第5章 · ネットワーク管理と高可用性·v1.0.0·更新 2026/7/16·読了目安 約16分
変更要約: 初版
5.4冗長化と高可用性
この節の要点
デフォルトゲートウェイを冗長化するVRRP・HSRP、物理リンクを束ねるリンクアグリゲーション、複数経路を確保する経路冗長、アクティブ/スタンバイ構成の機器冗長、稼働率・MTBF・MTTRの計算、そしてシステム全体を脅かす単一障害点(SPOF)の排除を学びます。
システムが「止まらない」ことを保証するには、故障を完全になくすのではなく、故障が起きても業務影響を最小化する構成を設計します。この節では、ネットワークの各レイヤ(ゲートウェイ・リンク・経路・機器)ごとの冗長化技術と、その効果を定量的に裏付ける稼働率計算を学び、「可用性目標をどの冗長構成で達成するか」を判断できるようになることを目指します。
5.4.1ゲートウェイ冗長(VRRP/HSRP)
- 端末はデフォルトゲートウェイを1つのIPアドレス・MACアドレスとして固定的に認識するため、そのルータが単体で故障すると端末はゲートウェイに到達できなくなる。VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol、標準規格)とHSRP(Hot Standby Router Protocol、Cisco独自)は、複数の物理ルータで仮想IPアドレス・仮想MACアドレスを共有し、端末からは常に1台の仮想ルータに見せかける技術。
- 通常はマスタ(アクティブ)ルータが仮想IPへの通信を実際に処理し、バックアップ(スタンバイ)ルータは待機しつつマスタの生存確認(アドバタイズメント)を監視する。マスタが応答しなくなると、バックアップが自動的に昇格して仮想IP/MACの処理を引き継ぐため、端末側の設定変更なしにフェイルオーバーできる。
5.4.2リンク冗長と経路冗長
- リンクアグリゲーション(IEEE802.3ad/LACP)=複数の物理リンクを論理的に1本の太いリンクとして束ねる技術。帯域の拡張と冗長化(1本が切れても残りのリンクで通信を継続)を同時に達成できる。LACPは対向機器と自動的にネゴシエーションし、リンクの状態変化を検知して自動的に有効なリンクの組を再構成する。
- 経路冗長=物理的に異なる複数の経路(回線・機器を経由するパス)を用意し、動的ルーティングプロトコル(OSPF/BGP等)で経路障害を検知して自動的に迂回する構成。単一の回線・機器だけでなく、経路上のどこか一箇所が壊れても通信が継続することを保証する点がゲートウェイ冗長・リンク冗長よりも広い範囲をカバーする。

