変更要約: 初版
1.1システム企画とエンタープライズアーキテクチャ
エンタープライズアーキテクチャ(EA)の4つの体系(BA(業務アーキテクチャ)・DA(データアーキテクチャ)・AA(アプリケーションアーキテクチャ)・TA(技術アーキテクチャ))と、経営戦略とシステム化構想を整合させ、現状(As-Is)と理想(To-Be)のギャップから投資対効果を踏まえた最適な企画判断を行う力を学びます。
システムアーキテクトの午前II専門では、「エンタープライズアーキテクチャとは何か」という定義暗記ではなく、経営戦略・業務要件と現行システムの制約の間で、どこにギャップがあり、どの体系(BA/DA/AA/TA)から手を付けるべきかを判断する力が問われます。システム企画の初期段階で業務そのものの見直し(BA)を飛ばしてアプリケーション刷新(AA)だけを進めると、旧来の非効率な業務プロセスをそのままシステム化してしまい、投資対効果が上がらないという事態を招きます。
1.1.1エンタープライズアーキテクチャの4体系
- エンタープライズアーキテクチャ(EA)=組織全体の業務とシステムを、経営戦略に整合させながら体系的に設計・管理するための枠組み。BA(Business Architecture・業務アーキテクチャ)=業務機能・業務プロセス・組織の設計。DA(Data Architecture・データアーキテクチャ)=業務で扱うデータの構造・流れ・所在の設計。
- AA(Application Architecture・アプリケーションアーキテクチャ)=業務を支えるアプリケーション機能の構成と相互関係の設計。TA(Technical Architecture・技術アーキテクチャ)=ハードウェア・ソフトウェア基盤・ネットワークなど技術基盤の設計。4体系はBA→DA→AA→TAの順に具体化される階層関係にあり、上位(BA)の見直しなしに下位(AA/TA)だけを刷新しても業務の非効率は解消しない。
1.1.2現状(As-Is)と理想(To-Be)のギャップ分析
- As-Is分析=現行の業務プロセス・システム構成・データ流通の実態を可視化すること。To-Beモデル=経営戦略・業務目標から導かれる、あるべき業務・システムの姿。ギャップ分析=As-IsとTo-Beの差分を洗い出し、その差分を埋める施策(業務改革・システム刷新の範囲)を特定する作業。
- 企画段階では、ギャップを埋める施策の投資対効果(ROI)を経営層に説明できることが求められる。効果が定量化しにくい施策(業務品質向上等)でも、KPIやコスト削減見込みなど測定可能な指標に落とし込んで優先順位付けするのがシステムアーキテクトの役割。
「EAはBA→DA→AA→TAの順に具体化される」「業務そのものの見直し(BA)を飛ばしたシステム刷新は投資対効果が上がりにくい」「ギャップ分析は測定可能な指標で優先順位付けする」が最頻出です。どの体系から着手すべきかを状況から逆算できるように練習しておきましょう。
あなたは中堅製造業のシステムアーキテクトで、経営層から「受注から出荷までのリードタイムを半減させたい」という経営戦略を受け、システム企画を任されたとします。現行の受注管理システムは老朽化しており、担当役員は「まず受注管理システムを最新のパッケージに刷新すれば速くなるはずだ」と考えています。ここで注意すべきなのは、リードタイムの長さの原因がシステムの遅さではなく、部門間で受注データを紙やメールで何度もやり取りする非効率な業務プロセス(承認の多重化・手作業の転記)そのものにある可能性です。この場合、AA(アプリケーションアーキテクチャ)だけを刷新しても、非効率な業務プロセスをそのまま新システムに移植するだけに終わり、リードタイム半減という経営目標は達成できません。適切な進め方は、まずBA(業務アーキテクチャ)の観点でAs-Is(現行の受注〜出荷プロセス)を可視化し、承認経路の重複や手作業のボトルネックを特定した上で、To-Be(あるべき業務プロセス)を設計し、そのTo-Beを実現するためにどのデータ(DA)をどう連携させ、どのアプリケーション機能(AA)が必要で、どの技術基盤(TA)を選ぶかを順に具体化することです。「システムを新しくすれば業務も速くなる」という短絡的な判断ではなく、経営目標達成のボトルネックが業務プロセスにあるのかシステムにあるのかを見極め、EAの上位体系から手を付けることが、システム企画の核心です。
| EA体系 | 設計対象 | 具体化の順序 |
|---|---|---|
| BA(業務アーキテクチャ) | 業務機能・業務プロセス・組織 | 最上位(最初に見直す) |
| DA(データアーキテクチャ) | データの構造・流れ・所在 | BAを受けて具体化 |
| AA(アプリケーションアーキテクチャ) | アプリケーション機能の構成 | DAを受けて具体化 |
| TA(技術アーキテクチャ) | ハード/ソフト基盤・ネットワーク | 最下位(最後に具体化) |
ひっかけ: 「業務プロセスの遅さが疑われる場面でも、まずシステム(AA/TA)を刷新すれば経営目標は達成できる」は誤りです——ボトルネックが業務プロセス(BA)にある場合、AA/TAだけの刷新は非効率な業務をそのまま移植するだけで投資対効果が上がりません。また「EAの4体系はどの順序で着手しても結果は同じ」も誤り=BA→DA→AA→TAの順に具体化する階層関係があり、上位を飛ばすと下位の設計の前提が崩れます。
1.1.3この節のまとめ
- EAはBA(業務)→DA(データ)→AA(アプリ)→TA(技術)の順に具体化される階層構造
- As-Is/To-Beギャップ分析でボトルネックの所在(業務かシステムか)を見極めてから施策を決める
- 企画は投資対効果(ROI)を測定可能な指標に落とし込み、EAの上位体系から着手する判断が核心
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 経営層から「受注から出荷までのリードタイムを半減させたい」という戦略を受けたが、担当役員は老朽化した受注管理システム(AA)の刷新だけを提案している。システムアーキテクトとして最初に確認すべきこととして最も適切なものはどれか。
Q2. エンタープライズアーキテクチャ(EA)の4体系(BA/DA/AA/TA)の関係についての記述として最も適切なものはどれか。
Q3. システム企画段階でのAs-Is/To-Beギャップ分析における投資対効果(ROI)の扱いとして最も適切なものはどれか。

