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第4章 · 広域網とネットワーク仮想化·v1.0.0·更新 2026/7/10·読了目安 約16分

変更要約: 初版

4.3ネットワーク仮想化

この節の要点

制御機能とデータ転送機能を分離するSDNOpenFlow)、拠点間WANをソフトウェアで統合制御するSD-WAN、専用機器の機能をソフトウェア化するNFV、そしてL2ネットワークをL3上にオーバーレイ構築するVXLANVNI)を学び、従来型ネットワークからの移行判断を養います。

従来のネットワーク機器は、経路を決める制御プレーンとパケットを実際に転送するデータプレーンが1台の機器の中に一体化しており、機器ごとに個別設定が必要でした。ネットワーク仮想化技術は、この一体化を分離・ソフトウェア化することで、多拠点・大規模・頻繁な変更が伴う環境での運用効率を高めます。この節では、ネットワーク設計者が従来型ネットワークからSDN/SD-WANへ移行すべきかどうかを、規模・変更頻度・運用体制から判断する視点を学びます。

4.3.1SDN(コントロールプレーン/データプレーン分離)

  • SDN(Software-Defined Networking)=経路制御を判断するコントロールプレーンと、実際にパケットを転送するデータプレーンを分離し、コントロールプレーンをSDNコントローラに集約してソフトウェアで一元管理する設計思想。個々のスイッチ・ルータを1台ずつ設定する必要がなくなり、ネットワーク全体のポリシーを一箇所で変更・適用できる
  • OpenFlow=SDNコントローラとスイッチ(データプレーン機器)間でフローテーブル(転送ルール)をやり取りする代表的なプロトコル。コントローラが「このパケットパターンにはこのアクション(転送/破棄/書き換え)」というルールをスイッチに配布し、スイッチはルールに従って機械的に転送するだけ(判断はコントローラ側に集約)という役割分担が明確。

4.3.2SD-WANとNFV

  • SD-WAN=SDNの考え方を拠点間WANに適用し、専用線・IP-VPN・インターネットVPNなど複数の異なる回線をソフトウェアで抽象化・一元制御する技術。アプリケーションの種類やトラフィック状況に応じて動的に最適な回線へ振り分けることができ、拠点追加時の設定もコントローラから一括配信できるため、拠点数が多く回線構成が複雑な企業ほど導入効果が大きい。
  • NFV(Network Functions Virtualization)=ファイアウォール・ロードバランサ・ルータ等の専用ハードウェア機器が担っていた機能を、汎用サーバ上で動くソフトウェア(VNF:仮想化ネットワーク機能)として実現する技術。専用機器の調達・設置が不要になり、機能の追加・スケールアウトをソフトウェアの展開だけで迅速に行える。SDNが「制御と転送の分離」であるのに対し、NFVは「専用機能のソフトウェア化」であり、目的が異なる別概念(併用されることは多い)。
試験ポイント

「SDN=コントロールプレーンとデータプレーンの分離・OpenFlowで一元管理」「SD-WAN=複数回線をソフトウェアで抽象化し動的に最適経路を選択」「NFV=専用機器の機能をソフトウェア化(VNF)」の3者の違いが最頻出です。SDNとNFVは目的が異なる別概念(SDN=制御と転送の分離、NFV=専用機能のソフトウェア化)である点を混同しないこと。

4.3.3VXLANとオーバーレイ/アンダーレイ

  • VXLAN(Virtual Extensible LAN)=L2のイーサネットフレームをUDPパケットでカプセル化し、L3ネットワーク上に仮想的なL2セグメントを構築するオーバーレイ技術。物理的なL3ネットワーク(アンダーレイ)の構成に縛られず、データセンター内外に離れたサーバ群を同一L2セグメントであるかのように扱えるため、仮想マシンのライブマイグレーション等に必須の技術になっている。
  • VNI(VXLAN Network Identifier)=VXLANで個々の仮想L2セグメントを識別する24ビットの識別子。従来のVLAN(IEEE802.1Q)が12ビットで最大4094個までしかセグメントを区別できなかったのに対し、VNIは理論上約1677万個まで識別可能で、マルチテナント型のクラウドデータセンターで大量のテナントを論理分離するニーズに応える。

ある企業が、全国30拠点をIP-VPNの専用線的な回線構成で接続してきたが、拠点ごとに個別のルータ設定作業が発生し、新拠点の開設に数週間を要する運用の重さが課題になっているとします。まず経営層から「クラウド上の業務アプリと支店とで、動画会議のような遅延に弱い通信は専用線経由、それ以外は安価なインターネット回線経由にして通信費を下げたい」という要求が出ます。これに対しては、複数回線をソフトウェアで抽象化してアプリケーション種別ごとに動的振り分けができるSD-WANの導入が合致します——単なる回線の置き換えではなく、既存の複数回線(IP-VPN・インターネット)を活かしたまま制御を一元化・自動化する点がポイントです。次に、本社データセンター内で仮想マシンの増減が頻繁に発生し、テナントごとの論理分離を大量に必要とする場合には、VLANの4094個という上限では将来的なテナント数増加に耐えられない懸念から、VXLAN(VNIで最大約1677万セグメント)を採用してL3アンダーレイ上にL2オーバーレイを構築し、物理配置に縛られない柔軟なセグメント設計を実現します。ここで注意すべきひっかけは「SD-WANを導入すればデータセンター内のセグメント数の課題も解決する」という誤解です——SD-WANは拠点間WANの回線制御が対象であり、データセンター内のL2セグメント設計(VXLANの領分)とは適用範囲が異なるため、課題ごとに適切な技術を選ぶ必要があります。同様に、ファイアウォールを拠点ごとに専用機器で個別導入するのではなく、NFVで仮想化されたファイアウォール機能(VNF)をSD-WANコントローラと連携させてソフトウェア配信することで、拠点展開のスピードをさらに高められます。

技術分離/仮想化する対象主な適用範囲
SDNコントロールプレーンとデータプレーンデータセンター内/拠点内のスイッチ制御
SD-WAN複数のWAN回線拠点間WANの回線選択・自動化
NFV専用ハードウェア機能FW/ロードバランサ等のソフトウェア化
VXLANL2セグメント(L3上へのオーバーレイ)データセンター内の大量テナント分離
注意

ひっかけ: 「SDNとNFVは同じ技術の別名である」は誤りです——SDNは制御と転送の分離、NFVは専用機器機能のソフトウェア化という異なる目的の概念です(併用は可能)。また「SD-WANを導入すればデータセンター内のVLAN数上限(4094)の問題も解決する」も誤り=SD-WANの適用範囲は拠点間WANの回線制御であり、データセンター内のL2セグメント数はVXLAN(VNI)の領分です。

SDN/OpenFlow・SD-WAN・NFV・VXLANの図。
ネットワークをソフトで制御

4.3.4この節のまとめ

  • SDNはコントロールプレーンとデータプレーンを分離しOpenFlow等で一元管理する設計思想
  • SD-WANは拠点間の複数回線を抽象化・動的振り分け、NFVは専用機器機能をソフトウェア化(VNF)——目的の異なる別概念
  • VXLANはL3上にL2をオーバーレイし、VNI(24ビット・最大約1677万)でVLANの4094上限を超える大量テナント分離を実現

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 全国に多数の拠点を持つ企業が、専用線・IP-VPN・インターネット回線を併用しつつ、アプリケーションの種類に応じて通信を動的に最適な回線へ振り分け、拠点追加時の設定も一元的に配信したいと考えている。最も適した技術はどれか。

Q2. あるデータセンターで仮想マシンの増減が頻繁に発生し、テナントごとの論理分離を将来的に数万単位まで拡張したいが、従来のVLANでは識別子の上限が課題になっている。この課題への対処として最も適切なものはどれか。

Q3. SDNとNFVの違いに関する説明として最も適切なものはどれか。

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