変更要約: 初版
3.1ルーティングテーブルの読み方とフォワーディング決定
show ip routeが出力する各行のルーティングプロトコルコード・プレフィックス/ネットワークマスク・ネクストホップ・AD(アドミニストレーティブディスタンス)・メトリック・最終ゲートウェイ(gateway of last resort)を読み解き、パケットの転送先をロンゲストマッチ→AD→メトリックの順で決めるルータの判断ロジックを、実機出力の診断を通じて学びます。
CCNAで問われるルーティングは「用語の暗記」ではなく、show ip routeの実際の出力を見て「このパケットは実際どこへ転送されるか」「なぜこの経路が選ばれ、あの経路が選ばれないのか」を根拠つきで説明できる診断力です。ルーティングテーブルはルータが転送判断に使う唯一の表であり、1行1行の意味と、複数経路が競合したときの優先順位ルールを正しく読めることが、トラブルシュートの出発点になります。
3.1.1ルーティングテーブルの構成要素
典型的な1行は次のように読みます:O 10.1.1.0/24 [110/65] via 192.168.1.2, 00:05:12, GigabitEthernet0/0。先頭のOがコード、10.1.1.0/24がプレフィックスとマスク、[110/65]が[AD/メトリック]、via 192.168.1.2がネクストホップ、末尾のGigabitEthernet0/0が出力インタフェースです。
- ルーティングプロトコルコード=その経路をどう学習したかを示す1〜2文字。
C=直接接続、L=ローカル(インタフェース自身の/32)、S=静的、O=OSPF、D=EIGRP、R=RIP、B=BGP。O IAはOSPFエリア間、*は最終ゲートウェイ候補(例:S*)を表す。 - プレフィックス/ネットワークマスク=宛先ネットワークとその範囲(
10.1.1.0/24)。転送判断では、宛先IPがこのプレフィックスに含まれるかを照合する。ネクストホップ=「次にパケットを渡す隣接ルータのIP」、あわせて示される出力インタフェースは「どの口から送り出すか」。 - AD(
[の左)=経路の情報源の信頼度(値が小さいほど信頼される)。直接接続0、静的1、EIGRP90、OSPF110、RIP120。メトリック([の右)=同一プロトコル内での経路のコスト(OSPFは帯域幅ベースのコスト、RIPはホップ数)。ADは情報源間、メトリックは情報源内の比較という別軸である。 - 最終ゲートウェイ(gateway of last resort)=どのプレフィックスにも一致しなかったパケットの最終的な送り先。
show ip routeの冒頭にGateway of last resort is 203.0.113.1 to network 0.0.0.0のように表示され、デフォルトルート(0.0.0.0/0)が設定されているかを一目で確認できる。
3.1.2フォワーディング決定の順序:ロンゲストマッチ→AD→メトリック
- 第1段:ロンゲストマッチ(最長一致)。宛先IPが複数のプレフィックスに一致する場合、マスクが最も長い(最も限定的な)経路が無条件で優先される。
10.1.1.0/24と10.0.0.0/8の両方に一致するなら、たとえ/8側のADが小さくても/24が選ばれる——プレフィックス長の比較はADより先に行われる。 - 第2段:AD。同じプレフィックスを複数の情報源(静的とOSPFなど)が提供している場合、ADが最小の情報源だけがルーティングテーブルに載る。負けた側の経路はそもそもテーブルに現れない。
- 第3段:メトリック。採用された同一プロトコル内で同じプレフィックスへの経路が複数あるとき、メトリックが最小の経路が選ばれる。メトリックが等しい複数経路は等コストロードバランシングで分散される。
最頻出:フォワーディングは必ず「ロンゲストマッチ→AD→メトリック」の順。「ADが最小の経路が常に使われる」は誤りで、より限定的なプレフィックス(長いマスク)はADが大きくても優先される。[AD/メトリック]の読み方(左がAD=情報源、右がメトリック=プロトコル内コスト)と、Gateway of last resort=デフォルトルートの有無、も必ず即答できるように。
あなたは支店ルータR1のトラブル対応をしていて、「宛先10.1.1.50宛の通信が想定と違う経路(低速なバックアップ回線側)に流れている」という報告を受けたとします。show ip routeを見ると2行が目に入ります:O 10.1.0.0/16 [110/2] via 192.168.0.2(高速な主回線)と、S 10.1.1.0/24 [1/0] via 172.16.9.9(低速なバックアップ側に手で入れた静的経路)です。10.1.1.50はどちらのプレフィックスにも含まれますが、ここで「静的経路のAD=1がOSPFのAD=110より小さいから静的が優先されるはずだ」と考えるのは誤りの入口です。フォワーディングはまずロンゲストマッチで決まり、/24は/16よりマスクが長い(より限定的)ため、ADの大小を比べる前に/24の静的経路が選ばれます。結果、意図せず低速回線へ流れていたわけです。原因が腑に落ちれば対処は明確で、この/24静的経路が本当に必要かを問い直し、不要なら削除して/16のOSPF経路に集約する、あるいはこの静的経路を意図的にフロート(ADをOSPFより大きく設定=floating static)させて「主経路が生きている間はOSPFを使い、落ちたときだけ静的にフォールバック」する設計に直します。「ADが小さい方が勝つ」という思い込みだけで診断すると、プレフィックス長という第1段の判断を見落とす——これが実務で最も多いルーティング誤診の型です。
| 出力の断片 | 名称 | 意味 |
|---|---|---|
| `O` | ルーティングプロトコルコード | 経路の学習元(C/L/S/O/D/R/B) |
| `10.1.1.0/24` | プレフィックス/マスク | 宛先ネットワークと範囲(第1段の照合対象) |
| `[110/65]` | [AD/メトリック] | 左=情報源の信頼度、右=プロトコル内コスト |
| `via 192.168.1.2` | ネクストホップ | 次にパケットを渡す隣接ルータのIP |
| `GigabitEthernet0/0` | 出力インタフェース | どの口から送り出すか |
ひっかけ: 「同じ宛先に一致する経路が複数あれば、ADが最小の経路が使われる」は不完全=まずロンゲストマッチでプレフィックス長を比較し、長い方が勝つ(ADはプレフィックス長が同じ経路同士の比較でしか効かない)。また「メトリックとADは同じもの」も誤り=ADは情報源間、メトリックは同一プロトコル内の比較で、[AD/メトリック]と別々に表示される。
3.1.3この節のまとめ
show ip routeの1行はコード・プレフィックス/マスク・[AD/メトリック]・ネクストホップ・出力IFで構成され、冒頭の最終ゲートウェイでデフォルトルートの有無がわかる- フォワーディングはロンゲストマッチ→AD→メトリックの順。マスクが長い(限定的な)経路はADが大きくても優先される
- ADは情報源の信頼度(直接接続0/静的1/EIGRP90/OSPF110/RIP120)、メトリックは同一プロトコル内のコスト——別軸である
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. ルータのルーティングテーブルに `O 10.1.0.0/16 [110/2] via 192.168.0.2` と `S 10.1.1.0/24 [1/0] via 172.16.9.9` の両方が存在する。宛先 `10.1.1.50` 宛のパケットが実際に転送される経路と、その根拠として最も適切なものはどれか。
Q2. あるルータで同一の宛先ネットワーク `192.168.50.0/24` を、静的ルーティングとOSPFの両方が学習している。`show ip route` にこのプレフィックスがどう表示されるかとして最も適切なものはどれか。
Q3. `show ip route` の冒頭に `Gateway of last resort is 203.0.113.1 to network 0.0.0.0` と表示されていた。この記述から読み取れる内容として最も適切なものはどれか。

