Instiq
第1章 · 経営戦略マネジメント·v1.0.0·更新 2026/7/17·読了目安 約15分

変更要約: 初版

1.2事業ポートフォリオと成長戦略

この節の要点

複数事業への資源配分を市場成長率×相対シェアで判断するPPM(BCGマトリクス)(花形/金のなる木/問題児/負け犬)、製品×市場で成長方向を選ぶアンゾフの成長マトリクスM&A・アライアンスコアコンピタンス多角化を、「限られた資金をどの事業へ配分するか」という判断力として学びます。

複数の事業を抱える企業では、「どの事業に資金を投じ、どの事業から資金を回収し、どの事業から撤退するか」という全社レベルの資源配分の判断が経営の要になります。ITストラテジストは、個別事業の効率化だけでなく、事業ポートフォリオ全体を俯瞰し、IT投資を含む経営資源をどこに集中すべきかを経営者に提案します。本節では、PPM(BCGマトリクス)で事業のポジションと資金の流れを読み、アンゾフの成長マトリクスで成長の方向を選び、M&A・アライアンスコアコンピタンスへの集中・多角化の是非を、「限られた資金と時間をどう割り振るか」という判断として学びます。

1.2.1PPM(BCGマトリクス)と資源配分

  • PPM市場成長率(縦軸)×相対的市場シェア(横軸)の2軸で各事業を4象限に分類する。花形(高成長・高シェア=成長維持のため投資を継続)、金のなる木(低成長・高シェア=多くの資金を生む資金源)、問題児(高成長・低シェア=花形化への選択投資か撤退か)、負け犬(低成長・低シェア=撤退・縮小の検討)。
  • 資金の流れの基本は、金のなる木が生み出す資金を問題児花形に配分し、将来の収益源を育てること。問題児は放置しても勝てず、勝ち筋があるなら資金を集中して花形へ、見込みがなければ資源が固定化する前に撤退する、という判断が要る。負け犬は原則として撤退・縮小の対象。

1.2.2アンゾフの成長マトリクスと成長手段

  • アンゾフの成長マトリクス製品(既存/新規)×市場(既存/新規)で成長の方向を4つに整理する。市場浸透(既存製品×既存市場でシェア拡大)、新市場開拓(既存製品を新しい市場・地域・顧客層へ)、新製品開発(既存市場に新製品を投入)、多角化(新製品×新市場=最もリスクが高い)。
  • 成長手段の選択では、自社のコアコンピタンス(他社が真似できない中核的な能力)を軸に、内製で強化するのか、M&A(買収・合併)で時間を買うのか、アライアンス(提携)で相互補完するのかを判断する。関連性の低い事業への無限定な多角化はシナジーが乏しく経営資源を分散させるため、コアを軸にした選択と集中が基本。
試験ポイント

「PPM=市場成長率×相対シェア(花形/金のなる木/問題児/負け犬)」「金のなる木の資金を問題児・花形へ配分」「問題児は花形化への選択投資か撤退か」「アンゾフ=製品×市場で成長方向(多角化が最リスク)」が最頻出です。事業のポジションから資金配分(投資/回収/撤退)を判断できるように練習しましょう。

あなたは複数事業を持つ企業のITストラテジストで、事業ポートフォリオの見直しを支援しています。ある新規クラウドサービス事業は、市場は年20%超で急成長しているが、自社のシェアはまだ小さく赤字——PPMでいう典型的な問題児です。経営会議では「赤字だから早く撤退すべきだ」という声と「成長市場だから放っておいても伸びる」という声に割れました。しかしどちらも短絡的です。問題児は放置すれば市場が成熟したとき低シェアのまま負け犬に転落しますし、逆に勝ち筋がないのに漫然と投資を続ければ資金を垂れ流すだけです。ここで判断の軸になるのは、「この事業に、金のなる木が生む資金を集中投資して花形(高成長・高シェア)へ押し上げる現実的な勝ち筋があるか」です。自社のコアコンピタンス(既存事業で培った顧客基盤・技術)を活かせて、投資すればシェアトップ級を狙えるなら、金のなる木の資金を思い切って集中配分し花形化を狙うのが合理的な判断です。一方、すでに強力な先行者がおり、追加投資してもシェア逆転の見込みが薄いなら、資源が固定化する前に早期に撤退・縮小し、その資金を勝てる問題児や花形に回すべきです。「赤字か黒字か」という単年度の損益だけで判断せず、市場成長率と自社シェア、そして資金の出し手(金のなる木)との全体最適で配分を決める——これが事業ポートフォリオ管理の判断の核心です。

象限特徴(成長率×シェア)資金配分の基本判断
花形高成長・高シェア地位維持のため投資を継続(成熟後の金のなる木候補)
金のなる木低成長・高シェア多くの資金を生む資金源。問題児・花形へ配分
問題児高成長・低シェア勝ち筋があれば集中投資で花形化、なければ撤退
負け犬低成長・低シェア原則として撤退・縮小を検討
注意

ひっかけ: 「問題児は赤字なので、いかなる場合も直ちに撤退するのが正しい」は誤りです——問題児は高成長市場に位置し、勝ち筋があれば金のなる木の資金を集中投資して花形へ育てる選択肢があり、一律の即時撤退は将来の収益源を捨てることになります(即時撤退が原則なのは負け犬)。また「金のなる木は高シェアだからさらに大きく投資して伸ばすべきだ」も誤り=金のなる木は低成長市場で追加投資の効率が低く、生んだ資金を問題児・花形へ回すのが基本です。

PPMの4象限と資金の流れの図。
資金の流れで事業を育てる

1.2.3この節のまとめ

  • PPMは市場成長率×相対シェアで事業を4象限に分け、金のなる木の資金を問題児・花形へ配分して収益源を育てる
  • 問題児は勝ち筋があれば集中投資で花形化、なければ早期撤退——単年度の赤字だけで判断しない
  • アンゾフは製品×市場で成長方向を選び(多角化が最リスク)、コアコンピタンスを軸にM&A・アライアンスを含めた選択と集中を判断する

進捗の記録にはログインが必要です。

理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 年20%超で急成長する市場に参入しているが自社シェアはまだ小さく赤字の新規事業(PPMの問題児)について、ITストラテジストが提案する資源配分の判断として最も適切なものはどれか。

Q2. 国内市場で確立した既存製品を、そのまま海外の新しい地域市場へ投入して成長を図りたい。アンゾフの成長マトリクスで、この成長戦略に該当するものはどれか。

Q3. 経営資源が限られる企業が、成長のために事業範囲をどう広げるか検討している。コアコンピタンスの考え方に基づく成長戦略の判断として最も適切なものはどれか。

理解度を確認第1章「経営戦略マネジメント」の問題を解く