第6章 · システム統合・移行・保守·v1.0.0·更新 2026/7/11·読了目安 約16分
変更要約: 初版
6.2移行方式と移行計画
この節の要点
旧新システムを一気に切り替える一斉移行(big-bang)、対象を分けて段階的に切り替える段階移行、旧新を一定期間並行稼働させる並行移行の得失、データの移行/変換/検証、本番切替前のリハーサルと失敗時の切り戻し、そして移行実施可否を判断するGo/No-go判断を学びます。
新システムへの移行は、機能開発と同じくらい移行そのものの設計が重要です。システムアーキテクトは、業務が許容できる停止時間・リスク許容度・予算という制約から移行方式(一斉/段階/並行)を選び、失敗時に安全に戻れる切り戻し手順まで含めて移行計画を立てることが求められます。移行方式の選定を誤ると、本番切替の失敗が事業に直接的な損害を与えることになります。
6.2.1一斉移行・段階移行・並行移行
- 一斉移行(big-bang)=ある期日に旧システムを停止し、新システムへ一気に切り替える方式。移行期間が短く済み、旧新を同時に維持するコスト・複雑さがない利点があるが、切替直後に問題が発覚すると業務全体が影響を受け、切り戻しの難度も高いハイリスク・ハイリターンな方式。
- 段階移行=対象(拠点・部門・機能単位等)を分割し、一部ずつ新システムへ切り替えていく方式。問題が起きても影響範囲を限定でき、初期の段階で得た教訓を後続の移行に反映できるためリスクは低いが、旧新両システムが混在する期間が長く、両者を接続する暫定的な連携(データ同期等)の構築・保守コストがかかる。
- 並行移行=旧新システムを一定期間、同時に本稼働させ、両者の出力を突き合わせて新システムの正しさを検証してから旧システムを停止する方式。最も安全でリスクが低いが、同じ処理を二重に運用するコスト(人手・インフラ)が最大になる。金融・会計など誤りが許容できない基幹系でよく採られる。
6.2.2データ移行・リハーサル・切り戻し・Go/No-go
- データ移行は抽出→変換(旧新のデータ形式・コード体系の差異を吸収)→新システムへの投入→件数/整合性の検証という手順で進める。特に変換ロジックの誤りは移行後に業務データの不整合として顕在化しやすいため、本番データに近いテストデータでの事前検証が欠かせない。
- リハーサル=本番切替と同じ手順・同じ規模のデータで事前に移行作業そのものを試行し、所要時間の見積りや手順の不備を洗い出す活動。切り戻し(ロールバック)=移行後に致命的な問題が発覚した場合に旧システムへ安全に戻す手順で、切り戻し可能な時間的猶予(判断のタイムリミット)をあらかじめ決めておくことが重要(新システムでのデータ更新が進みすぎると切り戻しが困難になるため)。
- Go/No-go判断=リハーサル結果・データ検証結果・関係部門の準備状況等を踏まえ、予定通り本番切替を実施するか延期するかを移行直前に最終判断する活動。判断基準(何が満たされればGoか)を事前に明文化しておくことで、当日の場当たり的な判断を避けられる。

