第6章 · 企業活動・法務・セキュリティガバナンス·v1.0.0·更新 2026/7/16·読了目安 約16分
変更要約: 初版
6.2OR・IEと意思決定
この節の要点
複数案を数量的に評価して選ぶための道具——デシジョンツリー(期待値による意思決定)、PERT/CPM(クリティカルパスと日程短縮)、線形計画法・在庫管理(EOQ)・待ち行列、相関・回帰の落とし穴——を、ITストラテジストが投資案・計画を判断する場面で使いこなせるように学びます。
ITストラテジストは、複数の投資案・計画・調達案の中から、限られた資源で最大の効果を得られる案を数量的な根拠に基づいて選ぶ必要があります。オペレーションズリサーチ(OR)とインダストリアルエンジニアリング(IE)は、そのための道具箱です。この節では、不確実性下で案を選ぶデシジョンツリー(期待値による意思決定)、プロジェクトの最短完了日と短縮すべき作業を見抜くPERT/CPM、資源配分を最適化する線形計画法、発注量を最適化する在庫管理(EOQ)、そして相関を因果と取り違えない判断——といった、経営の意思決定を支える定量手法を、実際に計算して案を選ぶ場面を通じて学びます。
6.2.1期待値による意思決定(デシジョンツリー)
- デシジョンツリー=選択肢(意思決定ノード)と不確実な事象(確率ノード)を樹形図で表し、各案の期待値(=各結果の値×発生確率の総和)を計算して、原則として期待値が最大の案を選ぶ手法。IT投資や新規事業の可否など、結果が確率的にしか読めない判断に使う。
- 期待値だけでなく、最悪ケースの損失の大きさ(リスク許容度)も併せて考えることがある。期待値が高くても最悪損失が経営を揺るがすなら、より安全な案を選ぶ判断もあり得る——ただし「期待値による意思決定」と問われれば期待値最大の案が答え。
6.2.2日程・資源・在庫の最適化
- PERT/CPM=作業の先行関係をアローダイアグラムで表し、開始から終了までの最長経路=クリティカルパスを求める。クリティカルパスの長さがプロジェクトの最短完了日で、この経路上の作業を短縮しないと全体は縮まない。余裕(フロート)のある非クリティカルな作業を短縮しても完了日は変わらない。
- 線形計画法=制約条件(資源・容量の上限)の下で目的関数(利益・コスト)を最大化・最小化する資源配分の最適化手法。在庫管理(EOQ)=発注コストと在庫保有コストの合計が最小になる経済的発注量を求める手法で、両コストのトレードオフを取る。待ち行列=到着と処理の確率的なばらつきから待ち時間・行列長を評価する。
- 相関と因果は別物。二つの変数に強い相関があっても、一方が他方の原因とは限らない(季節性などの共通要因や逆の因果があり得る)。回帰分析の傾きは予測に使えるが、相関だけを根拠に施策の効果を断定してはならない。

