Instiq
第1章 · セキュリティ・コンプライアンス・ID の概念·v2.0.0·更新 2026/6/3·読了目安 約14分

変更要約: SC-900 第1章を AZ-900 基準まで深掘り(ゼロトラスト3原則+多層防御の各層、責任共有モデル、CIA比較表、認証/認可の順序、認証3要素とMFA、暗号化(対称/非対称・保管時/転送時)とハッシュ比較表、シナリオ・FAQ・ひっかけ)。図2枚ja化

1.1ゼロトラストと多層防御

この節の要点

セキュリティの基本的な考え方——ゼロトラスト、多層防御、責任共有モデル、機密性・完全性・可用性(CIA)——を理解します。SC-900 の出発点です。

クラウド時代のセキュリティは「社内は安全、社外は危険」という境界(ペリメーター)モデルでは守りきれません。在宅勤務やクラウド利用で、守るべきデータやユーザーが社内ネットワークの外に広がったためです。そこで前提を変えたのが ゼロトラスト の考え方で、「どこからの要求でも、無条件には信頼しない」ことを出発点にします。SC-900 では、この基本思想と、それを支える多層防御・責任共有・CIA を結びつけて理解することが重要です。

1.1.1ゼロトラスト

ゼロトラストは「決して信頼せず、常に検証する(never trust, always verify)」を合言葉に、3つの原則で構成されます。これらは別々の技術ではなく、アクセスのたびに組み合わせて適用する指針です。

明示的に検証する(常に認証・認可)、最小特権(必要最小限のアクセス)、侵害を前提とする(被害範囲を最小化)というゼロトラストの3原則と、「決して信頼せず常に検証する」「多層防御」の補足を示した図。
ゼロトラストの3原則
  • 明示的に検証する:場所に関係なく、常に認証・認可する。
  • 最小特権(least privilege):必要最小限のアクセスだけを与える。
  • 侵害を前提とする(assume breach):被害範囲を最小化する設計にする。

1.1.2多層防御

多層防御(defense in depth)は、守りを複数の層に分け、1つの層が破られても次の層で食い止める考え方です。各層が異なる対策を担うため、攻撃者はすべてを突破しないと目的を達せられません。代表的な層は、物理(データセンターの施錠)→ ID とアクセス(認証・MFA)→ 境界(DDoS 対策・ファイアウォール)→ ネットワーク(セグメント化)→ コンピューティング(端末・サーバーの保護)→ アプリケーション → データ(暗号化)です。最終的に守りたいのは中心にあるデータで、ゼロトラストと多層防御は補完関係にあります。

1.1.3責任共有モデルと CIA

責任共有モデル は、クラウドのセキュリティ責任をプロバイダー(Microsoft)と利用者で分担する考え方です。境界は IaaS / PaaS / SaaS で動き、利用者が管理する範囲が変わります。ただし、どの形態でも データ・アカウントと ID・アクセス管理は基本的に利用者の責任に残る、という点が SC-900 で繰り返し問われます。物理的なデータセンターの保護は常にプロバイダー側です。

情報セキュリティの目的は、頭文字をとって CIA の3要素で表されます。機密性(Confidentiality)=認可された人だけが見られる(暗号化・アクセス制御)、完全性(Integrity)=データが改ざんされず正しいまま保たれる(ハッシュ・署名)、可用性(Availability)=必要なときに使える(冗長化・バックアップ・DDoS 対策)。多くの対策は、この3要素のどれを守るためかで整理できます。

要素意味代表的な対策
機密性認可された人だけが見られる暗号化・アクセス制御
完全性改ざんされず正しいままハッシュ・デジタル署名
可用性必要なときに使える冗長化・バックアップ・DDoS対策

シナリオ:在宅勤務の安全なアクセス。 社外の自宅 PC から社内データにアクセスする社員に対し、明示的に検証(MFA で本人確認)し、その人の役割に必要な範囲だけ許可(最小特権)、万一端末が侵害されても影響を限定(侵害前提でセグメント化)。通信は暗号化(機密性)、ログで改ざん検知(完全性)、冗長化で停止を防ぐ(可用性)。ゼロトラスト・多層防御・CIA が一体で働きます。

注意

混同に注意:
ゼロトラスト(信頼の前提を変える思想)多層防御(守りを層で重ねる手法)は別概念だが補完的。
②責任共有では、SaaS でもデータ・ID・アクセス管理は利用者の責任に残る(「クラウドだから全部お任せ」ではない)。
③CIA の3要素にコストや速度は含まれない。

補足

Q. ゼロトラストと多層防御の関係は? ゼロトラストは「無条件に信頼しない」思想、多層防御は「複数層で守る」実装手法。両立して使います。Q. 責任共有で利用者の責任が最も大きいのは? IaaS。最も小さいのは SaaS ですが、それでもデータ・ID は利用者責任。Q. MFA はゼロトラストのどの原則? 「明示的に検証する」の代表的な実装です。

試験ポイント

ゼロトラストの3原則(明示的に検証/最小特権/侵害前提)と、CIA の3要素多層防御の層責任共有モデルは頻出です。「決して信頼せず、常に検証する」がゼロトラストの合言葉。責任共有では SaaS でもデータ・ID は利用者責任。

1.1.4この節のまとめ

  • ゼロトラスト=明示的に検証/最小特権/侵害前提
  • 多層防御で守り、責任共有モデルで責任を分担、CIA が3要素

進捗の記録にはログインが必要です。

理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. ゼロトラストの合言葉として最も適切なものはどれですか?

Q2. 情報セキュリティの3要素(CIA)に含まれないものはどれですか?

Q3. 複数の層(ID・ネットワーク・アプリ・データなど)で防御し、1つ破られても全体を守る考え方はどれですか?

理解度を確認第1章「セキュリティ・コンプライアンス・ID の概念」の問題を解く