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第3章 · ネットワーク応用サービス·v1.0.0·更新 2026/7/10·読了目安 約14分

変更要約: 初版

3.2DHCPとアドレス配布

この節の要点

DHCPのDISCOVER/OFFER/REQUEST/ACKの4メッセージ交換、リースによるアドレスの一時貸与、複数セグメントで使うDHCPリレーエージェント、サーバ機器などに使う固定割当、そして複数セグメント環境でのDHCPスコープ設計を、実務での配布設計の判断とともに学びます。

DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)は、クライアントにIPアドレスを自動配布するプロトコルですが、ネットワークスペシャリストにとって本質的な問いは「1台のDHCPサーバで、複数のVLAN・複数のセグメントにどうアドレスを配るか」という設計判断です。ブロードキャストが届く範囲は原則1セグメント内に限られるため、複数セグメントにまたがる配布には工夫が必要になります。この節ではメッセージのやり取りの正確な理解から、実際の配布設計まで扱います。

3.2.1DHCPの4メッセージ(DORA)

  • DISCOVER=クライアントがDHCPサーバを探すために送るブロードキャストメッセージ(送信元不明のためIPアドレス未確定の状態で送信)。
  • OFFER=DISCOVERを受けたDHCPサーバが「このアドレスを貸せます」と提示するメッセージ(複数サーバがあれば複数のOFFERが返る場合がある)。
  • REQUEST=クライアントが提示されたOFFERの中から1つを選び「このアドレスをください」とブロードキャストで要求するメッセージ(他のサーバに「あなたのOFFERは使いません」と伝える意味も持つ)。
  • ACK=要求されたサーバがアドレス割当を確定させる応答メッセージ(サブネットマスク・デフォルトゲートウェイ・DNSサーバ等の設定情報もあわせて渡す)。この4段階を頭文字でDORAと呼ぶ。

3.2.2リースと固定割当

  • リース=DHCPで配布されたIPアドレスには有効期限(リース期間)があり、クライアントは期限の50%が経過した時点で最初の更新(REQUEST再送)を試みる。更新に失敗し続けリース期限が切れると、そのアドレスは他のクライアントに再配布可能になる。
  • 固定割当(DHCP予約)=クライアントのMACアドレスに対して常に同じIPアドレスを配布するよう設定する方式。サーバやネットワーク機器のように「常に同じIPであってほしい」機器に使い、静的設定の手間を省きつつ一元管理できる。

3.2.3DHCPリレーエージェントと複数セグメント配布

  • DHCPのDISCOVER/REQUESTはブロードキャストであり、原則ルータを越えて転送されない。よって複数セグメント(VLAN)を1台のDHCPサーバで配布したい場合、各セグメントのゲートウェイ(L3スイッチ・ルータ)にDHCPリレーエージェント機能を有効にする必要がある。
  • リレーエージェントはクライアントからのブロードキャストを受け取ると、それをユニキャストでDHCPサーバへ中継し、応答が来たら再びブロードキャスト(または該当クライアントへ)で返す。中継時にリレーエージェントは自身のIPアドレスをgiaddrフィールドに設定し、サーバはこれを見てどのセグメント用のスコープからアドレスを払い出すかを判断する。
試験ポイント

「DORA=DISCOVER→OFFER→REQUEST→ACK」「リース更新は期限の50%経過時点で試行」「ブロードキャストはルータを越えないためリレーエージェントで中継」が最頻出です。リレーエージェントがgiaddrにセグメントの情報を載せてサーバに伝える仕組みも押さえておきましょう。

あるオフィスビルに3つのフロア(それぞれ別VLAN・別セグメント)があり、1台のDHCPサーバを本社サーバルームに集約配置してビル全体のIPアドレスを一元管理したいとします。まず物理設計として、各フロアのL3スイッチ(各VLANのデフォルトゲートウェイ)にDHCPリレーエージェントを有効化し、DHCPサーバのIPアドレスを中継先として設定します。次にDHCPサーバ側では、フロアごとに異なるスコープ(例:1階=192.168.1.0/24、2階=192.168.2.0/24、3階=192.168.3.0/24)を作成し、リレーエージェントが中継時にセットするgiaddr(そのセグメントのゲートウェイIP)を見て、DHCPサーバが「どのスコープから払い出すべきか」を自動判断できるようにします。この設計では、各フロアのプリンタやNAS等は固定割当(MACアドレス紐付け)で常に同じIPを払い出すよう設定し、一般PCやスマートフォンには通常のリースで動的に配布します。さらに、フロアの利用者増加に備えてスコープには十分な予備アドレスを確保し、リース期間は「オフィスのPCは長め(例1週間)、来訪者用Wi-Fiは短め(例2時間)」のように用途に応じてリース期間を差別化することで、限られたアドレス空間を無駄なく再利用できます。このように複数セグメントのDHCP配布は、「リレーエージェントによる中継」と「セグメントごとのスコープ設計」の2つを組み合わせて実現します。

順序メッセージ送信元種別
1DISCOVERクライアントブロードキャスト
2OFFERDHCPサーバ(通常)ブロードキャストまたはユニキャスト
3REQUESTクライアントブロードキャスト
4ACKDHCPサーバ(通常)ブロードキャストまたはユニキャスト
注意

ひっかけ: 「DHCPのブロードキャストはルータを越えて自動的に転送される」は誤りです——ブロードキャストは原則同一セグメント内にとどまり、複数セグメントに配布するには各ゲートウェイでリレーエージェントを明示的に有効化する必要があります。また「リースが切れる直前まで更新を試みない」も誤り=リース期間の50%経過時点で最初の更新を試行します。

DHCP4メッセージ・リレーの図。
アドレスを自動配布

3.2.4この節のまとめ

  • DHCPはDISCOVER→OFFER→REQUEST→ACK(DORA)の4段階でアドレスを配布する
  • リースは期限の50%経過時点で更新を試行、サーバ/機器等の固定IPには固定割当を使う
  • ブロードキャストはセグメントを越えないため、複数セグメント配布にはDHCPリレーエージェントとセグメント別スコープ設計を組み合わせる

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理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 3つのVLANに分かれたオフィスで1台のDHCPサーバから全VLANへアドレスを配布したい。この要件を満たすために各VLANのL3スイッチに設定すべき機能はどれか。

Q2. 社内のファイルサーバに常に同じIPアドレスを割り当てたいが、IPアドレスの一元管理はDHCPサーバで続けたい。最も適した設定はどれか。

Q3. DHCPクライアントがリースしたIPアドレスの更新(リニューアル)を最初に試みるタイミングとして正しいものはどれか。

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