第5章 · 情報システムのコントロール評価·v1.0.0·更新 2026/7/11·読了目安 約15分
変更要約: 初版
5.1企画・開発の統制評価
この節の要点
システム監査人が、プロジェクト管理・要件定義・テスト・移行・本番リリースにおける予防統制/発見統制の整備・運用状況を評価し、開発と運用の職務分掌の欠如のような整備上の不備を診断する視点を学びます。
システム監査人は、開発したシステムそのものを作る側ではなく、開発の各工程に適切なコントロールが整備され、かつ実際に運用されているかを独立した立場から評価する側です。企画・開発工程では、プロジェクト管理・要件定義・テスト・移行・本番リリースの各段階にリスクがあり、それぞれに予防統制(誤りやリスクの発生自体を防ぐ)と発見統制(発生した誤りを検知する)が設計されます。この節では、監査人がこれらの統制の整備状況(デザインが妥当か)と運用状況(デザイン通りに実施されているか)を評価し、不備を「整備上の不備」か「運用上の不備」かに切り分けて診断する視点を学びます。
5.1.1開発各工程の統制と監査の着眼点
- 要件定義の統制=要件が利用部門と合意され、承認記録が残り、変更が管理されているか。監査人は要件定義書への承認証跡の有無や、要件変更が無統制に膨張していないか(スコープクリープ)を確かめる。
- テストの統制=テスト計画・テストケース・結果記録が整備され、要件を網羅しているか。監査人はテスト証跡(誰がいつ何を確認したか)を証拠として査閲し、未消化の不具合が残ったままリリースされていないかを評価する。
- 移行・本番リリースの統制=リリース前の承認、切戻し(ロールバック)手順、旧データからの移行検証があるか。予防統制として「本番反映前に責任者の承認を必須にする」、発見統制として「移行後の件数・金額の突合で異常を検知する」が典型。
5.1.2開発と運用の職務分掌(予防統制の中核)
- 職務分掌(Segregation of Duties)=相互に牽制すべき職務を別々の担当者に分けることで、単独での不正・誤りを防ぐ予防統制。開発領域では「開発担当者(プログラムを作成・変更する者)」と「運用担当者(本番環境へ反映・実行する者)」を分けることが中核となる。
- この分掌が欠けると、開発者が自らの変更を検証なしに本番へ直接反映できてしまい、意図的な不正コードの混入や、レビュー・承認を経ない未検証コードの本番稼働というリスクが生じる。監査人はまず「開発者に本番環境への直接書込権限があるか」を確かめ、あればこれを整備上の不備(統制のデザインそのものが不十分)として指摘する。

