第6章 · IoT・機能安全・低消費電力·v1.0.0·更新 2026/7/10·読了目安 約16分
変更要約: 初版
6.1IoTと無線通信
この節の要点
至近距離の低消費電力接続を担うBLE(Bluetooth Low Energy)、家庭内LANのWi-Fiとメッシュ型のZigbee、広域を低消費電力で結ぶLPWA(LoRa・NB-IoT・920MHz帯)、クラウドに集約する前にセンサ近傍で処理するエッジコンピューティング、そして起動時の正当性を保証するセキュアブートと現地更新のOTA(Over-The-Air)を学びます。
IoT機器の無線方式選定は「とりあえずWi-Fiを使う」では済みません。通信距離・データ量・消費電力・設置コスト(配線の有無)という互いにトレードオフの関係にある要件から、組込み設計者が用途に応じて最適な無線規格を選び分けることが実務の核心です。加えて、ネットワークに接続する以上、起動時の改ざん検知やファームウェア更新の安全性という組込みセキュリティの設計判断も避けて通れません。
6.1.1近距離無線:BLE・Wi-Fi・Zigbee
- BLE(Bluetooth Low Energy)=数m〜数十mの至近距離を極めて低い消費電力で結ぶ規格。ウェアラブル機器やビーコンなど、コイン電池で年単位の駆動が求められる用途に向く一方、データレートは低くファイル転送のような大容量通信には不向き。
- Wi-Fi=数十m級の範囲で高速・大容量の通信ができる規格。既存の家庭内LAN・社内LANにそのまま接続できる利点があるが、消費電力が大きく、電池駆動のセンサ端末を年単位で運用する用途には不向き(常時給電の機器向き)。
- Zigbee=BLEと同程度の近距離・低消費電力規格だが、メッシュネットワークを組める点が特徴。各ノードが中継役を兼ねるため、単体の電波到達範囲を超えて多数のセンサノードを広いエリアに面的に展開でき、工場やビル内の多点センシングに向く。
6.1.2広域無線:LPWA(LoRa・NB-IoT・920MHz帯)
- LPWA(Low Power Wide Area)=数km〜数十kmという広域を、低消費電力・低データレートで結ぶ無線規格群の総称。ガスメータ・農地センサ・河川水位計など、広範囲に点在し配線もWi-Fiの中継も現実的でない設置場所での定期的な少量データ送信に向く。
- LoRa=自営網を構築できるLPWA方式。免許不要の920MHz帯(sub-GHz)を使い、事業者の通信網に依存せず自社でゲートウェイを設置・運用できる。初期投資は必要だが通信費(キャリア回線費用)を抑えられ、山間部や工場敷地など独自にゲートウェイを置ける環境に向く。
- NB-IoT=携帯電話キャリアのセルラー網(LTE系)を利用するLPWA方式。既存の基地局インフラにそのまま乗るため自前のゲートウェイ設置が不要で、広域に散在する設置点をすぐにカバーできる一方、キャリアの回線契約・通信費が継続的にかかる。

