第4章 · 広域網とネットワーク仮想化·v1.0.0·更新 2026/7/10·読了目安 約15分
変更要約: 初版
4.1WANと広域接続
この節の要点
拠点間を結ぶ専用線・広域イーサネット・MPLS(ラベルスイッチング)によるIP-VPN、そしてインターネットVPNなどの閉域網サービスの特性を比較し、コスト・品質(帯域保証・遅延)・セキュリティのトレードオフから最適な回線・アクセス方式を選ぶ判断力を学びます。
複数拠点を持つ企業のネットワーク設計者にとって、拠点間接続の方式選定は「コスト」「品質(帯域保証・遅延の安定性)」「セキュリティ」の三すくみのトレードオフです。専用線のように高品質・高セキュリティだが高コストな方式から、インターネットVPNのように低コストだが品質保証が弱い方式まで、要件に応じて最適解が変わります。この節では、拠点数・要求品質・予算という具体的な制約を踏まえてどのWANサービスを選ぶべきかを判断する視点を養います。
4.1.1専用線と広域イーサネット
- 専用線=通信事業者の設備を1つの契約者が占有する回線。他社のトラフィックと共有しないため帯域・遅延が完全に保証され、機密性も最も高いが、距離とともに料金が上がる(拠点数が増えるとフルメッシュ接続のコストが急増する)のが最大の弱点。
- 広域イーサネット=通信事業者網内でイーサネットフレームをそのまま透過させ、拠点間をL2で接続するサービス。拠点数が多くてもハブ&スポーク型やフルメッシュ型を柔軟に構成でき、専用線ほど距離課金が急増しない。IPアドレス体系を拠点間で自由に設計できる(L2接続のため)点も専用線に近い自由度を持つ。
4.1.2MPLS(ラベルスイッチング)とIP-VPN
- MPLS(Multi-Protocol Label Switching)=パケットにIPアドレスの代わりに短いラベルを付与し、経路上のLSR(ラベルスイッチルータ)がラベルだけを見て高速に転送する技術。宛先IPアドレスをその都度参照するIPルーティングより転送処理が軽く、FEC(転送等価クラス)単位で経路や帯域・優先度を柔軟に制御できる。
- IP-VPN=通信事業者がMPLS網内に契約者ごとの仮想的な閉域網(VRF:仮想ルーティングテーブル)を作り、L3(IP)で拠点間を接続するサービス。通信事業者網は経由するがインターネットを経由しない閉域網のため、広域イーサネットより帯域保証・QoS制御がしやすく、大規模・多拠点でコストと品質のバランスが良い代表的選択肢。

