で手形払いを原則禁止=支払期日までに現金。書面交付義務・支払期日は受領から60日以内・価格協議に応じる義務
  • 請負は発注者の直接指揮命令が偽装請負となる(直接指揮命令は派遣契約)、PL法は無過失責任

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. システム開発の外部委託で、経理部門から「下請代金は従来どおり手形で支払う予定だが、割引が困難な手形でなければ問題ないはずだ」と相談された(2026年度の取引)。ITストラテジストの判断として最も適切なものはどれか。

Q2. 自社が独自開発した業務システムの処理方式(技術的なアイデア)を、競合による模倣から守りたい。ITストラテジストの助言として最も適切なものはどれか。

Q3. 外部ベンダーに請負契約でシステム開発を委託するが、発注者側の担当者が毎日ベンダーの技術者へ直接、細かく作業指示を出して進めたいという要望がある。ITストラテジストの判断として最も適切なものはどれか。

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