変更要約: 初版
3.4ネットワーク(OSI/TCP-IP・IPアドレス/サブネット計算/CIDR・ルーティング・DNS/DHCP・通信速度/伝送時間の計算・無線LAN・SDN/QoS)
通信を階層化して捉えるOSI基本参照モデルと実務標準のTCP/IP、IPアドレスの構造とサブネットマスク・CIDR表記によるネットワーク分割の計算、経路を選ぶルーティング、名前解決のDNSとIP自動割当のDHCP、HTTP/HTTPS・SMTP・POP・IMAPといった各種プロトコル、回線の通信速度(bps)から伝送時間を求める計算、無線LANの規格と暗号化、そしてSDN・QoSを、応用情報技術者として計算問題を中心に深く学びます。
ネットワークは応用情報技術者試験のテクノロジ系で計算問題が最も集中する分野の一つです。サブネットマスクからホスト数・ネットワーク数を求める計算、回線速度と回線利用率から伝送時間を求める計算は、公式を丸暗記するのではなく2進数の構造とビット数の関係を理解して導出できることが重要です。あわせて、OSI各層とTCP/IPの対応、代表的なプロトコルの役割の違いも状況判断として問われます。
3.4.1OSI参照モデルとTCP/IP・アドレス設計
- OSI基本参照モデル=通信機能を7階層に分けた概念モデル(物理・データリンク・ネットワーク・トランスポート・セッション・プレゼンテーション・アプリケーション)。TCP/IP=実際のインターネットで使われる4階層(ネットワークインタフェース・インターネット・トランスポート・アプリケーション)のプロトコル群で、OSIのネットワーク層に相当するのがIP、トランスポート層に相当するのがTCP/UDP。
- IPアドレス=ネットワーク部とホスト部からなる。サブネットマスク=どこまでがネットワーク部かを示すビット列(例:
255.255.255.0は上位24ビットがネットワーク部)。CIDR表記=192.168.1.0/24のようにネットワーク部のビット数をスラッシュの後ろに書く記法。ホスト部のビット数をhとすると、割り当て可能ホスト数=2^h − 2(全0=ネットワークアドレス、全1=ブロードキャストアドレスは使用不可のため2を引く)。 - 既存の
/24ネットワークをさらに分割する場合、ネットワーク部のビット数を増やすほどサブネット数は増え、各サブネットのホスト数は減る。分割後のビット数をn(元は24)とすると、サブネット数=2^(n−24)、各サブネットのホスト数=2^(32−n) − 2という関係で計算できる。
3.4.2ルーティング・DNS/DHCP・プロトコルと通信速度の計算
- ルーティング=ルータが宛先IPアドレスを見て次にどの経路へ転送するかを決める処理(経路表・最長一致(ロンゲストマッチ)で判定)。DNS=ドメイン名をIPアドレスに変換する名前解決の仕組み。DHCP=端末起動時にIPアドレス等を自動的に割り当てるプロトコル。
- HTTP=Webページ取得の平文プロトコル、HTTPS=TLSで暗号化したHTTP。SMTP=メール送信、POP=メールサーバから端末へダウンロードして削除(オフライン中心)、IMAP=メールサーバ上でメールを管理(複数端末で同期しやすい)。
- 伝送時間の基本式=伝送時間(秒) = データ量(ビット) ÷ 実効転送速度(ビット/秒)。実効転送速度は回線速度 × 回線利用率で求める(利用率が示されない場合は回線速度をそのまま使う)。データ量がバイト単位で与えられたら×8でビットに変換してから計算する。
- 無線LAN=IEEE802.11シリーズの規格群(新しい規格ほど高速・WPA3等の暗号化方式でセキュリティを確保)。SDN(Software-Defined Networking)=ネットワーク機器の制御機能をソフトウェアで集中管理する仕組み。QoS(Quality of Service)=トラフィックの種類ごとに優先度や帯域を制御し、音声・映像など遅延に敏感な通信の品質を確保する仕組み。
「ホスト数=2^h−2」「サブネット数=2^(n−24)(/24からの分割時)」「伝送時間=データ量(ビット)÷(回線速度×利用率)」「POPはダウンロードして削除・IMAPはサーバ上で管理」が最頻出です。応用情報ではサブネット計算と伝送時間計算を組み合わせた複合問題(例:分割後のサブネットで特定サイズのファイルを転送する時間を求める)が定番です。単位(ビット/バイト、10進/2進の接頭辞)の取り違えが最大の失点要因なので、計算前に必ず単位を確認します。
本社の192.168.1.0/24ネットワークを、8つの部署ごとに独立したサブネットへ分割する要件を考えます。8個のサブネットが必要なので、必要な追加ビット数aは2^a ≥ 8を満たす最小の3ビットで、分割後のネットワーク部は24+3=27ビット(/27)になります。このときサブネット数=2^(27−24)=8(要件どおり)、各サブネットのホスト部は32−27=5ビットなのでホスト数=2^5−2=30台です。部署の端末数が最大でも25台程度であれば、この/27分割は要件を満たします。次に、各部署のファイルサーバから8MB(メガバイト)の設計図面を本社のバックアップサーバへ転送する場面を考えます。回線速度は10Mbps、ただし他の通信と共有しているため回線利用率は80%とします。データ量をビットに変換すると8MB×8=64Mビット、実効転送速度は10Mbps×0.8=8Mビット/秒なので、伝送時間=64Mビット÷8Mビット/秒=8秒と求まります(検算:8Mビット/秒×8秒=64Mビットで一致)。もしこの転送を利用率100%の専用回線(10Mbps)で行えば、伝送時間は64Mビット÷10Mビット/秒=6.4秒に短縮されますが、他の通信を止めてしまうため、音声通話等の遅延に敏感な通信と共存させたい場合はQoSで優先度を制御し、ファイル転送には残りの帯域だけを割り当てる設計が現実的です。最後に、この分割後の各サブネットにDHCPでIPアドレスを自動割当し、部署間の通信はルータの経路表に従ってルーティングされます。仮に将来サブネットをさらに細分化したい場合、/27を/28へ変更すればサブネット数は2倍(2^(28−24)=16)になりますが、各サブネットのホスト数は2^(32−28)−2=14台に半減するため、分割を細かくするほど1サブネットあたりの収容台数は犠牲になるという基本トレードオフを踏まえて設計する必要があります。
| CIDR | ホスト部ビット数 | 割り当て可能ホスト数(2^h−2) |
|---|---|---|
| /24 | 8 | 254 |
| /27 | 5 | 30 |
| /28 | 4 | 14 |
ひっかけ: 「ホスト数は2^hで計算する」は誤りです。ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスの2つは端末に割り当てられないため必ず2を引きます(2^h − 2)。「回線速度=実効転送速度」も誤りで、回線利用率が示されていれば必ず乗じる必要があります(100%と決めつけない)。「データ量はそのままビットとして計算してよい」も誤りで、MB/GB等バイト単位のデータ量は8倍してビットに変換してから伝送時間の式に入れます。単位の変換忘れが最も多い失点パターンです。
3.4.3この節のまとめ
- ホスト数=2^h−2・サブネット数=2^(n−24)(/24からの分割時)。ネットワーク部を増やすほど台数収容は犠牲になる
- 伝送時間=データ量(ビット)÷(回線速度×利用率)。バイト→ビットは×8、利用率は必ず確認して乗じる
- POP=ダウンロード削除・IMAP=サーバ管理。QoSは遅延に敏感な通信を優先制御・SDNは制御をソフトウェアで集中管理
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理解度チェック
(軽い確認用)Q1. `192.168.1.0/24`のネットワークを8個の部署別サブネットに均等分割したい。分割後のCIDR表記と各サブネットのホスト数の組み合わせとして正しいものはどれか。
Q2. 8MBのファイルを、回線速度10Mbps・回線利用率80%の回線で転送する。伝送に要する時間として正しいものはどれか(1MB=8Mビットとして計算する)。
Q3. 複数端末でメールを常に同期させ、サーバ上でメールを分類・管理したい。最も適したプロトコルはどれか。

