第5章 · 情報セキュリティ運用と供給者管理·v1.0.0·更新 2026/7/11·読了目安 約14分
変更要約: 初版
5.2アクセス管理と特権管理
この節の要点
サービス運用で誰に何を許すかを制御するアクセス管理--最小権限の原則、権限のプロビジョニング(付与)と棚卸し(定期的な見直し・剥奪)、強い権限を厳格に扱う特権ID管理、そして本人確認を担う認証--を、内部不正・退職者放置のリスクを防ぐ運用者の判断として学びます。
サービスを安全に回すうえで、「誰がどのシステムに、どこまでの権限でアクセスできるか」を適切に制御することは、運用の根幹です。権限を配りすぎれば内部不正や事故時の被害が拡大し、逆に厳しすぎれば業務が止まってSLAを損ないます。さらに、いったん付与した権限は放置すると退職者や異動者のアカウントが残り続け、悪用の温床になります。この節では、最小権限の原則、権限を付与し(プロビジョニング)定期的に見直す(棚卸し)ライフサイクル、特に強い権限を扱う特権ID管理、そして本人確認を担う認証を、運用者の判断として学びます。
5.2.1最小権限とアクセス権のライフサイクル
- 最小権限(least privilege)=各利用者・各サービスに、業務遂行に必要な最小限の権限だけを与える原則。過剰な権限は、内部不正・誤操作・アカウント乗っ取り時の被害範囲(爆発半径)を無用に広げる。役割に応じてまとめて権限を割り当てる役割ベースアクセス制御(RBAC)は、最小権限を運用しやすくする代表的な方式。
- アクセス権にはライフサイクルがある。プロビジョニング(付与)=入社・異動・プロジェクト参加に合わせて必要な権限を承認のうえ付与する。棚卸し(アクセスレビュー/再認証)=定期的に「今も本当にその権限が必要か」を見直し、不要になった権限(退職者・異動者・終了プロジェクト分)を剥奪する。退職・異動時の速やかな権限剥奪(デプロビジョニング)を怠ると、放置アカウントが重大なリスクになる。
5.2.2特権ID管理と認証
- 特権ID管理(PAM)=管理者権限(root/Administrator等)のような強い権限を、通常の利用者IDとは別に厳格に管理する運用。常時付与せず必要な時だけ一時的に払い出す(ジャストインタイム)、払い出しに承認を要求する、操作ログ・録画を取り証跡化する、共有せず個人を特定できる形で使わせる、といった統制で、強い権限の濫用・追跡不能を防ぐ。
- 認証=アクセスを許す前に「本人であること」を確かめる仕組み。知識(パスワード)・所持(トークン/スマホ)・生体などの要素を組み合わせる多要素認証(MFA)は、パスワード漏えい単独では突破されにくくする。特権IDや外部公開系の認証にはMFAを必須化するのが定石。認証(本人確認)と、その本人に何を許すかを決める認可(アクセス権)は別概念である点も運用上重要。

