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第5章 · マネジメント系·v1.0.0·更新 2026/7/9·読了目安 約17分

変更要約: 初版(第5章・s1-s3)

5.2サービスマネジメント

この節の要点

ITILのサービスライフサイクル/バリューシステムを土台に、SLA/SLMインシデント管理問題管理変更管理構成管理キャパシティ管理可用性管理(稼働率の計算=MTBF/MTTR)、サービスデスク、ファシリティ管理(UPS/データセンター)をレベル3の計算・判断問題として学びます。

システムは作って終わりではなく、継続的に価値を提供し続ける運用があって初めて意味を持ちます。ITILが整理するサービスマネジメントの実践のうち、応用情報ではインシデント/問題/変更管理の違いの判別と、稼働率(MTBF/MTTRからの計算、直列/並列構成の合成)が繰り返し出題される重要領域です。

5.2.1ITILとSLA/SLM

  • ITIL(Information Technology Infrastructure Library)=ITサービスマネジメントのベストプラクティス集で、事実上の国際標準。サービスライフサイクル(戦略→設計→移行→運用→継続的改善)または近年のサービスバリューシステムの考え方で、サービスの企画から改善までを継続的なサイクルとして扱います。
  • SLA(Service Level Agreement・サービスレベル合意書)=提供者と利用者の間でサービス品質の目標値(稼働率・応答時間・障害復旧時間など)を明文化した合意。SLM(Service Level Management)=SLAで定めた目標を継続的に監視・報告・改善する管理プロセス。SLAは「約束の中身」、SLMは「約束を守り続ける仕組み」という違いを区別します。

5.2.2インシデント・問題・変更・構成管理

  • インシデント管理=発生した障害・サービス中断をできるだけ早くサービスを復旧させることを目的とするプロセス(根本原因の解明は目的にしない・応急対応優先)。問題管理=インシデントの根本原因を特定し、再発を防止することを目的とするプロセス。「インシデント管理=止血、問題管理=原因治療」という役割分担で理解します。
  • 変更管理=インフラ・サービスへの変更を評価・承認・計画・レビューする統制されたプロセスで、無秩序な変更による新たな障害を防ぎます。構成管理=IT資産(ハードウェア・ソフトウェア・ドキュメント等)の構成情報を正確に維持するプロセスで、CMDB(構成管理データベース)にIT資産間の関係を記録し、インシデント対応や変更の影響範囲分析の基礎情報にします。
試験ポイント

「インシデント管理=迅速な復旧優先/問題管理=根本原因の特定と再発防止」「変更管理=変更の評価・承認・統制」「構成管理=CMDBによるIT資産の構成情報の正確な維持」が最頻出です。インシデント管理と問題管理の目的(復旧優先か原因究明か)を入れ替える誤答パターンが典型的です。

5.2.3キャパシティ管理・可用性管理と稼働率の計算

  • キャパシティ管理=現在と将来の業務需要に見合った処理能力(CPU・ストレージ・回線帯域等)を過不足なく確保するプロセス。過剰投資(コスト増)と能力不足(性能劣化)の両方を避けるバランスが目的です。可用性管理=サービスが要求された稼働率を満たし続けることを管理するプロセスで、MTBF(平均故障間隔)MTTR(平均修理時間)を用いて定量化します。
  • 稼働率稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)(システムが正常に稼働している時間の割合)。直列構成(すべての機器が正常でないと全体が稼働しない構成)の全体稼働率=各機器の稼働率の積並列構成(冗長構成)(いずれか1台が正常なら全体が稼働する構成)の全体稼働率=1 −(各機器の非稼働率の積)。並列化は非稼働率(故障している確率)を掛け合わせて小さくする、という発想の違いを理解します。

ある基幹サーバの運用データを例に、可用性の計算を追ってみます。過去の稼働実績から、このサーバのMTBF(平均故障間隔)=270時間MTTR(平均修理時間)=30時間だったとします。稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)=270÷(270+30)=270÷300=0.9(90%)と計算できます。この単体サーバを2台、直列(どちらか一方でも故障すればサービス全体が止まる構成、例えば異なる役割の機器を経由する構成)で運用した場合、稼働率0.95のロードバランサと0.98のアプリケーションサーバを直列に接続すると、全体の稼働率は各稼働率の積=0.95×0.98=0.931(93.1%)に低下します。直列構成は経由する機器が増えるほど全体の稼働率が下がる、という性質を押さえておく必要があります。一方、稼働率0.9のサーバ1台では心もとないと判断し、稼働率0.8のサーバをもう1台並列(冗長)構成で追加した場合を考えます。並列構成では、両方とも同時に故障しない限りサービスは継続するため、全体の稼働率=1−(各非稼働率の積)で求めます。1台目の非稼働率=1−0.9=0.1、2台目の非稼働率=1−0.8=0.2なので、全体の稼働率=1−(0.1×0.2)=1−0.02=0.98(98%)となり、単体(0.9)よりも大幅に向上します。このように、直列は稼働率を掛け合わせるほど下がり、並列は非稼働率を掛け合わせるほど(=故障確率が小さくなるほど)上がるという対照的な性質を理解しておくことが、可用性管理の計算問題を確実に解く鍵になります。

構成全体稼働率の式本文の例での値
単体MTBF ÷ (MTBF + MTTR)270÷300=0.9
直列(2台:0.95・0.98)各稼働率の積0.95×0.98=0.931
並列(2台:0.9・0.8)1 −(各非稼働率の積)1−(0.1×0.2)=0.98
注意

ひっかけ: 「稼働率=MTTR÷(MTBF+MTTR)」は誤りです。正しくは分子はMTBF(正常に稼働している時間の割合を求めるため)であり、MTTRを分子にすると非稼働率になってしまいます。また「並列(冗長)構成の全体稼働率は各稼働率の単純平均で求める」も誤り=正しくは1−(各非稼働率の積)で、平均ではありません。さらに「直列構成にすると機器を増やすほど全体の稼働率が上がる」も誤り=直列は各稼働率の積のため、機器が増えるほど(1未満の値を掛け合わせるほど)全体の稼働率は下がります(稼働率が上がるのは並列構成)。

5.2.4サービスデスクとファシリティ管理

  • サービスデスク=利用者からの問い合わせ・障害報告を受け付ける単一の窓口(シングルポイントオブコンタクト)。一次対応で解決できない案件はインシデント管理・問題管理の適切な担当へエスカレーションします。ファシリティ管理UPS(無停電電源装置)による瞬断・停電対策、データセンターの空調・耐震・入退室管理など、物理的な設備面から可用性を支える管理領域です。UPSは長時間の停電継続には対応できず、あくまで自家発電への切替えや安全な停止までの橋渡しが役割です。
ITIL・SLA/SLM・キャパシティ/可用性の図。
ITサービスの運用管理

5.2.5この節のまとめ

  • インシデント管理=迅速な復旧優先。問題管理=根本原因の特定と再発防止。変更管理=評価・承認・統制。構成管理=CMDBでIT資産の構成を正確に維持
  • 稼働率=MTBF÷(MTBF+MTTR)直列=各稼働率の積(機器が増えるほど低下)並列=1−(各非稼働率の積)(機器が増えるほど向上)
  • SLA(品質目標の合意)とSLM(目標の継続的監視・改善)を区別。UPSは瞬断・停電時の橋渡し(自家発電切替/安全停止まで)が役割

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. あるシステムで障害が発生した。利用者への影響を最小化するため、まずサービスを迅速に復旧させることを最優先し、根本原因の分析は復旧後に別途行う方針とした。この初動対応が該当するプロセスはどれか。

Q2. あるサーバのMTBF(平均故障間隔)が380時間、MTTR(平均修理時間)が20時間であった。このサーバの稼働率として正しいものはどれか。

Q3. 稼働率0.9のサーバAと稼働率0.7のサーバBを、どちらか一方が正常であればサービスを継続できる並列(冗長)構成で運用する。このときの全体の稼働率として正しいものはどれか。

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