変更要約: 初版
2.1SLA/OLA/UCとサービスレベル設計
サービス提供者と顧客が合意するSLA、社内の運用チーム間で結ぶOLA、外部供給者との契約であるUCの三層構造と、SLMがこれらをどう維持・改善するか、そして可用性・コスト・実現可能性のトレードオフの中でサービスレベル目標をどう設計するかを学びます。
サービスマネージャにとって、顧客に約束するサービスレベルは「高ければ高いほどよい」ものではありません。可用性目標を1桁上げるだけで冗長構成や監視・保守の体制コストが跳ね上がり、実現できない目標を掲げれば恒常的なSLA違反を招きます。この節では、顧客との合意であるSLA、それを裏で支える社内のOLA、外部供給者とのUCという三層構造を土台に、SLM(サービスレベル管理)がこれらをどう整合させ、コストと実現可能性の制約下でサービスレベル目標をどう設計・維持するかを学びます。
2.1.1SLA・OLA・UCの三層構造
- SLA(Service Level Agreement)=サービス提供者と顧客の間で合意する、提供するサービスの品質水準(可用性・応答時間・対応時間など)を定めた文書。顧客が実際に体感するサービスレベルを規定する対外的な約束であり、SLAの各目標は、後述のOLA・UCによって内部的に裏付けられていなければ守れない。
- OLA(Operational Level Agreement)=同一組織内の運用チーム間で結ぶ内部的な合意。例えばサービスデスクとサーバ運用チーム、ネットワーク運用チームの間で「一次切り分けは何分以内」「復旧作業は何時間以内」といった内部の役割・応答目標を取り決める。OLAはSLAを社内で実現するための裏付けであり、顧客とは結ばない。
- UC(Underpinning Contract/基盤契約)=外部の供給者(ベンダ・回線事業者・クラウド事業者など)と結ぶ契約。SLAの目標を守るために外部委託している部分(保守対応時間、回線の可用性など)を契約として担保する。UCの水準がSLAの目標を下回っていると、外部要因でSLAが守れなくなる。
2.1.2SLMによる維持と改善
- SLM(サービスレベル管理)=SLAを合意・監視・レビューし、達成状況を報告して継続的に維持・改善するプロセス。SLMは実績を定期的に測定し、SLAの各目標が守られているか、OLA・UCが目標を裏付けられているかを点検して、乖離があれば是正やSLAの見直しを行う。
- SLMの要は「顧客と合意した目標」と「それを裏付ける内部・外部の合意(OLA・UC)」の整合を保つこと。SLAの目標を引き上げるなら、対応するOLAの応答目標やUCの保守水準も同時に引き上げなければ、対外的な約束だけが先行して守れなくなる。
「SLA=提供者⇔顧客」「OLA=社内の運用チーム間」「UC=外部供給者との契約」の三者の区別が最頻出です。「OLAは顧客と結ぶ」「UCは社内の合意」といった取り違えが典型的な誤りなので、誰と誰の間の合意かを軸に整理しましょう。SLMがこの三層を整合させて維持・改善する点も押さえます。
あるサービスマネージャが、基幹業務システムの運用サービスについて、顧客から「月間の稼働率目標を99.5%から99.9%へ引き上げてほしい」という要望を受け、サービスレベル目標をどう再設計するか検討しています。月間の許容停止時間で見ると、99.5%は約3.6時間/月ですが、99.9%では約43分/月まで縮まり、要求される保守・復旧の速さが桁違いに厳しくなります。まずサービスマネージャは、この新目標をSLAとして顧客と安易に合意する前に、それを社内・社外で裏付けられるかを確認しなければなりません。社内については、障害検知から一次切り分け・復旧着手までの内部応答目標を定めたOLAを点検し、現状の「一次切り分け30分以内」という水準では99.9%の許容停止時間(約43分)を到底守れないため、監視の自動化や当番体制の増強によってOLAの応答目標そのものを短縮できるかを評価します。社外については、ハードウェア保守を委託しているベンダとのUCを確認し、現行契約が「翌営業日オンサイト保守」であれば、部品故障時の復旧に丸1日近くかかり得るため、このUCでは99.9%は物理的に達成不能だと判明します。したがって、UCを「4時間以内オンサイト」など上位の保守水準へ改定するか、あるいは冗長構成により単一部品故障でサービスを止めない設計へ切り替える必要があり、いずれもコストが大きく増加します。ここでサービスマネージャが下すべき判断は、「顧客の要望どおり99.9%を約束する」ことではなく、OLA・UCの裏付けとコスト増を顧客に提示したうえで、支払うコストに見合う目標水準を顧客と合意し直すことです。裏付けのないSLA目標を掲げれば恒常的なSLA違反を招くだけであり、SLMの役割はまさにこの三層の整合を保ちながら、実現可能で費用対効果に見合うサービスレベルへ調整することにあります。
| 区分 | 当事者 | 目的 |
|---|---|---|
| SLA | サービス提供者 ⇔ 顧客 | 顧客に提供するサービス品質水準の合意(対外的な約束) |
| OLA | 社内の運用チーム間 | SLAを社内で実現するための内部応答目標の取り決め |
| UC | サービス提供者 ⇔ 外部供給者 | SLAを外部委託部分で裏付ける契約 |
ひっかけ: 「顧客の要望どおりに高い可用性目標をそのままSLAへ合意すればよい」は誤りです——OLA・UCで内部・外部の裏付けが取れない目標を約束すると、恒常的なSLA違反を招くだけです。サービスレベル目標は、可用性・コスト・実現可能性のトレードオフを踏まえ、裏付けとコストを顧客に提示して合意し直すのが正しい判断です。また「OLAは顧客と結ぶ合意だ」も誤り=OLAはあくまで社内の運用チーム間の合意で、顧客と結ぶのはSLA、外部供給者と結ぶのはUCです。
2.1.3この節のまとめ
- SLA=提供者⇔顧客、OLA=社内の運用チーム間、UC=外部供給者との契約、という三層で誰と誰の合意かが決定的
- SLMはSLA/OLA/UCの整合を保ち、実績を測定・レビューして継続的に維持・改善する
- サービスレベル目標は可用性・コスト・実現可能性のトレードオフを踏まえ、裏付けのない高目標は約束しない
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 顧客が「基幹システムの月間稼働率を99.5%から99.9%へ引き上げてほしい」と要望した。サービスマネージャがこの新しいサービスレベル目標をSLAとして合意する前に、まず優先して行うべき判断はどれか。
Q2. サービス提供者が、SLAで約束した障害復旧時間を守るため、ハードウェア保守を委託している外部ベンダとの間で保守対応時間を契約として担保したい。この目的で結ぶべき合意はどれか。
Q3. サービスレベル管理(SLM)の役割として最も適切なものはどれか。

