変更要約: 初版
6.3認証と暗号・PKI
ネットワークアクセスを一元的に認証するRADIUS、認証方式を拡張するEAP(EAP-TLS・PEAP)、ポート単位でアクセス制御するIEEE 802.1Xと認証VLAN、鍵の扱いが異なる共通鍵暗号と公開鍵暗号、そして通信相手の身元を保証するデジタル証明書・PKI・CA、改ざん検知と真正性証明を担うハッシュ・デジタル署名を学びます。
「誰がネットワークに接続してよいか」を制御する認証と、「なりすまし・改ざんを防ぐ」暗号・PKIは、ネットワークセキュリティの根幹です。ネットワークスペシャリストには、有線LANの各ポートや無線LANのアクセスポイントで、どの認証方式(802.1X・EAPの種類)を選べば要件(証明書運用の負荷、既存のパスワード基盤との親和性等)に見合うかを判断する力が求められます。
6.3.1RADIUSとEAP
- RADIUS=認証・認可・アカウンティング(AAA)を一元的なサーバに集約するプロトコル。多数のアクセスポイントやVPN機器、スイッチのポートごとに個別のユーザーDBを持たせる代わりに、RADIUSサーバに認証を問い合わせることでユーザー管理を一元化できる。
- EAP(拡張認証プロトコル)=認証方式そのものを差し替え可能にするフレームワーク。EAP-TLSはクライアント証明書とサーバ証明書の双方向の証明書認証を行い最も強固だが、全クライアントへの証明書配布・管理コストが高い。PEAPはサーバ側のみ証明書を使いTLSトンネルを確立した上で、その中でクライアントはID/パスワード等の軽量な認証を行う方式で、証明書管理コストを抑えつつ一定の強度を確保できる。
6.3.2IEEE 802.1Xと認証VLAN
- IEEE 802.1X=スイッチのポートや無線LANアクセスポイント単位で、接続端末を認証するまで通信を許可しないポートベース認証の標準規格。登場人物は認証を要求するサプリカント(端末)、ポートで中継するオーセンティケータ(スイッチ/AP)、実際に認証判定する認証サーバ(RADIUSサーバ)の3者。
- 認証VLAN=802.1Xの認証結果に応じて、接続端末を動的に異なるVLANへ割り当てる仕組み。認証済みの社員端末は業務VLANへ、未認証・ゲスト端末は隔離された(インターネットのみ許可等の)VLANへ自動的に振り分けることで、認証と論理的なネットワーク分離を連動させられる。
「RADIUS=認証の一元管理」「EAP=認証方式のフレームワーク」「EAP-TLS=双方向証明書認証(最強固・証明書管理コスト高)」「PEAP=サーバ証明書のみ+トンネル内で軽量認証」「802.1X=サプリカント/オーセンティケータ/認証サーバの3者」の対比が最頻出です。認証VLANが802.1Xの認証結果でVLANを動的に切り替える点も押さえましょう。
6.3.3暗号方式とPKI
- 共通鍵暗号=暗号化と復号に同じ鍵を使う方式。処理が高速な反面、通信相手ごとに鍵を安全に共有する鍵配送問題を抱える。公開鍵暗号=公開鍵と秘密鍵の鍵ペアを使い、公開鍵で暗号化したデータは対応する秘密鍵でしか復号できない方式。鍵配送問題を解決できるが、共通鍵暗号より処理が低速なため、実務では最初に公開鍵暗号で共通鍵(セッション鍵)を安全に交換し、以後の通信は共通鍵暗号で行うハイブリッド暗号方式が一般的(TLSもこの構成)。
- デジタル証明書=公開鍵の所有者が正当な本人であることをCA(認証局)が保証する電子的な証明書。PKI(公開鍵基盤)はCAを頂点とした証明書の発行・失効・検証の仕組み全体を指す。サーバ証明書の検証により、通信相手が名乗った本人(なりすましでない)ことを確認できる。
- ハッシュ関数=任意長のデータから固定長のハッシュ値(メッセージダイジェスト)を生成する一方向関数で、データの改ざん検知に使う。デジタル署名=送信者がメッセージのハッシュ値を自身の秘密鍵で暗号化したもの。受信者は送信者の公開鍵で復号・照合することで、改ざんの有無と送信者本人の真正性を同時に検証できる。
ある企業で、社内有線LANへの接続を「会社支給の管理端末のみ許可し、私物端末やゲストは隔離VLANに」という要件を実現するとします。ネットワーク設計者としてはまずIEEE 802.1Xを各スイッチポートに導入し、サプリカント(端末)・オーセンティケータ(スイッチ)・認証サーバ(RADIUSサーバ)の構成を組みます。認証方式の選定では、会社支給端末は情報システム部門が証明書を一括配布・管理できるためEAP-TLS(双方向証明書認証)を採用し最も強固な認証を実現します。一方、来客用の一時アクセスやBYOD(私物端末業務利用)の端末には、証明書配布の運用負荷が非現実的なため、既存のActive Directoryのユーザー名・パスワードをそのまま使えるPEAPを採用し、運用コストと強度のバランスを取ります。認証結果に応じて、EAP-TLSで認証された会社端末は業務VLANへ、PEAPで認証された私物端末は限定的な権限のゲストVLANへと、認証VLANで動的に振り分けることで論理的な分離も実現します。さらに、社内の重要なファイルサーバへのアクセス時には、通信内容の改ざんを検知するために各ファイルにデジタル署名を付与する運用とし、受信側は送信元の公開鍵証明書を社内CA(PKI)で検証することで、ファイルが正当な送信者から改ざんなく届いたことを確認できる設計とします。このように、証明書運用の負荷と認証強度のトレードオフを踏まえて、対象ごとに認証方式を使い分けるのが実務判断です。
| 方式 | 証明書の要否 | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| EAP-TLS | クライアント・サーバ双方 | 会社支給の管理端末(最強固) |
| PEAP | サーバのみ | BYOD・既存パスワード基盤の流用 |
ひっかけ: 「デジタル署名はメッセージ全体を送信者の秘密鍵で暗号化したものである」は誤りです——実際にはメッセージのハッシュ値を秘密鍵で暗号化したものがデジタル署名です(メッセージ全体の暗号化は処理コストが高く非効率)。また「PEAPはEAP-TLSより認証強度が高い」も誤り=EAP-TLSは双方向の証明書認証で最も強固、PEAPはサーバ証明書のみでトンネル内は軽量認証のため、一般にEAP-TLSの方が強固です。
6.3.4この節のまとめ
- RADIUSで認証を一元化し、802.1X(サプリカント/オーセンティケータ/認証サーバ)でポート単位に認証する
- EAP-TLS=双方向証明書認証(最強固)、PEAP=サーバ証明書のみ+軽量認証(運用コスト低)
- 公開鍵暗号で鍵配送問題を解決しつつハイブリッド暗号で速度を確保、デジタル署名は改ざん検知と真正性を同時に証明
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 会社支給の管理端末に限り、情報システム部門が証明書を一括配布・管理できる環境で、有線LAN接続時に最も強固な認証を実現したい。最も適した方式はどれか。
Q2. BYOD端末や来客の一時アクセス向けに、証明書を個々に配布する運用負荷を避けつつ、既存のユーザー名・パスワード基盤を活用して認証したい。最も適した方式はどれか。
Q3. 受信したファイルが送信元から改ざんされずに届いたこと、および送信者本人からのものであることを同時に確認したい。最も適した仕組みはどれか。

