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第3章 · IP接続(ルーティング)·v1.0.0·更新 2026/7/17·読了目安 約17分

変更要約: 初版

3.2静的ルーティング(IPv4/IPv6)

この節の要点

管理者が手で経路を入れる静的ルーティングを、宛先ネットワークへのネットワークルート・単一ホスト宛のホストルート・すべての未一致を受けるデフォルトルート・バックアップ用にADを上げたフローティングスタティックの4類型で理解し、ip routeipv6 routeの設定と検証を実機目線で学びます。

静的ルーティングは、経路がほとんど変わらない小規模構成や、末端の1本道(スタブ)、そして動的プロトコルのバックアップとして、いまも実務で多用されます。CCNAでは「ip routeの文法を覚える」だけでなく、目の前の要件(宛先の範囲・冗長化の要否)に対してどの類型を選び、どんなADを与えるかという設計判断が問われます。この節ではIPv4とIPv6の両方で4類型を設定・検証できるようにします。

3.2.1静的ルートの4類型

  • ネットワークルート=あるサブネット全体への経路。IPv4はip route 10.2.2.0 255.255.255.0 192.168.1.2(宛先・マスク・ネクストホップ)、IPv6はipv6 route 2001:db8:2::/64 2001:db8:1::2。ネクストホップIPの代わりに出力インタフェースを書くこともできる。
  • ホストルート=ただ1台の宛先への経路で、マスクはIPv4が/32、IPv6が/128。例:ip route 10.3.3.3 255.255.255.255 192.168.1.2。特定サーバだけを別経路に向けたいときに使う(最も限定的なのでロンゲストマッチで確実に優先される)。
  • デフォルトルート=どの経路にも一致しないすべてのパケットの出口。IPv4はip route 0.0.0.0 0.0.0.0 203.0.113.1、IPv6はipv6 route ::/0 2001:db8:1::1。インターネット向けやスタブ拠点で使い、show ip routeでは最終ゲートウェイとして表示される。
  • フローティングスタティック=末尾にAD値を付けて既定のAD(=1)より大きくした静的経路(例:ip route 10.2.2.0 255.255.255.0 172.16.9.9 200)。通常時は動的経路(OSPFなら110)が勝ち、その経路が消えたときだけこの静的経路が「浮上」してテーブルに載る=バックアップ経路になる。
試験ポイント

最頻出:デフォルトルートのマスクはIPv4が0.0.0.0 0.0.0.0/0)、IPv6が::/0。ホストルートは/32(IPv4)・/128(IPv6)。フローティングスタティックは末尾のAD値を動的プロトコルより大きく設定してバックアップにする。 「静的経路のAD既定値は1」も頻出。ネクストホップかインタフェースのどちらでも書ける点にも注意。

あなたは本社と支店を結ぶ設計担当で、支店には主回線(専用線・OSPFで学習)バックアップ回線(安価なインターネットVPN)の2本があります。要件は「普段は主回線を使い、主回線が落ちたときだけ自動でバックアップへ切り替える」こと。ここで単純にバックアップ回線向けの静的経路をip route 10.0.0.0 255.0.0.0 <VPN側ネクストホップ>とだけ入れると、静的のAD=1がOSPFのAD=110より小さいため、主回線が生きているのに常に静的(バックアップ)経路が優先されてしまい、意図と正反対の挙動になります。正しくは末尾にAD値を足してip route 10.0.0.0 255.0.0.0 <VPN側ネクストホップ> 200とし、フローティングスタティックにします。こうするとAD200はOSPFの110より大きいので通常時はテーブルに載らず、主回線のOSPF経路が使われます。主回線が落ちてOSPF経路がテーブルから消えると、はじめてAD200の静的経路が「浮上」して採用され、バックアップへ切り替わります。IPv6でも同じ考え方でipv6 route 2001:db8::/32 <VPN側> 200のようにAD値を付けます。「バックアップ=静的経路を入れるだけ」ではなく、ADを主経路より大きくして初めてバックアップとして機能する——この設計判断がフローティングスタティックの肝です。切り替わりを検証するときはshow ip routeで主経路が消えた瞬間に静的経路が現れるかを確認します。

類型IPv4設定例IPv6設定例用途
ネットワークルート`ip route 10.2.2.0 255.255.255.0 192.168.1.2``ipv6 route 2001:db8:2::/64 2001:db8:1::2`サブネット全体への経路
ホストルート`ip route 10.3.3.3 255.255.255.255 192.168.1.2``ipv6 route 2001:db8:2::9/128 2001:db8:1::2`単一ホスト(/32・/128)
デフォルトルート`ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 203.0.113.1``ipv6 route ::/0 2001:db8:1::1`未一致すべての出口
フローティングスタティック`ip route 10.2.2.0 255.255.255.0 172.16.9.9 200``ipv6 route 2001:db8:2::/64 2001:db8:1::9 200`AD>動的で動くバックアップ
注意

ひっかけ: 「バックアップ回線用の静的経路を入れればフェールオーバーになる」は誤りです——AD値を付けずに入れた静的経路はAD=1で動的経路(OSPF=110等)に常に勝ってしまい、普段からバックアップ側に流れて主経路が使われません。バックアップにするには末尾のAD値を主経路より大きくしたフローティングスタティックにする必要があります。また「デフォルトルートはOSPFなどでしか作れない」も誤り=ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 <ネクストホップ>で静的に作れます。

ネットワーク/ホスト/デフォルト/フローティングスタティックの図。
静的ルートの4類型

3.2.2この節のまとめ

  • 静的ルートはネットワーク/ホスト(/32・/128)/デフォルト(0.0.0.0 0.0.0.0・::/0)/フローティングスタティックの4類型、既定AD=1
  • IPv4はip route、IPv6はipv6 route。ネクストホップIPでも出力インタフェースでも書ける
  • フローティングスタティックは末尾のADを動的プロトコルより大きくして、主経路が落ちたときだけ浮上するバックアップにする

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 支店に主回線(OSPFで経路学習・AD=110)とバックアップ回線があり、「普段は主回線、主回線障害時のみバックアップへ自動切替」という要件がある。バックアップ回線向けの静的経路をどう設定すべきか、最も適切なものはどれか。

Q2. IPv6のスタブ拠点で、既知の内部プレフィックス以外のすべての宛先をISP側ルータ `2001:db8:1::1` へ送る静的デフォルトルートを設定したい。最も適切なコマンドはどれか。

Q3. 運用者が特定の1台のサーバ `10.5.5.7` 宛の通信だけを、通常とは別の監視用ルータ経由に向けたい。他の `10.5.5.0/24` 宛は既存経路のままにする。最も適切な静的経路はどれか。

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