変更要約: 初版(第5章・s1-s3)
5.1プロジェクトマネジメント
PMBOKの知識体系を土台に、スコープ管理のWBS、スケジュール管理のアローダイアグラム・PERT・クリティカルパス(最早/最遅開始日・日程計算)、コスト管理のEVM(PV/EV/AC・SV/CV・SPI/CPI・EAC)、そして品質・リスク・調達・ステークホルダの各管理領域をレベル3の計算問題として学びます。
プロジェクトマネジメントは「計画通りに終わらせる」ための定量管理技術です。応用情報の午前では、アローダイアグラムの日程計算(クリティカルパス・最早/最遅開始日)とEVMのコスト・進捗指標計算が繰り返し出題される計算領域であり、公式を機械的に当てはめるだけでなく、なぜその式になるかを理解して初めて応用が利く問題(数値を変えた出題)にも対応できます。
5.1.1PMBOKとWBS
- PMBOK(Project Management Body of Knowledge)=プロジェクトマネジメントの知識を体系化した国際的な標準ガイド。スコープ・スケジュール・コスト・品質・リスク・調達・ステークホルダなど複数の知識エリアで構成されます。
- WBS(Work Breakdown Structure・作業分解構成図)=プロジェクトの成果物・作業を階層的に細分化し、管理可能な単位(ワークパッケージ)まで分解する技法。スコープを漏れなく洗い出し、見積り・進捗管理・要員割当の基礎にします。分解の粒度が粗すぎると見積り誤差が大きく、細かすぎると管理コストが増えるため、適切な階層で止めることが実務上の判断になります。
5.1.2アローダイアグラム・PERT・クリティカルパスの日程計算
- アローダイアグラム=作業(アクティビティ)を矢印、結合点(イベント/ノード)を丸で表し、作業の前後関係と所要日数をネットワーク図として可視化する技法。PERTはこの図を用いてプロジェクト全体の日程を分析・管理する技法の総称です。
- 最早開始日(ES)=その作業に着手できる最も早い時点。開始ノードから前進計算(フォワードパス)し、複数の経路が合流するノードでは合流する各経路のうち最大値を採用します(1つでも未完了の作業があれば後続に着手できないため)。最遅開始日(LS)=プロジェクト全体の完了日を遅らせずに着手を遅らせられる最も遅い時点。終了ノードから後退計算(バックワードパス)し、分岐するノードでは分岐先の各経路のうち最小値を採用します。
- クリティカルパス=開始から終了までの全経路のうち所要日数の合計が最も長い経路(=ES=LSとなる、余裕がゼロの経路)。この経路上の作業が1日遅れればプロジェクト全体の完了も同じ日数だけ遅れます。クリティカルパス上にない作業にはフロート(余裕)があり、フロートの範囲内の遅延は全体日程に影響しません。フロート=その経路の最長日数(クリティカルパスの日数)-その経路自身の所要日数の合計で求めます。
「クリティカルパス=全経路中で所要日数が最長の経路(フロート0)」「最早開始日は合流点で最大値、最遅開始日は分岐点で最小値を採る」「フロート=クリティカルパス日数-その経路の合計日数」が最頻出です。一部の経路だけを見て最長経路を誤認する(全経路を計算し尽くさない)ミスと、合流点で最大値を取るべきところを最小値で計算してしまう(逆にする)ミスが典型的な失点パターンです。
5.1.3EVMによるコスト・進捗管理
- EVM(Earned Value Management)=進捗とコストを金額換算した共通指標で統合的に管理する手法。PV(Planned Value・計画価値)=計画時点で完了しているはずの作業の予算額。EV(Earned Value・出来高)=実際に完了した作業の予算額(進捗実績を金額で表す)。AC(Actual Cost・実コスト)=実際に投じたコストの実績額。BAC(Budget At Completion・完成時総予算)=プロジェクト全体の当初予算。
- 差異指標=SV(スケジュール差異)= EV − PV(マイナスなら計画より遅れ)。CV(コスト差異)= EV − AC(マイナスなら予算超過)。指数(比率)指標=SPI(スケジュール効率指数)= EV ÷ PV(1未満なら遅れ)。CPI(コスト効率指数)= EV ÷ AC(1未満なら予算超過)。差異は金額、指数は比率で進捗の良し悪しを表すという違いを区別します。
- EAC(Estimate At Completion・完成時総コスト見積り)=現在のコスト効率(CPI)が今後も続くと仮定した場合の、プロジェクト完了までの総コスト見積り。最も基本的な式は EAC = BAC ÷ CPI(CPIが1未満=コスト超過傾向なら、EACはBACより大きくなる)。CPIが悪化するほどEACは当初予算から乖離し、追加予算の要否を判断する材料になります。
ある基幹システム再構築プロジェクトを例に、日程とコストの計算を具体的に追ってみます。まずアローダイアグラムを描くと、開始から終了まで3つの経路があるとします。経路A「要件定義(4日)→開発(12日)→テスト(6日)」は合計22日、経路B「環境構築(5日)→データ移行準備(9日)」は合計14日、経路C「調達手続き(3日)→機器搬入(8日)→受入検査(2日)」は合計13日です。3経路すべてを計算し尽くした上で最長の22日の経路Aがクリティカルパスと判定されます。経路Bのフロートは22−14=8日、経路Cのフロートは22−13=9日で、これらの経路は多少遅延してもプロジェクト全体の完了には影響しません。次にコスト面では、プロジェクト開始からある時点で、計画では500万円分の作業が完了している予定(PV=500万円)だったとします。実際にはこの時点で400万円分の作業しか完了しておらず(EV=400万円)、そこまでに500万円のコストを投じていた(AC=500万円)とすると、SV=EV−PV=400−500=−100万円(計画より遅れ)、CV=EV−AC=400−500=−100万円(予算超過)、SPI=EV÷PV=400÷500=0.8(計画の8割しか進捗していない)、CPI=EV÷AC=400÷500=0.8(投じたコストの8割分しか出来高が得られていない)と算出できます。プロジェクト全体の当初予算(BAC=1,000万円)が変わらず、このままのコスト効率(CPI=0.8)が続くと仮定すると、EAC=BAC÷CPI=1,000÷0.8=1,250万円となり、当初予算より250万円多くかかる見込みだとわかります。この数値をもとに、リスク管理では「このまま推移すると予算超過が拡大する」というリスクを早期に特定し、要員追加やスコープ調整といった対応策をステークホルダと調整するという管理サイクルが回ります。
| 指標 | 計算式 | 本文の例での値 |
|---|---|---|
| PV(計画価値) | (計画から算出) | 500万円 |
| EV(出来高) | (実績から算出) | 400万円 |
| AC(実コスト) | (実績から算出) | 500万円 |
| SV(スケジュール差異) | EV − PV | −100万円 |
| CV(コスト差異) | EV − AC | −100万円 |
| SPI(進捗効率指数) | EV ÷ PV | 0.8 |
| CPI(コスト効率指数) | EV ÷ AC | 0.8 |
| EAC(完成時総コスト見積り) | BAC ÷ CPI | 1,250万円(BAC=1,000万円のとき) |
ひっかけ: 「CV=AC−EV(実コストから出来高を引く)」は誤りです。正しくはCV=EV−ACで、出来高(EV)を基準に実コスト(AC)との差を見ます。符号が逆になるとマイナス/プラスの意味(超過/余裕)も逆転します。また「アローダイアグラムの合流点では最早開始日として各経路のうち最小値を採る」も誤り=合流点では最大値を採ります(先行作業がすべて終わらないと後続に着手できないため)。さらに「EACはBACにCPIを掛けて求める(EAC=BAC×CPI)」も誤り=正しくはEAC=BAC÷CPIで、CPIが1未満(コスト超過)ならEACはBACより大きくなります。
5.1.4品質・リスク・調達・ステークホルダ管理
- 品質管理=成果物が要求水準を満たすかを計画・保証・統制する活動。リスク管理=発生しうる問題を事前に特定し、発生確率と影響度に応じて回避・軽減・転嫁・受容などの対応策を準備する活動。調達管理=外部から購入・委託する範囲を決め、契約・発注・検収を管理する活動。ステークホルダ管理=プロジェクトに利害関係を持つ関係者を識別し、期待値や関与度を調整する活動。
5.1.5この節のまとめ
- クリティカルパス=全経路中で所要日数が最長(フロート0)の経路。最早開始日は合流点で最大値、最遅開始日は分岐点で最小値を採る。フロート=クリティカルパス日数−その経路の合計日数
- EVM=SV=EV−PV/CV=EV−AC(マイナスは遅れ/超過)、SPI=EV÷PV/CPI=EV÷AC(1未満は遅れ/超過)、EAC=BAC÷CPI(CPI悪化でEACはBACより増加)
- WBSはスコープを階層的に漏れなく洗い出す技法。品質・リスク・調達・ステークホルダもPMBOKの主要な知識エリア(リスク対応は回避・軽減・転嫁・受容)
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. あるプロジェクトのアローダイアグラムに、開始から終了までの経路が「経路X:設計(6日)→実装(10日)→テスト(4日)」(合計20日)と「経路Y:調達(5日)→設置(7日)」(合計12日)の2つある。クリティカルパスの所要日数と、経路Yのフロートの組み合わせとして正しいものはどれか。
Q2. あるプロジェクトの計測時点で、PV=600万円、EV=480万円、AC=600万円であった。このときのCPI(コスト効率指数)として正しいものはどれか。
Q3. あるプロジェクトの完成時総予算(BAC)は2,000万円である。現時点のCPIが0.8で、今後もこのコスト効率が続くと仮定する場合、EAC(完成時総コスト見積り)として正しいものはどれか。

