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第3章 · 監査の実施と技法·v1.0.0·更新 2026/7/16·読了目安 約14分

変更要約: 初版

3.4監査調書の作成・査閲・保管

この節の要点

監査の実施記録であり結論の根拠を裏づける監査調書が備えるべき要件(実施した手続・入手した証拠・到達した結論を第三者が追跡・再現できること)、上位者による査閲(レビュー)が監査の品質を担保する仕組み、そして一定期間の保管と機密保持の必要性を、調書が監査の証拠力そのものを左右するという観点から学びます。

監査の結論は、それを裏づける記録がなければ「言った者勝ち」になってしまいます。監査調書(作業調書)は、監査人がどの手続を実施し、どの証拠を入手し、どのように結論へ至ったかを記録した文書であり、監査の証拠力そのものを支える基盤です。この節では、調書がなぜ第三者に追跡・再現できる形で作られねばならないか、上位者による査閲がどう品質を担保するか、そして保管・機密保持がなぜ必要かを、実務の判断とともに学びます。

3.4.1監査調書の要件

  • 監査調書は、実施した監査手続・入手した監査証拠・到達した結論を記録し、その監査に関与していない第三者(別の監査人や査閲者)が内容を追跡し、同じ結論に再現的に到達できる程度に、十分かつ明瞭に文書化されていなければならない。
  • 調書には結論だけでなく結論に至った根拠(どの証拠が結論をどう支えるか)を残す。指摘事項は、事実・条件・影響(リスク)・原因・改善勧告といった要素が後から確認できるように記録する。調書の品質が低いと、報告書の指摘の証拠力が揺らぐ。

3.4.2査閲と保管

  • 査閲(レビュー)=監査調書を、作成した監査人とは別の上位者・監査責任者が点検し、手続の妥当性・証拠の十分性・結論の論理的整合を確かめる品質管理の仕組み。査閲を経ることで、個々の監査人の判断の偏りや証拠不足を組織的に是正でき、監査全体の品質と客観性が担保される。
  • 保管=監査調書は監査の証拠として、また将来のフォローアップや再監査、外部からの説明要求に備えて一定期間、適切に保管する。同時に、被監査部門の機密情報を含むため、アクセス制限・機密保持の管理が必須。廃棄も定められた保存期間と手続に従う。
試験ポイント

「監査調書は第三者が追跡・再現できるよう手続・証拠・結論を十分明瞭に記録する」「査閲は作成者と別の上位者が点検し証拠の十分性・結論の整合を確かめる品質管理」「調書は一定期間保管し機密保持・アクセス制限を要する」が最頻出です。調書は結論だけでなく結論に至った根拠を残す点、査閲は自己点検ではなく別の上位者が行う点を押さえること。

ある監査チームのメンバーが、アクセス管理統制の監査を担当し、「特権IDの棚卸しが四半期ごとに実施されていない」という指摘事項を報告書案に記載しました。監査責任者がこの調書を査閲したところ、調書には「棚卸しが実施されていなかった」という結論だけが書かれ、その結論を支える証拠(どの期間の何を確認し、実施されていないと判断した根拠)が記録されていないことに気づきました。これでは、後日その監査に関与していない第三者(別の監査人や、被監査部門に反論された際の説明相手)が調書を見ても、指摘の事実を追跡・再現できず、指摘の証拠力が揺らぎます。そこで査閲者は、担当者に対し、確認した棚卸し記録の対象期間・実際に記録が欠落していた四半期・確認に用いた証拠(棚卸し実施記録の有無や責任者への確認結果)を調書に補記するよう指示します。これは、査閲が個々の監査人の証拠不足を組織的に是正し、監査の品質を担保する典型例です。さらにこの調書は、次年度に「棚卸しが是正されたか」を確かめるフォローアップの出発点にもなるため、特権IDという機密性の高い情報を含むことに留意し、アクセス制限のうえ一定期間適切に保管します。調書は結論だけでなく結論に至った根拠を第三者が追跡できる形で残し、査閲を経て品質を担保する——これが調書の証拠力を確保する正しい実務です。監査人が自分の調書を自分だけで確認して完成とするのは、査閲による客観性の担保を欠く誤りです。

注意

ひっかけ: 「監査調書には最終的な結論だけを簡潔に書けば足り、結論に至った証拠や手続は記録しなくてよい」は誤りです——調書は第三者が追跡・再現できるよう、実施した手続と結論を支える証拠を残さねばならず、それを欠くと指摘の証拠力が失われます。また「調書の査閲は作成した監査人が自ら見直せば十分である」も誤り=査閲は作成者とは別の上位者・監査責任者が行ってこそ、判断の偏りを是正し客観性を担保できます

調書の一生の図。
結論の根拠を記録に残す

3.4.3この節のまとめ

  • 監査調書は、実施した手続・入手した証拠・結論を第三者が追跡・再現できるよう十分明瞭に記録し、結論に至った根拠を残す
  • 査閲(レビュー)は作成者と別の上位者が手続の妥当性・証拠の十分性・結論の整合を点検する品質管理であり、自己点検では代替できない
  • 調書は将来のフォローアップや再監査に備え、機密保持とアクセス制限のうえ一定期間適切に保管する

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 監査責任者が調書を査閲したところ、「特権IDの棚卸しが未実施」という結論だけが記載され、確認した期間や判断の根拠となった証拠が記録されていなかった。査閲者が取るべき最も適切な対応はどれか。

Q2. 監査調書の査閲(レビュー)の目的として、最も適切なものはどれか。

Q3. 完了した監査の監査調書の取扱いに関する記述として、最も適切なものはどれか。

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