変更要約: 初版
4.4災害復旧と事業継続
ITシステムを復旧させる手順に絞ったDRP(災害復旧計画)と、事業全体を止めないための広い計画であるBCP(事業継続計画)の違い、どれだけ早く復旧するかのRTOとどこまでのデータ損失を許すかのRPO、バックアップの役割、そして検知的/予防的/是正的という3種のDRコントロールを、「止まった後、どう立ち直るか」を設計する基礎として学びます。
どれだけ守りを固めても、災害・障害・攻撃で「止まる」ことは起こり得ます。大切なのは、止まった後にどれだけ早く・どこまで元に戻せるかを、あらかじめ決めておくことです。この節では、ITシステムの復旧手順に絞ったDRP(災害復旧計画)と、事業全体を止めないための広い計画であるBCP(事業継続計画)の違い、復旧の目標時間であるRTOとデータ損失の許容量であるRPO、その土台となるバックアップ、そして検知的/予防的/是正的という3種のDRコントロールを、「止まった後どう立ち直るか」を設計する視点で学びます。
4.4.1DRPとBCP・RTOとRPO
- DRP(Disaster Recovery Plan・災害復旧計画)=サーバ・データ・ネットワークといったITシステムを復旧させる手順に焦点を当てた計画。「壊れたシステムをどう元に戻すか」を具体的に定める、より技術寄りの計画。
- BCP(Business Continuity Plan・事業継続計画)=災害時にも事業全体を止めない/早く再開するための広い計画。IT復旧だけでなく、代替拠点・人員・業務手順・連絡体制まで含む。DRPはBCPの一部(IT部分)という関係を押さえる。
- RTO(Recovery Time Objective)=どれだけ早く復旧させるかの目標時間(例:4時間以内に復旧)。RPO(Recovery Point Objective)=どの時点まで戻せるか=許容できるデータ損失量(例:直近1時間分までは失ってよい)。RTOは「時間」、RPOは「データのどこまで」を決める。
4.4.2バックアップと3種のDRコントロール
- バックアップ=データの複製をあらかじめ取り、破損・消失時に復元できるようにする備え。RPOを満たすにはバックアップの頻度が鍵(1時間ごとに取れば損失は最大1時間分)。世代管理や遠隔地保管(オフサイト)で、同時被災や上書きにも備える。
- DRコントロールは目的で3種に分かれる:予防的(preventive)=そもそも起きにくくする(冗長化・UPS・定期バックアップ)/検知的(detective)=異常や障害を気づく(監視・アラート・ログ)/是正的(corrective)=起きた後に元へ戻す(バックアップからの復元・フェイルオーバー・復旧手順の実行)。
「DRP=IT復旧手順に特化/BCP=事業全体の継続で、DRPはBCPの一部」「RTO=復旧までの目標時間/RPO=許容データ損失量(バックアップ頻度で決まる)」「DRコントロール:予防的(起きにくく)/検知的(気づく)/是正的(元へ戻す)」が頻出です。RTO(時間)とRPO(データ)を取り違えないようにしましょう。
深夜、基幹の受注システムを載せたサーバが障害で停止したとします。ここで慌てず動けるかは、事前にBCPとDRPを用意していたかで決まります。まず事業全体の視点(BCP)では、システムが止まっている間も受注を止めないために、電話やメールで注文を受ける代替手順に切り替える、といった業務レベルの継続策が動きます。並行して、IT復旧の具体手順(DRP)に従い、サーバの復旧作業を進めます。この復旧で意識するのが2つの目標値です。RTOは「何時間以内に復旧させるか」で、たとえば4時間と決めていれば、それを超えそうなら代替機への切り替え(フェイルオーバー)を判断します。RPOは「どの時点まで戻せるか=どれだけのデータ損失を許すか」で、バックアップを1時間ごとに取っていれば、失うのは最大でも直近1時間分の受注データに抑えられます。ここでRTOは時間、RPOはデータのどこまでという違いを取り違えないことが肝心です。さらに、今回の一連の対処はDRコントロールの3分類で整理できます。障害に気づけたのは監視アラート=検知的コントロール、日頃から冗長化やUPS、定期バックアップで起きにくく/被害を小さくしていたのが予防的コントロール、そしてバックアップからの復元やフェイルオーバーで元へ戻すのが是正的コントロールです。入門段階では、この「DRP(IT)とBCP(事業全体)」「RTO(時間)とRPO(データ)」「予防的/検知的/是正的」という3組の区別を正確に持つことが、止まった後に落ち着いて立ち直るための土台になります。
| DRコントロール | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| 予防的(preventive) | そもそも起きにくく/被害を小さくする | 冗長化・UPS・定期バックアップ |
| 検知的(detective) | 異常や障害に気づく | 監視・アラート・ログ |
| 是正的(corrective) | 起きた後に元へ戻す | バックアップ復元・フェイルオーバー |
ひっかけ: 「RTOは許容できるデータ損失量、RPOは復旧までの目標時間だ」は誤りです——逆で、RTOが復旧までの目標時間、RPOが許容できるデータ損失量(バックアップ頻度で決まる)です。また「DRPとBCPは同じもの」も誤り=DRPはITシステムの復旧手順に特化し、BCPは事業全体の継続を扱う広い計画で、DRPはBCPの一部です。
4.4.3この節のまとめ
- DRPはIT復旧手順に特化、BCPは事業全体の継続を扱う広い計画で、DRPはBCPの一部
- RTOは復旧までの目標時間、RPOは許容データ損失量(バックアップの頻度で決まる)。取り違えない
- DRコントロールは予防的(起きにくく)/検知的(気づく)/是正的(元へ戻す)の3種で整理する
進捗の記録にはログインが必要です。
理解度チェック
(軽い確認用)Q1. 災害復旧の目標を「4時間以内に復旧させる(RTO)」「直近1時間分までのデータ損失は許容する(RPO)」と定めた。RTOとRPOの説明として最も正確なものはどれか。
Q2. DRP(災害復旧計画)とBCP(事業継続計画)の関係の説明として最も適切なものはどれか。
Q3. サーバ障害が発生した後、直近のバックアップからデータを復元し、システムを元の状態に戻す作業を行った。この作業に該当するDRコントロールの種類として最も適切なものはどれか。

