Instiq
第2章 · 回復性の高いアーキテクチャの設計·v2.1.0·更新 2026/6/14·読了目安 約9分

変更要約: in-scope サービス網羅: 自動スケーリング(EC2 Auto Scaling)・アプリ統合(MQ/Step Functions/AppSync/AppFlow)・移行/転送(Application Migration Service/DMS/DataSync/Transfer Family/Snow Family)・ハイブリッド接続(Direct Connect/Site-to-Site VPN/Client VPN/Transit Gateway/PrivateLink)を各節に追加

2.3バックアップとディザスタリカバリ

この節の要点

バックアップ/スナップショット、RTO と RPO、マルチリージョンでのフェイルオーバー(Route 53)など、災害からの回復を設計する考え方を理解します。

回復性には、障害発生後に どれだけ早く復旧し(RTO)、どれだけのデータ損失を許容するか(RPO) を決め、それに見合うバックアップ/DR を設計することが含まれます。

2.3.1バックアップと DR の要素

バックアップ/スナップショット(EBS スナップショット・RDS バックアップ・S3 バージョニング)、RTO/RPO(RTO=復旧の速さ・RPO=許容データ損失)、マルチリージョンフェイルオーバー(Route 53 のヘルスチェックで待機リージョンへ)という DR の要素を並べた図。
バックアップと DR(RTO/RPO)
  • バックアップ/スナップショット:EBS スナップショット・RDS 自動バックアップ・S3 バージョニング/クロスリージョンレプリケーションでデータを保護。
  • RTO(目標復旧時間):どれだけ早く復旧するか。RPO(目標復旧時点):どこまで遡って復旧できるか=許容データ損失。
  • DR 戦略の4段階:バックアップ&リストア(安・遅)→パイロットライト→ウォームスタンバイ→マルチサイト(高・速)。RTO/RPO が短いほど高コスト。
  • マルチリージョンRoute 53 のヘルスチェック+フェイルオーバールーティングで別リージョンへ切り替える。

DR(災害復旧)の設計は、まず RTO(どれだけ早く戻すか)と RPO(どこまでのデータ損失を許せるか) をビジネス要件として決め、それに見合う戦略を選ぶことから始まります。AWS の代表的な4戦略は、コストと復旧速度のトレードオフで並びます:バックアップ&リストア(最安・最遅)、パイロットライト(最小限を常時起動)、ウォームスタンバイ(縮小版を常時稼働)、マルチサイト/ホットスタンバイ(フル稼働・最速)。RTO/RPO を短くするほど常時稼働するリソースが増え高コストになります。リージョン全体の障害に備えるなら、データをクロスリージョンレプリケーションで複製し、Route 53 のヘルスチェック+フェイルオーバールーティングで別リージョンへ自動切替します。

DR 戦略常時稼働RTO/RPO・コスト
バックアップ&リストアなし(必要時に復元)長い・最安
パイロットライト最小限(DBのみ等)
ウォームスタンバイ縮小版を稼働短い
マルチサイトフル稼働最短・最高コスト

シナリオ:要件に合う DR を選ぶ。 「数時間の停止と直近のバックアップ時点までのデータ損失は許容」ならバックアップ&リストアで十分(低コスト)。「数分以内に復旧、ほぼデータ損失なし」が必須ならウォームスタンバイ〜マルチサイトクロスリージョンレプリケーションRoute 53 フェイルオーバー。RTO/RPO の要件から逆算して、過剰投資を避けつつ満たします。

注意

混同に注意:
RTO=復旧の速さ(時間)/RPO=どこまで遡れるか(データ損失)——取り違えない。
②RTO/RPO を短くするほどコスト増(4戦略のトレードオフ)。
Route 53=DNS レベルのフェイルオーバー(リージョン切替)。
④S3 のクロスリージョンレプリケーション/バージョニングでデータ保護。

補足

Q. RTO と RPO の違いは? RTO は「どれだけ早く復旧するか(時間軸)」、RPO は「どの時点まで戻せるか=許容データ損失」。Q. DR 戦略はどう選ぶ? 許容ダウンタイム/データ損失(RTO/RPO)とコストのバランスで、バックアップ&リストア〜マルチサイトから選ぶ。Q. リージョン障害への備えは? クロスリージョンレプリケーション+Route 53 フェイルオーバー。

試験ポイント

「RTO=復旧の速さ/RPO=許容データ損失」の区別、4つの DR 戦略(バックアップ&リストア〜マルチサイト)のコスト/速度トレードオフRoute 53 フェイルオーバールーティングS3 バージョニング/クロスリージョンレプリケーションは SAA で頻出です。

2.3.2その他の主要 in-scope サービス(移行・転送・ハイブリッド接続)

バックアップ/DR や移行では、データとサーバーを AWS へ運ぶサービス群が要になります。AWS Application Migration Serviceオンプレのサーバーをそのまま(リフト&シフト)AWS へ移行AWS Database Migration Service(DMS)は稼働中のデータベースを最小停止で移行(異種 DB 間も可)。AWS DataSyncオンプレと AWS(S3/EFS/FSx)間の大量ファイルを高速・自動転送AWS Transfer FamilySFTP/FTPS/FTP で S3/EFS へファイル転送する既存ワークフロー向け。回線が細い/オフラインで大容量を運ぶなら AWS Snow Family(物理デバイスでデータ搬送)を使います。

ハイブリッド/マルチ VPC の接続には次を使い分けます。AWS Direct Connect専用線でオンプレと AWS を低遅延・安定帯域で接続(VPN よりも一貫した性能)。AWS Site-to-Site VPNインターネット経由の暗号化トンネルでオンプレと VPC を接続(迅速・低コスト)。AWS Client VPN個々の利用者の端末から VPC への安全なリモートアクセスAWS Transit Gateway多数の VPC とオンプレをハブ&スポークで一元接続AWS PrivateLinkインターネットを介さず VPC からサービスへプライベート接続(インターフェースエンドポイント)するときに選びます。

やりたいことサービス
オンプレのサーバーを AWS へ移行AWS Application Migration Service
稼働中の DB を最小停止で移行AWS Database Migration Service
大量ファイルの高速転送AWS DataSync
SFTP/FTPS で S3/EFS へ転送AWS Transfer Family
オフライン/大容量の物理搬送AWS Snow Family
専用線で安定接続AWS Direct Connect
暗号化トンネルでオンプレ接続AWS Site-to-Site VPN
利用者端末からのリモート接続AWS Client VPN
多数 VPC のハブ接続AWS Transit Gateway
サービスへのプライベート接続AWS PrivateLink

2.3.3この節のまとめ

  • RTO(復旧の速さ)/RPO(許容データ損失) を要件として決め、見合う DR を設計
  • 4戦略(バックアップ&リストア〜マルチサイト)Route 53 マルチリージョンフェイルオーバーS3 レプリケーション

進捗の記録にはログインが必要です。

理解度チェック

(軽い確認用)

Q1. 「障害後にどれだけ早く復旧する必要があるか」を表す指標はどれですか?

Q2. 「どれだけのデータ損失を許容できるか」を表す指標はどれですか?

Q3. 別リージョンへ自動的に切り替える(フェイルオーバー)のに役立つ AWS サービスはどれですか?

理解度を確認第2章「回復性の高いアーキテクチャの設計」の問題を解く