第5章 · プラットフォームとクラウド·v1.0.0·更新 2026/7/11·読了目安 約16分
変更要約: 初版
5.2クラウドサービスモデルと移行
この節の要点
利用者とクラウド事業者の責任分界が異なるIaaS/PaaS/SaaSの使い分け、パブリック/プライベート/ハイブリッドクラウドの選定、そして既存システムをクラウドへ移すリフト&シフトとリアーキテクトという移行戦略の判断を学びます。
クラウド活用を設計するシステムアーキテクトは、「どこまでを自社で管理し、どこからをクラウド事業者に委ねるか」という責任分界を明確にした上でサービスモデルを選び、既存システムをどう移行するかという移行戦略を、運用負荷・カスタマイズ要件・移行にかけられる時間とコストのトレードオフから判断する必要があります。この節ではその2つの判断軸を学びます。
5.2.1IaaS/PaaS/SaaSの責任分界
- IaaS(Infrastructure as a Service)=仮想サーバ・ストレージ・ネットワークといったインフラ層をサービスとして提供し、その上のOS・ミドルウェア・アプリケーションは利用者が管理する形態。事業者はハードウェアと仮想化基盤までの責任を負い、利用者はOSのパッチ適用・ミドルウェアの構成・アプリケーションの実装と運用まで自ら担う。既存のオンプレミス構成に近い形でOSレベルの自由な制御が必要な場合に適する。
- PaaS(Platform as a Service)=OS・ミドルウェア・実行環境まで事業者が管理し、利用者はアプリケーションのコードとデータに集中できる形態。OSパッチ適用やミドルウェアの構成管理を利用者が行わずに済むため運用負荷を大きく抑えられるが、事業者が定めるランタイムやフレームワークの制約内でしか構成できず、独自のOSレベル制御やミドルウェアの細かなカスタマイズはできない。
- SaaS(Software as a Service)=完成されたアプリケーション機能そのものを事業者が提供し、利用者は設定とデータ入力のみを担う形態(例:クラウド型グループウェア)。運用負荷は最小だが、業務要件に合わせた独自のロジック実装余地はほぼない。責任分界は「事業者がインフラからアプリケーションまで、利用者はデータと利用者アカウントの管理まで」という整理が基本。

