変更要約: 初版
4.3キャパシティ管理(需要予測・しきい値・傾向分析)
サービスが必要とする性能・容量を過不足なく確保するキャパシティ管理の3つの副次プロセス(ビジネスキャパシティ管理・サービスキャパシティ管理・コンポーネントキャパシティ管理)、需要そのものを平準化する需要管理、しきい値監視と傾向分析による予兆検知、そしてボトルネックの特定を学び、増強と需要抑制を使い分ける判断力を養います。
キャパシティ管理は「性能が足りなくなったら増強する」という後追いの作業ではありません。過剰投資(使わない設備を持ちすぎる)も過少投資(性能不足でSLA違反)も避け、需要の伸びを先読みして、必要な時に必要なだけの能力を、最も費用対効果よく確保するのが本質です。この節では、3つの副次プロセスで管理対象を整理し、しきい値監視・傾向分析で不足の兆候を予兆段階で捉え、増強するか・需要管理で平準化するかを判断する視点を養います。
4.3.13つの副次プロセス
- ビジネスキャパシティ管理=事業計画・将来の事業要求(新サービス投入・利用者増の見込み等)から中長期の必要能力を予測する、最も上流の副次プロセス。サービスキャパシティ管理=個々のサービス単位で、SLAの性能目標(応答時間・スループット等)を満たすためにエンドツーエンドの性能を監視・管理する。コンポーネントキャパシティ管理=CPU・メモリ・ディスク・回線帯域など個々の資源(コンポーネント)の使用率を監視・管理する、最も下流の副次プロセス。
- 3副次プロセスは「事業→サービス→コンポーネント」と上流から下流へつながる。コンポーネント単体の使用率だけを見ても、それがSLA(サービス性能)や事業成長にどう響くかは判断できない——例えばCPU使用率が上がっていても、それがSLAの応答時間に影響していなければ即増強の必要はない。逆に事業計画で大幅な利用者増が見込まれるなら、現時点で余裕があっても先んじて増強計画を立てる。3つの視点を突き合わせて判断するのがキャパシティ管理の要。
4.3.2しきい値監視・傾向分析・ボトルネック
- しきい値監視=資源使用率などに警告値(例:CPU使用率80%)を設け、超過したらアラートを出して枯渇前に対処する仕組み。傾向分析(トレンド分析)=過去の使用率の推移から将来の増加を外挿して予測し、しきい値に達する時期を見積もる手法。しきい値監視が「今の異常」を捉えるのに対し、傾向分析は「このままいけばいつ限界に達するか」を先読みし、増強を余裕をもって計画するために使う。
- ボトルネック=システム全体の性能を律速している最も余裕のない資源。ボトルネックでない資源をいくら増強しても全体性能は改善しない(例:CPUがボトルネックなのにメモリを増設しても応答時間は縮まらない)。傾向分析でボトルネックがどこに移るかを予測し、そこを狙って増強するのが費用対効果の高いキャパシティ計画。ボトルネックは負荷増に伴い別の資源へ移動しうるため、単発でなく継続的に監視する。
「ビジネス(事業→中長期予測)/サービス(SLA性能)/コンポーネント(個別資源使用率)の3副次プロセス」「しきい値監視=今の超過を検知/傾向分析=将来の限界到達時期を予測」「ボトルネック以外を増強しても全体は改善しない」が最頻出です。需要管理(利用の平準化で必要能力そのものを抑える)と増強(能力を足す)の使い分けまで問われます。
4.3.3需要管理と増強の使い分け
- 需要管理=需要そのものに働きかけてピークを平準化し、必要な設備能力を抑える手法。時間帯によって料金差をつける(オフピーク割引)・バッチ処理を夜間に振り分ける・利用の予約制などで、ピーク時の瞬間的な負荷を下げれば、そのピークに合わせて過剰な設備を持たずに済む。増強(能力を足す)が「供給を需要に合わせる」のに対し、需要管理は「需要を供給に合わせる」逆方向のアプローチ。
- 増強と需要管理は二者択一ではなく、コスト・実現性・SLAへの影響で使い分ける。恒常的に需要が伸び続けるなら増強が本筋だが、短時間のピークが問題ならピーク平準化(需要管理)の方が安価に解決できることが多い。予兆段階で「増強すべき構造的な不足か、平準化で足りる一時的なピークか」を傾向分析で見極めるのがサービスマネージャの判断。
ある社内業務システムのサービスマネージャが、月末になると応答時間がSLA目標(3秒以内)を超え、利用部門から苦情が出る問題を診断しているとします。コンポーネントキャパシティ管理の監視データを見ると、月末の数日だけデータベースサーバのCPU使用率が95%まで跳ね上がり、平常時は40%程度で推移していました。ここで安直に「CPU使用率が高いのだからサーバを増強しよう」と判断するのは、費用対効果の面で最適とは限りません。まず確認すべきは、この高負荷が恒常的な需要増(傾向分析で右肩上がり)なのか、月末に集中する一時的なピークなのかです。傾向分析の結果、平常時の使用率は横ばいで、月末の月次バッチ集計処理が日中のオンライン業務と時間帯を奪い合っていることが判明したとします。この場合、恒常的な能力不足ではなく需要の集中(ピーク)が原因なので、サーバ増強(供給を増やす)よりも、月次バッチを夜間のオフピーク時間帯へ移動する需要管理の方が、追加投資なしに月末のCPUピークを平準化でき、応答時間のSLA違反を解消できます。さらにボトルネックの見極めも重要で、仮にメモリを増設しても、律速しているのがCPUである以上、応答時間は改善しません——ボトルネックでない資源の増強は無駄です。サービスマネージャは、しきい値超過というアラート(今の異常)に反射的に増強で応じるのではなく、傾向分析で「構造的な不足か一時的なピークか」を切り分け、ボトルネックを特定したうえで、増強と需要管理のどちらが費用対効果よくSLAを満たすかを判断します。
| 副次プロセス | 管理の視点 | 主な対象 |
|---|---|---|
| ビジネスキャパシティ管理 | 事業計画・将来要求からの中長期予測 | 新サービス投入・利用者増の見込み |
| サービスキャパシティ管理 | SLA性能目標のエンドツーエンド監視 | 応答時間・スループット |
| コンポーネントキャパシティ管理 | 個別資源の使用率監視 | CPU・メモリ・ディスク・回線帯域 |
ひっかけ: 「資源使用率がしきい値を超えたら、直ちにその資源を増強すべき」は誤りです——まず傾向分析で恒常的な不足か一時的なピークかを切り分け、ピークなら需要管理(平準化)の方が安価に解決できることが多い。また「使用率の高い資源を増強すれば必ず性能が改善する」も誤り=律速しているボトルネックでなければ増強しても全体性能は改善しません。
4.3.4この節のまとめ
- キャパシティ管理はビジネス(中長期予測)・サービス(SLA性能)・コンポーネント(個別資源)の3副次プロセスを突き合わせて判断する
- しきい値監視は今の超過を検知、傾向分析は限界到達時期を先読みし、余裕をもって増強を計画する
- ボトルネック以外を増強しても全体は改善しない——一時的なピークは需要管理(平準化)で安価に解消できることが多い
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 社内システムで月末の数日だけDBサーバのCPU使用率が95%に達し応答時間がSLAを超える。平常時は40%で、傾向分析では平常時使用率は横ばい、月末の月次バッチが日中のオンライン処理と時間帯を奪い合っていた。最も費用対効果の高い打ち手はどれか。
Q2. キャパシティ管理の3つの副次プロセスのうち、事業計画や将来の利用者増の見込みから中長期に必要となる能力を予測するのはどれか。
Q3. キャパシティ管理におけるしきい値監視と傾向分析の役割の違いとして、最も適切なものはどれか。

