変更要約: 初版
2.2スケジュール作成とクリティカルパス
アローダイアグラム法(CPM)で最早・最遅の日程を計算し、クリティカルパス(最長経路=フロートゼロの経路)を特定する手順、トータルフロートとフリーフロートの違い、そしてある作業が遅延したときにプロジェクト全体の納期へどう波及するかを診断する考え方を学びます。
PMにとって、進捗報告で「ある作業が2日遅れています」という一報を受けたとき最初に問うべきは、「その作業はクリティカルパス上にあるのか、それとも余裕(フロート)を持った作業なのか」です。この問いに即答できなければ、納期への影響を過大評価して不要な追加コストをかけたり、逆に過小評価して手遅れになるまで対応を先送りしたりする判断ミスにつながります。この節では、クリティカルパスの特定方法とフロートの計算、そして遅延の全体影響を診断する考え方を学びます。
2.2.1CPMとクリティカルパスの特定
- CPM(クリティカルパス法)=各アクティビティの所要期間から、開始から完了までの全経路の所要日数を計算し、最早開始/最早完了(フォワードパス)と最遅開始/最遅完了(バックワードパス)を求めることで、余裕のない経路を特定する手法。クリティカルパス=開始から完了までの経路のうち所要日数が最長の経路であり、この経路上の作業はフロートがゼロ=1日でも遅延すればプロジェクト全体の完了日が同じだけ遅延する。
- 複数の経路が存在するプロジェクトでは、所要日数が最長の経路だけがクリティカルパスであり、それより短い経路上の作業には余裕(フロート)が生じる。「作業の担当者が多忙そうだから」「作業の見た目の難易度が高いから」といった印象でクリティカルパス上の作業かどうかを判断してはならず、必ず経路計算に基づいて特定する。
2.2.2トータルフロートとフリーフロート
- トータルフロート=プロジェクト全体の完了日を遅らせることなく、その作業を遅らせられる最大の日数。クリティカルパス上の作業はトータルフロート=0。フリーフロート=直後の後続作業の最早開始日を遅らせることなくその作業を遅らせられる最大の日数で、トータルフロート以下(フリーフロート ≤ トータルフロート)になる。
- この2つを混同すると誤った報告になる——「フリーフロートがあるから全体納期にも余裕がある」は誤り(フリーフロートは後続作業への影響のみを見た指標)。全体納期への影響を判断する指標はあくまでトータルフロートである。
「クリティカルパス=所要日数が最長の経路・フロートゼロ」「トータルフロート=全体納期を遅らせない範囲の余裕」「フリーフロート=直後の後続作業を遅らせない範囲の余裕(トータルフロート以下)」が最頻出です。遅延した作業がクリティカルパス上か否かをまず特定してから全体影響を判断するという手順を必ず踏みましょう。
あるPMが管理するプロジェクトには、開始から完了まで2つの経路があります。経路1は「作業A(3日)→作業B(5日)→作業D(4日)」で合計12日、経路2は「作業A(3日)→作業C(6日)→作業D(4日)」で合計13日です。所要日数を比較すると経路2の方が長いため、クリティカルパスは経路2(作業A→C→D、合計13日)であり、作業Bにはトータルフロート=13-12=1日の余裕があります。ある週の進捗会議で、作業Bの担当者から「体調不良で1日遅延している」という報告がありました。作業Bはクリティカルパス上ではなくフロート1日を持つ作業のため、この1日の遅延はトータルフロートの範囲内に収まり、プロジェクト全体の完了日には影響しないと診断できます。ただし、PMはここで安心せず、もし作業Bがさらに1日以上遅延すれば、フロートを使い切りクリティカルパスへ合流してしまう点を注視する必要があります。一方、別の週には作業Cの担当者から「仕様の想定外の複雑さが判明し2日遅延する」という報告がありました。作業Cはクリティカルパス(A→C→D)上の作業でトータルフロート=0のため、この2日の遅延はそのままプロジェクト全体の完了日を2日遅らせることが即座に判断できます。この場合PMは、単に報告を受けるだけでなく、後続の作業Dや他の関連チームへの影響を速やかに周知し、次節で扱うクラッシングやファストトラッキングによる短縮策の検討に着手する必要があります。このように、同じ「2日遅延」という報告でも、その作業がクリティカルパス上か否かで取るべき対応がまったく異なることがこの節の核心です。
| 経路 | 内訳 | 合計日数 | クリティカルパスか |
|---|---|---|---|
| 経路1 | A(3)+B(5)+D(4) | 12日 | いいえ(トータルフロート1日) |
| 経路2 | A(3)+C(6)+D(4) | 13日 | はい(フロート0) |
ひっかけ: 「遅延した作業の担当者が『大丈夫、後続作業の開始には間に合わせる』と言えば全体納期にも問題ない」は誤りです——それはフリーフロート(後続作業への影響)だけを見た判断であり、全体納期への影響はトータルフロートで判断しなければなりません。フリーフロートがあってもトータルフロートが0(クリティカルパス上)であれば全体納期は遅延します。また「所要日数が短い経路は無視してよい」も誤り=フロートが少ない経路(準クリティカルパス)は、クリティカルパス上の作業が短縮されると新たなクリティカルパスに変わり得るため注視が必要です。
2.2.3この節のまとめ
- クリティカルパスは所要日数が最長の経路でフロート0。経路計算に基づき特定し、印象で判断しない
- トータルフロートは全体納期への影響、フリーフロートは直後の後続作業への影響のみを示す(フリーフロート≤トータルフロート)
- 遅延報告を受けたらまずクリティカルパス上か否かを特定し、全体影響の有無を判断してから対応する
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 経路1(A3日+B5日+D4日=12日)と経路2(A3日+C6日+D4日=13日)の2経路を持つプロジェクトで、作業Bの担当者から体調不良により1日遅延するとの報告があった。この報告を受けたPMの最も適切な診断はどれか。
Q2. 同じプロジェクトで、今度は作業C(クリティカルパス上・トータルフロート0)の担当者から仕様の想定外の複雑さにより2日遅延するとの報告があった。PMが取るべき最も適切な対応はどれか。
Q3. ある作業のフリーフロートが2日、トータルフロートが0日と算出された。この状況の解釈として最も適切なものはどれか。

