Instiq
第1章 · ネットワーククライアントの管理·v1.0.0·更新 2026/7/7·読了目安 約11分

変更要約: 初版(主題2.07・副主題2.07.1〜2.07.4に対応)

1.1DHCPサーバーの設定と管理

この節の要点

クライアントへ IP アドレスを自動配布する DHCP サーバーの設定・運用を学びます。dhcpd(ISC DHCP サーバー)と設定ファイル dhcpd.conf、貸与状態を記録する dhcpd.leases、動作確認に使う arpsyslogsystemd ジャーナル でのログ確認、IPv6 環境でルータ広告を配る radvdradvd.conf を押さえます。

クライアント PC 1台1台に手作業で IP アドレスを設定するのは非現実的です。DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバーを使えば、クライアントの起動時に IP アドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイ・DNS サーバーなどを自動配布できます。202試験ではネットワーククライアント管理の入口として、Linux の代表的な DHCP サーバー実装 dhcpd の設定と運用が問われます。

1.1.1dhcpd.conf によるDHCPサーバーの設定

  • dhcpd(ISC DHCP サーバー)は起動時に設定ファイル dhcpd.conf を読み込む。ここに配布対象のサブネットアドレス範囲(range)デフォルトゲートウェイDNS サーバーリース期間などを記述する。
  • サブネットごとに subnet ... netmask ... { range ...; option routers ...; option domain-name-servers ...; } のようにブロックを分けて記述し、複数セグメントへの配布を1つの dhcpd で扱える。
  • 特定クライアントに常に同じアドレスを渡したい場合は、MAC アドレスをキーにした固定割り当て(host ブロック)を dhcpd.conf に個別記述する。

1.1.2リース管理とログ、IPv6のradvd

  • 配布した IP アドレスの貸与状況(クライアントの MAC・貸与開始/満了時刻)は dhcpd.leases に記録される。トラブル時はここを見て誰にどの IP が渡っているかを確認する。
  • クライアントが実際にアドレスを取得できたかは、DHCP サーバー側またはクライアント側で arp を使い、IP アドレスと MAC アドレスの対応を確認して裏付けられる。
  • dhcpd の起動・リース発行・エラーは syslog/var/log/messages 等)や systemd ジャーナルjournalctl -u dhcpd)に記録される。設定ミスの切り分けはまずログから。
  • IPv6 環境でルータ情報(プレフィックス等)を広告するデーモンが radvd(Router Advertisement Daemon)。設定ファイル radvd.conf に配布するプレフィックスやインタフェースを記述する。
試験ポイント

「設定は dhcpd.conf・現在の貸与状況は dhcpd.leases」 の役割分担が最頻出です。「特定クライアントに固定 IP」と来たら dhcpd.conf の host ブロック(MAC 紐付け)、「今どの IP が誰に渡っているか調べたい」と来たら dhcpd.leases、「IPv6 でルータ情報を配りたい」と来たら radvd/radvd.conf を選びます。

実務のトラブルシュートの流れで整理しましょう。「新しいクライアントに IP が配布されない」という相談を受けたら、まず syslogjournalctl -u dhcpd で dhcpd 自体が正常起動しているか、設定ファイルの構文エラーが出ていないかを確認します。次に dhcpd.conf の該当サブネットの range が枯渇していないか、対象セグメントの subnet 定義が漏れていないかを見ます。dhcpd 自体は動いているのにクライアントだけ取得できない場合は、クライアント側で arp を叩いて自分に割り当てられた IP と MAC の対応を確認し、サーバー側の dhcpd.leases でその MAC のエントリの有無・満了時刻を突き合わせます。特定の会議室のプリンタなど「常に同じ IP を持たせたい」機器には、MAC アドレスを鍵にした固定割り当てを dhcpd.conf に追記し、dhcpd を再起動して反映します。IPv6 が絡む環境では、アドレス自動設定のためにルータ広告を出す radvd が別途必要で、radvd.conf にどのインタフェースへどのプレフィックスを流すかを定義します(DHCPv6 とは別の仕組みである点に注意)。

要素役割要点
dhcpd.confDHCP サーバーの設定subnet/range/固定割り当てを記述
dhcpd.leases現在の貸与状況MAC・IP・満了時刻を記録
arpIP-MAC対応の確認配布結果の裏付けに使う
radvd / radvd.confIPv6 ルータ広告DHCPv6 とは別のIPv6アドレス配布経路
注意

ひっかけ: 「特定クライアントを固定 IP にするには dhcpd.leases を編集する」は誤りです。dhcpd.leases現在の状態が自動記録されるファイルで、恒久的な設定を書く場所ではありません。固定割り当てはdhcpd.conf の host ブロックで行います。また「radvd は DHCP のログを出力する」も誤り=radvd は IPv6 ルータ広告の専用デーモンで dhcpd のログとは無関係です。

dhcpd.conf(設定)→dhcpd(配布)→dhcpd.leases(貸与記録)の流れと、IPv6のradvdを並べた図。
設定と現在状態は別ファイル

1.1.3この節のまとめ

  • 設定=dhcpd.conf(subnet/range/固定割り当て)/現在の貸与=dhcpd.leases。確認は arp・ログは syslog/journal
  • IPv6 のルータ広告は radvd/radvd.conf(DHCPv6 とは別経路)

進捗の記録にはログインが必要です。

理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 社内 LAN の DHCP サーバーで、特定の複合機(MAC アドレス既知)には常に同じ IP アドレスを配布したい。設定として適切なのはどれ?

Q2. DHCP サーバーが起動しているはずなのに、あるクライアントだけ IP アドレスを取得できないという報告を受けた。切り分けの初手として適切な組み合わせはどれ?

Q3. IPv6 のみで構成されたセグメントで、ルータのアドレス情報(プレフィックス等)をクライアントへ自動的に広告したい。使用するデーモンと設定ファイルの組み合わせで正しいのはどれ?

理解度を確認第1章「ネットワーククライアントの管理」の問題を解く