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第2章 · スケジュールとコスト管理·v1.0.0·更新 2026/7/10·読了目安 約14分

変更要約: 初版

2.1アクティビティ定義と順序設定

この節の要点

WBSのワークパッケージを実行可能な作業単位に分解するアクティビティ定義、作業同士のつながりを表す4種類の先行関係(FS/SS/FF/SF)、そして工程を前倒し・後ろ倒しするリードラグ、複数の見積り値から幅を持たせる三点見積りを学びます。

プロジェクトマネージャ(PM)がスケジュールを組み立てる第一歩は、WBSで分解したワークパッケージを、実際に着手・完了を管理できる粒度のアクティビティへさらに分解し、それらの間の依存関係を正しく定義することです。この依存関係の定義を誤ると、後工程で「本来並行できたはずの作業を直列にしてしまい納期を圧迫する」「逆に、依存があるのに並行させてしまい手戻りを招く」といった実務上の失敗に直結します。この節では、先行関係の4類型とリード/ラグ、そして所要期間見積りの精度を高める三点見積りを学びます。

2.1.1先行関係(FS/SS/FF/SF)

  • FS(Finish-to-Start)=先行作業が終了してから後続作業を開始する関係。最も一般的で、例えば「壁の下地工事が終わってから塗装を始める」のように、物理的・論理的に順序が固定される作業間で使う。
  • SS(Start-to-Start)=先行作業の開始と同時に後続作業を開始できる関係。「要件定義の開始と同時に、並行して基本設計の準備作業を開始する」のように、完全な完了を待たずに着手できる作業間で使う。FF(Finish-to-Finish)=両方の作業が同時に終了するよう調整する関係。SF(Start-to-Finish)=先行作業の開始をもって後続作業が終了する、実務での使用頻度が最も低い関係(交代勤務の引き継ぎ等)。

2.1.2リードとラグ、三点見積り

  • リード=先行関係に対し後続作業を前倒しできる時間(例:FS関係だが、先行作業の完了を待たずに2日前倒しで後続を開始できる場合、リード2日)。ラグ=先行関係に後から追加で待たせる時間(例:コンクリート打設完了後、養生のため後続作業を3日後ろ倒しにする場合、ラグ3日)。リードは短縮、ラグは遅延の方向に働く点を混同しないこと
  • 三点見積り=所要期間を「楽観値(O)」「最頻値(M)」「悲観値(P)」の3点から見積もる技法。三角分布では期待値=(O+M+P)/3、より不確実性の分布に近いPERT加重平均では期待値=(O+4M+P)/6を用い、単一の点推定よりリスクを織り込んだ幅のある見積りができる。
試験ポイント

「FS=終了後開始(最頻出)」「SS=同時開始」「FF=同時終了」「SF=開始が後続の終了条件(最も稀)」「リード=前倒し(マイナス方向)」「ラグ=追加の待ち時間(プラス方向)」「PERT加重平均=(O+4M+P)/6」が最頻出です。リードとラグの向きを逆に覚える誤りに要注意。

あるPMが、基幹システム刷新プロジェクトのスケジュールを組み立てています。「結合テスト」は「単体テスト」が完了してから開始するのが原則(FS関係)ですが、日程が逼迫しているため、単体テストの対象モジュールのうち先に完了したものから結合テスト環境への組み込み作業だけを2日前倒しで始められないか検討しています。これは、FS関係を維持しつつ後続作業の開始を前倒しするリード(2日)の設定に該当します。ただし、このPMは同時に「結合テストの本格的な実行は、単体テストが全モジュールで完了してから」という制約も維持したいと考えており、リードを設定するのは「環境構築」という前倒し可能な部分作業のみに限定し、テスト実行そのものにはリードを適用しないという判断を下します。一方、別の作業では「外部委託先からのハードウェア納品」が完了した後、機器の環境順応(temperature acclimation)のためラグ(1日)を設定してから設置作業を開始する必要があります。ここでラグを見落として即日設置作業を開始するようスケジュールを組んでしまうと、納品直後の機器不良や設置不良のリスクが高まるため、ラグは短縮すべき無駄な待ち時間ではなく、品質・安全を担保するために意図的に確保する期間として扱う判断が重要です。さらに、このPMは新規モジュールの開発期間について、担当者から「順調なら5日、通常は8日、トラブルが起きれば20日」という3つの見積りを聞き取り、不確実性が高い新規開発であることを踏まえてPERT加重平均で算出することにしました。単純な平均(三角分布、(5+8+20)/3=11.0日)ではなく、最頻値に重みを置くPERT加重平均((5+4×8+20)/6=9.5日)を採用することで、極端な悲観値・楽観値に引っ張られすぎない、より実務感覚に近い見積りとしてベースラインに組み込みます。

関係意味典型例
FS先行の終了→後続の開始下地工事完了後に塗装開始
SS先行の開始→後続の開始要件定義開始と同時に設計準備開始
FF両方が同時に終了文書作成とレビューを同時完了させる
SF後続の開始が先行の終了条件交代勤務の引き継ぎ
注意

ひっかけ: 「リードは作業間に追加で待ち時間を挟むこと、ラグは前倒しで開始できる時間のこと」はリードとラグの向きが逆です——リード=前倒し(短縮方向)、ラグ=追加の待ち時間(遅延方向)が正しい対応です。また「ラグは常に削減すべき無駄」も誤り=品質保証・安全確保のために意図的に設定するラグ(養生期間・環境順応期間等)は削減すべきでないケースがあります。

先行関係とリード/ラグの図。
作業の順序を組む

2.1.3この節のまとめ

  • 先行関係はFS(最頻出)/SS/FF/SFの4種。リードは前倒し、ラグは追加の待ち時間で向きが逆
  • ラグは品質・安全確保のため意図的に確保する期間の場合があり、常に削減対象とは限らない
  • 三点見積りはPERT加重平均(O+4M+P)/6で極端な値に偏らない実務的な期間を算出する

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 基幹システム刷新プロジェクトで、結合テスト環境の構築作業だけを、単体テスト完了前に2日前倒しで開始したいが、結合テストの本格実行は全モジュールの単体テスト完了後に維持したい。この要件を満たす設定として最も適切なものはどれか。

Q2. 外部委託先からのハードウェア納品完了後、温度順応のため設置作業の開始を1日後ろ倒しにする必要がある。このスケジュール設定に関する最も適切な判断はどれか。

Q3. 新規モジュール開発の所要期間について、担当者から楽観値5日・最頻値8日・悲観値20日という3つの見積りを得た。不確実性の高い新規開発であることを踏まえ、極端な値に偏らない見積りをベースラインに組み込みたい。最も適切な算出方法と結果はどれか。

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