変更要約: 初版
3.3単一エリアOSPFv2の隣接関係とネットワークタイプ
リンクステート型IGPであるOSPFv2(AD110・帯域幅ベースのコスト)の単一エリア構成を、Helloによる隣接関係(ネイバー)の確立条件(エリア・タイマ・サブネット・MTUの一致)と、ポイントツーポイント/ブロードキャストというネットワークタイプの違い、そしてrouter ospf/network/ip ospfの設定とshow ip ospf neighborでの検証を通じて学びます。
OSPFはCCNAで唯一深く問われる動的ルーティングプロトコルで、実務では「なぜネイバーがFullにならないのか」というトラブルシュートが日常です。この節では、ルータ同士がHelloパケットを交換して隣接関係を組む条件と、リンクがポイントツーポイントかブロードキャストかによって動作(DR/BDR選出の有無)が変わる点を、実機のshow ip ospf neighbor出力を診断する目線で学びます。
3.3.1OSPFv2の基礎と単一エリア構成
- OSPFv2=リンクステート型のIGP。各ルータが自分のリンク状態(LSA)を広告し合ってエリア全体で同一のリンクステートデータベース(LSDB)を共有し、そこからSPF(ダイクストラ)で最短経路木を計算する。ADは110、メトリックは帯域幅ベースのコスト。
- 単一エリア構成では全ルータをエリア0(バックボーン)に置く。設定は
router ospf 1(プロセスIDはルータ内でのみ有効=隣接ルータと一致不要)に入り、network 192.168.1.0 0.0.0.255 area 0でワイルドカードマスクを使って参加インタフェースを指定するか、インタフェースでip ospf 1 area 0と直接指定する。 - コストの既定は
コスト = 参照帯域幅(10^8=100Mbps) / インタフェース帯域幅(bps)(最小1)。FastEthernet(100Mbps)はコスト1。ただし既定の参照帯域幅ではGigabitEthernet以上がすべてコスト1に丸められるため、高速リンクを区別したいときはauto-cost reference-bandwidthで参照帯域幅を引き上げる。
3.3.2Helloによる隣接関係の確立条件
- ルータはインタフェースからマルチキャスト
224.0.0.5宛にHelloを送り合ってネイバーを発見する。関係はDown → Init → 2-Way → Exstart → Exchange → Loading → Fullと進み、Fullが「LSDBを完全に同期し終えた」正常な最終状態。 - 隣接が成立する(Fullに至る)にはHello/Deadインターバル・エリアID・サブネット(同一サブネット上にあること)・スタブフラグ・認証・MTUがすべて一致している必要がある。プロセスIDとルータの優先度は一致不要(優先度はDR選出に使うだけ)。どれか1つでも食い違うと2-WayやExstartで止まる。
3.3.3ネットワークタイプ:ポイントツーポイントとブロードキャスト
- ポイントツーポイント=2台だけが向き合うリンク(シリアルや
ip ospf network point-to-pointを設定したリンク)。相手は必ず1台なのでDR/BDRの選出は行われず、両者は直接Fullの隣接になる。優先度の設定は無意味。 - ブロードキャスト=イーサネットLANの既定タイプ。同一セグメントに3台以上が載り得るため、隣接数の爆発を防ぐ代表としてDR/BDRを選出する(詳細は次節)。DROTHER同士はFullにならず2-Wayで留まるのが正常。
最頻出:隣接が成立するにはHello/Deadタイマ・エリアID・サブネット・MTU・認証・スタブフラグの一致が必要(プロセスIDと優先度は不一致でよい)。 ポイントツーポイントはDR/BDRを選出しない、ブロードキャストは選出する。コスト=10^8 / 帯域幅で既定参照帯域幅ではGig以上が全部コスト1になる点も頻出。show ip ospf neighborで状態がFullか、EXSTARTや2-WAYで止まっていないかを読めること。
あなたは2台のルータR1・R2をイーサネットで直結してOSPFを組んだのに、show ip ospf neighborにネイバーが1つも現れない、というトラブルに当たったとします。まず落ち着いて確認すべきは「Helloが噛み合う条件がそろっているか」です。両側でshow ip ospf interfaceを見ると、R1のHelloインターバルが10秒なのにR2側が30秒に変わっていました。Hello/Deadインターバルが一致しないと、そもそもネイバーとして認識されずDownのままなので、これが原因だと診断できます。もしタイマは合っているのにネイバーがInit止まりなら、片方向しかHelloが届いていない(ACLやインタフェース障害で戻りのHelloが落ちている)疑いです。2-Wayで止まるのはブロードキャストリンクでDROTHER同士なら正常ですが、ポイントツーポイントで2-Wayのまま進まないのは異常です。さらにExstart/Exchangeで行き来する(フラップする)典型原因はMTU不一致で、片側だけMTUを変えたときに起きます。ここで大切なのは、症状(どの状態で止まっているか)から原因の候補を絞る診断の型です——「エリアIDが違えばDown〜Init」「タイマ不一致でネイバー不成立」「MTU不一致でExstart/Exchangeループ」。闇雲に設定を消して入れ直すのではなく、show ip ospf neighborの状態とshow ip ospf interfaceのタイマ・エリア・ネットワークタイプ・MTUを突き合わせることで、最短で原因にたどり着けます。
| 項目 | ポイントツーポイント | ブロードキャスト |
|---|---|---|
| 代表例 | シリアル、P2P設定のリンク | イーサネットLAN(既定) |
| DR/BDR選出 | 行わない | 行う |
| 隣接の組み方 | 相手1台と直接Full | DR/BDRとFull、DROTHER同士は2-Way |
| 優先度設定 | 無意味 | DR選出に影響 |
ひっかけ: 「OSPFのプロセスID(router ospf 1の1)は隣接ルータと一致させないと隣接が組めない」は誤りです——プロセスIDはルータ内でのみ有効で、相手と違っていても隣接は成立します。一致が必要なのはHello/Deadタイマ・エリアID・サブネット・MTU・認証です。また「ブロードキャストリンクでDROTHER同士が2-Wayで止まるのは障害」も誤り=それが正常動作で、DROTHERはDR/BDRとだけFullになります。
3.3.4この節のまとめ
- OSPFv2はリンクステート型IGP(AD110・コスト=
10^8/帯域幅)。単一エリアは全ルータをエリア0に置きrouter ospf+network(ワイルドカードマスク)で構成 - 隣接(Full)にはHello/Deadタイマ・エリアID・サブネット・MTU・認証・スタブフラグの一致が必要。プロセスIDと優先度は不一致でよい
- ポイントツーポイントはDR/BDRを選出せず直接Full、ブロードキャストはDR/BDRを選出しDROTHER同士は2-Wayが正常
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. イーサネットで直結した2台のルータでOSPFを設定したが、`show ip ospf neighbor` にネイバーが表示されずDown状態が続く。`show ip ospf interface` で確認すると、片側のHelloインターバルが10秒、もう片側が30秒だった。最も適切な対処はどれか。
Q2. 3台のルータが同一のイーサネットセグメント(ブロードキャストネットワーク)でOSPFを組んでいる。運用者が「DROTHERに選ばれた2台のルータ同士のネイバー状態が Full ではなく 2-WAY のままだ」と報告した。この状態の解釈として最も適切なものはどれか。
Q3. OSPFで既定の参照帯域幅のまま運用しているネットワークで、GigabitEthernet(1Gbps)と10GigabitEthernet(10Gbps)のリンクが混在している。「高速な10Gリンクを優先させたいのに、OSPFが両者を同じコストとして扱ってしまう」原因と対策として最も適切なものはどれか。

