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第2章 · スケジュールとコスト管理·v1.0.0·更新 2026/7/10·読了目安 約17分

変更要約: 初版

2.5アーンドバリューマネジメント

この節の要点

計画上の出来高PV・実際の出来高EV・実コストACの3指標から、スケジュールの遅れ進みを示すSV/SPIとコストの超過節約を示すCV/CPIを算出し、その値を解釈してEAC(完成時総コスト見積り)を予測し、是正措置を判断する一連の手順を学びます。

PMにとってEVMは「計算する」ことが目的ではなく、算出した指標を「今このプロジェクトはどういう状態で、何をすべきか」という意思決定に変換するための道具です。SPI=0.8・CPI=1.1という2つの数値を見せられて「計算式を知っている」だけでは実務上まったく役に立ちません。この節では、PV・EV・ACという3つの基礎データから各指標を算出する手順に加え、その値の組み合わせパターンごとにPMが取るべき是正措置を判断する力を養います。

2.5.1PV・EV・ACと差異分析

  • PV(プランドバリュー)=ある時点までに計画上完了しているはずの作業量をコスト換算した値。EV(アーンドバリュー)=ある時点までに実際に完了した作業量をコスト換算した値(出来高)。AC(アクチュアルコスト)=ある時点までに実際に費やしたコスト。この3つが全ての指標の基礎データとなる。
  • SV(スケジュール差異)=EV−PV(正なら計画より進んでいる・負なら遅れている)。CV(コスト差異)=EV−AC(正なら予算内・負なら予算超過)。SPI(スケジュール効率指数)=EV/PV(1超は前倒し・1未満は遅延)。CPI(コスト効率指数)=EV/AC(1超は予算より効率的・1未満は予算超過)。符号・分子分母を逆にする誤りが最も多いので、必ず「EVを基準にPV/ACを引く・割る」と覚える。

2.5.2EAC・ETCと是正措置の判断

  • EAC(完成時総コスト見積り)=現在の実績(AC)と今後の効率(CPI)を踏まえてプロジェクト完了までにかかる総コストを再予測した値。現在のコスト効率がプロジェクトの残り部分でも継続すると仮定する最も一般的な式は EAC=BAC/CPI(BAC=完成時総予算)。ETC(残作業見積り)=EAC−AC(残りに必要なコスト)。VAC(完成時差異)=BAC−EAC(完了時点での予算との差)。
  • 指標の解釈はSPIとCPIを組み合わせて読む必要がある。SPI<1・CPI<1(遅延かつ超過)は最も深刻でスコープ見直しや上位報告を要する。SPI<1・CPI>1(遅延だが予算内)は人員追加によるクラッシングの余地があるかを検討する。SPI>1・CPI<1(前倒しだが超過)は効率の悪化要因(残業代・突貫作業のコスト増)を分析する。単一指標だけでなく組み合わせで状況を診断し、是正措置につなげるのがPMの実務。
試験ポイント

「SV=EV−PV」「CV=EV−AC」「SPI=EV/PV」「CPI=EV/AC」「EAC=BAC/CPI」「ETC=EAC−AC」「VAC=BAC−EAC」の式と符号が最頻出です。「1未満・負の値=悪化(遅延/超過)、1超・正の値=良好(前倒し/予算内)」という向きを固定して覚え、SPIとCPIを必ず組み合わせて状況を診断することが実務での判断力になります。

あるPMが管理するプロジェクトは、完成時総予算BAC=1000万円です。ある月末の時点で、計画上完了しているはずの出来高PV=600万円、実際に完了した出来高EV=480万円、実際に費やしたコストAC=600万円というデータが得られました。まず差異を計算すると、SV=EV−PV=480−600=−120万円(負=計画より遅れている)、CV=EV−AC=480−600=−120万円(負=予算を超過している)です。指数ではSPI=EV/PV=480/600=0.80(1未満=進捗が計画の80%)、CPI=EV/AC=480/600=0.80(1未満=投入コストに対し実際の出来高が80%しかない=非効率)となります。SPI・CPIともに0.80と、遅延と予算超過が同時に発生している最も深刻なパターンであり、単なる注意喚起ではなく根本原因の分析(要員のスキル不足か、要件の想定漏れによる手戻りか、外部要因による中断か)と、プロジェクトオーナーへの早期エスカレーションが必要と判断できます。さらに、このままの効率が続くと仮定してEACを算出すると、EAC=BAC/CPI=1000/0.80=1250万円(当初予算より250万円超過する見込み=VAC=BAC−EAC=1000−1250=−250万円)、残りに必要なコストはETC=EAC−AC=1250−600=650万円です。この試算をもとに、PMは「このまま何も対策を打たなければ最終的に250万円の予算超過が確定的になる」という事実を数値で経営層に示し、スコープ縮小・追加予算確保・要員体制の見直しのいずれかの意思決定を仰ぐ報告を行います。仮に別の月でSPI=1.125・CPI=0.90(前倒しだが予算超過)という結果が出た場合は、遅延ではなく「進捗を急ぐあまり残業代や外部委託の追加投入でコスト効率が悪化している」可能性を疑い、コスト超過の要因分析を優先するというように、SPIとCPIの組み合わせパターンに応じて診断の切り口と是正措置を変えるのがEVM運用の核心です。

指標この例の値解釈
SVEV−PV480−600=−120万円計画より遅延
CVEV−AC480−600=−120万円予算超過
SPIEV/PV480/600=0.80進捗80%
CPIEV/AC480/600=0.80コスト効率80%
EACBAC/CPI1000/0.80=1250万円250万円の超過見込み
注意

ひっかけ: 「CPI=0.80はコストが計画の80%で済んでいる良い状態」は誤りです——CPI=EV/ACが1未満は、投入したコストに対して得られた出来高が少ない=非効率・予算超過を意味し、悪い兆候です。CPIは「コストの絶対額」ではなく「コスト1単位あたりの出来高効率」を示す指標である点を混同しないこと。また「SPIが1未満でもCPIが1超なら全体として問題ない」も誤り=SPI<1は納期遅延のリスクを示しており、CPIが良好でも別途スケジュール面の是正措置(クラッシング等)の検討が必要です。

PV/EV/AC・SPI/CPI・EACの図。
進捗を金額で測る

2.5.3この節のまとめ

  • SV=EV−PV・CV=EV−AC・SPI=EV/PV・CPI=EV/AC。負/1未満は悪化、正/1超は良好
  • EAC=BAC/CPIで完了時コストを予測し、VAC=BAC−EACで予算との差を把握する
  • SPI・CPIは単独でなく組み合わせで診断し、パターンごとに異なる是正措置(根本原因分析/クラッシング検討/効率悪化要因分析)を判断する

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. あるプロジェクトでBAC=1000万円、PV=600万円、EV=480万円、AC=600万円というデータが得られた。SPI・CPIを算出し、この状況の解釈として最も適切なものはどれか。

Q2. 上記のプロジェクト(BAC=1000万円・CPI=0.80)で、現在の効率がこのまま完了まで続くと仮定して完成時総コストを予測したい。最も適切な算出と、その値が示す意味はどれか。

Q3. 別の月にSPI=1.125・CPI=0.90という結果が得られた。進捗は前倒しだがコストが超過しているこの状況で、PMが優先すべき最も適切な対応はどれか。

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