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第5章 · 開発技術とマネジメント·v1.0.0·更新 2026/7/9·読了目安 約16分

変更要約: 初版(第5章・s1-s5)

5.3プロジェクトマネジメント

この節の要点

PMBOKの知識体系を土台に、スコープ管理のWBS(作業分解構成図)、スケジュール管理のアローダイアグラムPERTクリティカルパス、コスト管理のEVM(アーンドバリューマネジメント)、そして品質・リスク・ステークホルダの各管理領域を学びます。

プロジェクトを計画通りに完遂するには、「何を作るか」「いつまでに終わるか」「いくらかかるか」を定量的に管理する技術が要ります。PMBOKが整理する知識体系のうち、応用情報にもつながるスコープ・スケジュール・コストの計算問題は特に重要で、アローダイアグラムの読み方とEVMの指標計算は確実に押さえておく必要があります。

5.3.1PMBOKとWBS

  • PMBOK(Project Management Body of Knowledge)=プロジェクトマネジメントの知識を体系化した国際的な標準ガイド。スコープ・スケジュール・コスト・品質・リスク・ステークホルダなど複数の知識エリアで構成され、多くのプロジェクト管理手法・資格の土台になっています。
  • WBS(Work Breakdown Structure・作業分解構成図)=プロジェクトの成果物・作業を階層的に細分化し、管理可能な単位(ワークパッケージ)まで分解する手法。スコープ(プロジェクトで実施する作業範囲)を漏れなく洗い出し、見積り・進捗管理・要員割当の基礎にします。分解しすぎても管理コストが増えるため、適切な粒度で止めることが重要です。

5.3.2スケジュール管理:アローダイアグラム・PERT・クリティカルパス

  • アローダイアグラム=作業(アクティビティ)を矢印、結合点(イベント)を丸で表し、作業の前後関係と所要日数をネットワーク図として可視化する手法。PERT(Program Evaluation and Review Technique)=アローダイアグラムを用いてプロジェクト全体の日程を分析・管理する技法の総称で、各経路の所要日数を積み上げて計算します。
  • クリティカルパス=開始から終了までの全経路のうち、所要日数の合計が最も長い経路。この経路上の作業が1日でも遅れるとプロジェクト全体の完了が同じ日数だけ遅れるため、最重要の管理対象になります。逆に、クリティカルパス上にない作業には余裕(フロート)があり、その範囲内の遅延はプロジェクト全体の遅延に直結しません。
  • クリティカルパスの求め方=開始から終了までの全ての経路について所要日数を合計し、最も長い合計日数の経路を選びます。複数経路がある場合は、経路ごとに丁寧に日数を積み上げて比較することが正確な判定の鍵です。
試験ポイント

「クリティカルパス=全経路中で所要日数が最長の経路・この経路の遅れがそのままプロジェクト全体の遅れになる」「WBSは作業を階層的に分解しスコープを漏れなく洗い出す」「PERTはアローダイアグラムで日程全体を分析する技法」が最頻出です。複数経路がある図で一部の経路の日数だけを見て最長経路を誤認する(全経路を計算し尽くさない)ミスが典型的な失点パターンです。

5.3.3コスト管理:EVM、品質・リスク・ステークホルダ

  • EVM(Earned Value Management・アーンドバリューマネジメント)=進捗とコストを金額換算した共通の指標で統合的に管理する手法。PV(計画価値)=計画時点で完了しているはずの作業の予算額。EV(出来高・アーンドバリュー)=実際に完了した作業の予算額(進捗の実績を金額で表す)。AC(実コスト)=実際に投じたコストの実績額。
  • EVMの差異指標=SV(スケジュール差異)= EV - PV(マイナスなら計画より遅れ)。CV(コスト差異)= EV - AC(マイナスなら予算超過)。「出来高が計画や実コストをどれだけ上回る/下回るか」という引き算の向きを正しく覚えることが計算問題での失点を防ぎます。
  • その他の知識エリア=品質管理(成果物が要求水準を満たすかの管理)、リスク管理(発生しうる問題を事前に特定し発生確率・影響度に応じて対応策を準備)、ステークホルダ管理(プロジェクトに利害関係を持つ関係者を識別し期待値・関与度を調整)。いずれもスコープ・スケジュール・コストと並ぶPMBOKの主要な知識エリアです。

あるシステム開発プロジェクトを例に、スケジュールとコストの管理を具体的に追ってみます。まずWBSでプロジェクトの作業を「設計」「実装」「テスト」といった大分類から、さらに管理可能な単位まで分解し、各作業の所要日数を見積ります。次にこれらの作業の前後関係をアローダイアグラムに落とし込みます。仮に開始から終了までの経路が「設計(5日)→実装(10日)→テスト(5日)」(合計20日)という経路と、並行して進む「環境構築(3日)→データ移行準備(8日)」(合計11日)という経路の2つがあったとすると、全経路を計算し尽くした上で合計日数が長い「設計→実装→テスト」の20日間がクリティカルパスと判定されます。この経路上の実装作業が2日遅れれば、プロジェクト全体の完了も2日遅れます。一方、環境構築の経路には20日-11日=9日の余裕(フロート)があるため、多少の遅延は全体日程に影響しません。次にコスト面では、プロジェクト開始から10日目の時点で、計画では300万円分の作業が完了している予定(PV=300万円)だったとします。実際にはこの時点で250万円分の作業しか完了しておらず(EV=250万円)、そこまでに280万円のコストを投じていた(AC=280万円)とすると、SV = EV - PV = 250 - 300 = -50万円(計画より遅れている)、CV = EV - AC = 250 - 280 = -30万円(予算より超過している)と算出でき、「進捗も遅れ気味でコストも超過気味」という状況を金額という共通の物差しで即座に把握できます。この数値をもとに、リスク管理では「このまま推移すると納期・予算の両方が悪化する」というリスクを早期に特定し、要員追加やスコープ調整といった対応策をステークホルダと調整する、という一連の管理サイクルがPMBOKの各知識エリアを横断して回ります。

指標意味計算式
PV(計画価値)計画上、完了しているはずの予算額(計画から算出)
EV(出来高)実際に完了した作業の予算額(実績から算出)
AC(実コスト)実際に投じたコスト(実績から算出)
SV(スケジュール差異)マイナスなら計画より遅れEV - PV
CV(コスト差異)マイナスなら予算超過EV - AC
注意

ひっかけ: 「アローダイアグラムで最初に見つけた1本の経路の日数がそのままクリティカルパスの日数である」は誤りです。全ての経路を計算し尽くし、その中で最長の経路を選ばなければクリティカルパスは正しく求まりません。また「CV = AC - EV(実コストから出来高を引く)」も誤り=正しくはCV = EV - ACで、出来高(EV)を基準に実コスト(AC)との差を見ます。符号が逆になるとマイナス/プラスの意味(超過/余裕)も逆転するため注意が必要です。

WBS・クリティカルパス・EVMの図。
プロジェクトの管理

5.3.4この節のまとめ

  • PMBOK=プロジェクトマネジメントの国際標準ガイド。WBS=作業を階層的に分解しスコープを漏れなく洗い出す
  • クリティカルパス全経路中で所要日数が最長の経路。この経路の遅れ=プロジェクト全体の遅れ。非クリティカルパスにはフロート(余裕)がある
  • EVMSV = EV - PV(遅れ判定)・CV = EV - AC(予算超過判定)。いずれもマイナスが悪化方向

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. あるプロジェクトのアローダイアグラムに、所要日数の合計が18日の経路Aと22日の経路Bの2つの経路がある。経路B上の作業が3日遅延した場合、プロジェクト全体の完了はどうなるか?

Q2. プロジェクト開始から一定期間経過した時点で、PV=400万円、EV=350万円、AC=380万円だった。この時点の状況として正しいのは?

Q3. プロジェクトの作業範囲を漏れなく洗い出し、成果物や作業を階層的に細分化して管理可能な単位に分解したい。用いるべき技法は?

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